EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本稿の執筆者
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー・アンド・トランザクション(SaT) SAT LAB フランチェスコ・フマローラ
データサイエンスやAI技術を活用してビジネスの成長を加速させることに特化したデータアナリティクス専門部隊のSaT Labの研究リーダーを担当。直観や経験だけでなく、データを活用した意思決定を支援。これまでに大きなビジネス価値をもたらす多くのプロジェクトを牽(けん)引してきた。EY SaT Lab Japan マネージャー。
要点
近年、非技術系企業においてデータ部門の設立が著しく増加しています。データに基づく意思決定は、勘や経験に基づくものよりも企業を成功に導く可能性が高いためです。データ駆動型アプローチの革新的な洞察を活用している企業は、競争相手に一歩先んじることができます。本稿では、データ部門の設立とデータの力を活用して成功を収めるための業界のベストプラクティスを紹介します。
従来のモデルでは、各部署がそれぞれデータアナリストを雇用することがありますが、部署間での協力体制が整わないとデータが孤立し、有用な洞察を得ることができない場合があります。最大の効果を得るためには、専門のデータ部門が必要となります。
従来のビジネスプラクティスでは、データは各部門内で孤立しています。そのため洞察力に乏しく、意思決定の効果は限定的です。例えば、売上とマーケティングのデータを統合しなければ、需要と供給を予測することはできません。このため、部門を横断した洞察を得るためには、全社のデータを統合したデータウェアハウスを確立する必要があります。
データを有効活用できている企業の決定的な特徴は、リアルタイムから月次のような高い頻度で現在または過去、未来(予測)のビジネス状況を可視化し、活用していることです。従来の経験や直感、スプレッドシートの簡単な分析に基づく意思決定は、安定性に欠いています。一方、ダッシュボード等を活用すれば、従業員は最新の業績やビジネス上の決定/変更に伴う影響を素早く簡単に見ることができます。ダッシュボードを活用した意思決定により、企業は着実に業績を向上させることができます。
貸借対照表においてデータを資産として表示します。データを収益化し、収益の流れとして表示されます。データの収益化の方法については次章で詳しく説明します(<図1>参照)。
あるCPR(消費者、製品、小売)業界の巨大企業は、ビジネスアナリストの努力にもかかわらず成長停滞に直面しました。そのような状況の中、AIの台頭についての話題が持ち上がったことをきっかけに、同社はデータ部門の責任者を採用しました。データ部門は、各BU(ビジネス・ユニット)の利点と欠点を可視化することにより、業務の最適化や資材価格と需要の予測を可能にしました。結果として、15~20%もの売上増、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなマクロ環境におけるショックに対する強固なバリアの構築など、多くの恩恵を得ることができました。
企業のデータ部門が果たすべき役割として、以下が挙げられます。
CDO(Chief Data Officer)が描く構想に沿って、ビジネスや組織の課題に対処するための具体的なデータ活用戦略を策定/実行します。ビジネスおよびデータに関する幅広い知識と理解、戦略を具体化するスキルが求められ、データ分析側とビジネス側の橋渡しを担います。
データソリューションやデータウェアハウスの設計とアーキテクチャに特化した役割です。ETL(抽出、変換、および書き出し)プロセス、Python等のプログラミング言語によるスクリプティング、およびSQLを用いたデータベースの操作に精通しています。
全社的なデータの管理・統制に関わる職務で、データマネジメントおよびデータガバナンスを担います。データ活用において重要となるメタデータ(データ資産の説明や関連付けなどの管理に必要となる付加データ)の作成/管理や、データの扱いに関するルールの制定、データガバナンス活動の実施などを行います。
ビジネスドメインとデータ活用の知識、ファシリテーション能力を持つ役割です。データ部門内や他部門、外部パートナーと連携し、内外の用途に向けた新しいデータソリューションの社会実装を行います。それらのデータプロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーの役割を担うことも多くあります。
データの可視化(ダッシュボードやレポートの作成を含む)や分析を担当し、分析結果から導かれる洞察を説明します。データコンサルタントやデータアナリストは分析部門の責任者に報告しますが、頻繁に他部門と協力して作業を行います。
機械学習と高度な統計分析を専門とし、予測と分析を行います。データサイエンティストとデータアナリストは協力して複雑なデータから高度な分析を実施し、洞察を得ます。
これらは、データ活用に成功している企業における6つの重要な職務となっています。ただし、新しく設立されたデータ部門では、データアナリストの役割がデータコンサルタントとデータサイエンティストの間で分担されるのが一般的です。効果的なデータ部門を立ち上げるためには、最初にシニアデータコンサルタント、シニアデータサイエンティスト、およびシニアデータエンジニアの3つのポジションが必要です。データ部門が企業に価値を生み出し始めてから、他の3つの専門的なポジションを検討することが効率的です。
データ部門が企業成長に資するデータを可視化するには、次の方法が考えられます。
データを収益化する方法としては、次の方法が考えられます。
本稿では、先進的なデータ部門のベストプラクティスを紹介し、それらが非技術系企業にも効果的に適用できることを整理しました。データ駆動型のアプローチは現在のビジネスの新しいスタンダードとなりつつあり、市場をリードしたい企業にとって、専門のデータ部門は不可欠な要素となります。
本稿では、先進的なデータ部門のベストプラクティスを紹介し、設置のメリットや成功させる方法を紹介します。さらに、それらが非技術系企業にも効果的に適用できることもまとめます。データ駆動型のアプローチは現在のビジネスの新しいスタンダードとなりつつあり、市場において一歩リードしたい企業にとって、専門のデータ部門は不可欠な要素となります。
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