ダラスの住宅市場動向:日本企業が注目すべき最新情報

ダラスの住宅市場動向:日本企業が注目すべき最新情報

多くの日本企業が進出する世界最大の経済大国である米国。その中でもテキサス州は、AT&T、アメリカン航空などが本社を構えるほか、税制、労働力などの要因から企業の進出が相次いでいます。

中でも、ダラスはトヨタ自動車など日本企業の移転もあり、在留邦人数も増加しています。本稿では、日本企業の注目が高まっているダラスの住宅市場の過去のトレンドと今後の見通しについて紹介します。


要点
  • 高い経済成長、人口上昇率を背景にダラスの住宅価格は大幅に上昇した。
  • 住宅価格は上昇したものの、世帯収入に対する住宅価格は引き続き適切な水準にある。
  • 直近でも住宅価格は上昇傾向にはあるものの、2021年ほどの上昇は見られず、在庫数がやや増加している。

1. はじめに

ダラスは、税制面での優位性や、豊富な労働力から、企業の進出が相次いでいます。テキサス州のGDPは2013年にニューヨーク州を超え、カリフォルニア州に次ぐ全米第2位に位置しています。その後も概ね米国平均を上回る成長を続けており、2023年の実質GDP成長率は+5.7%と米国平均を大きく上回る成長を記録しています。また、このような高い経済成長率も背景に、ダラス都市圏の人口(約800万人)もテキサス州平均、米国平均を上回る増加を続けています。
在留邦人数については、ダラスはテキサス州ではヒューストンに次ぐ2番目の都市ですが、トヨタ自動車などの移転もあり、近年高い増加率を示しており、ヒューストンとほぼ同数まで迫っています。

 (出典:the Bureau of Economic AnalysisよりEY作成)
 (出典:the Bureau of the CensusよりEY作成)
 (出典:海外在留邦人数調査統計)
 (出典:海外在留邦人数調査統計よりEY作成)

2. 住宅価格

ダラス都市圏の戸建住宅価格(中央値)は、400,000ドル程度であり、米国全体の約350,000ドルを上回る水準にあります。米国の住宅価格は、2021年に大きく上昇しましたが、金利上昇と物価高により2022年後半から2023年前半にかけては調整局面となりました。ダラスの住宅価格も同様にその影響を受けたあと再び上昇傾向に戻ったものの、上昇率としては2021年、2022年前半と比較して緩やかになっています。

 (出典:ZillowよりEY作成)
 (出典:S&P コアロジック・ケース・シラー住宅価格指数よりEY作成)

ダラスは全米第2位のGDPを誇るテキサス州の主要都市でありながら、住宅価格は適切な水準にあります。戸建住宅価格の世帯収入に対する倍率(戸建住宅価格÷世帯収入)は、カリフォルニア州のサンフランシスコやロサンゼルスが10倍程度であるのに対して、ダラスは4.7倍とほぼ米国全体と同程度です。世帯収入は上昇しているものの、住宅価格が世帯収入以上に上昇したため、世帯収入倍率はやや上昇しましたが、それでもロサンゼルスやサンフランシスコと比較して、手頃な水準と言えます。

 (出典:Zillow、the Bureau of the Census S&P コアロジック・ケース・シラー住宅価格指数よりEY作成)

ダラスの住宅価格は上昇する一方で、成約件数については季節による影響があるものの、2022年頃より減少しており、直近においても横ばいかやや減少傾向になっています。このため在庫数についても、2023年以降上昇しています。

 (出典:ZillowよりEY作成)
 (出典:ZillowよりEY作成)

なお、固定資産税についてはWalletHubによれば、テキサス州の住宅の固定資産税の実効税率は1.63%であり、全米で7番目に高い州となっています。また、不動産価格がこれまで大きく上昇したため、課税標準額の上昇にも注意が必要となっています。

3. 今後の予測

 (出典:GreenStreetよりEY作成)

2022年後半から2023年前半にかけては調整局面にあった住宅価格は、再度上昇に転じています。住宅の供給は増加しているものの、過去の水準ほどの供給はなく、人口増加に伴う住宅不足にインフレも相まって、住宅価格は今後も上昇していくことが予測されています。

4. まとめ

経済成長や人口増加を背景に、ダラスの住宅価格は大幅に上昇し注目を集めましたが、直近では価格は上昇する一方で、在庫数もやや増加傾向にあります。また。固定資産税についても他州に比べて実効税率も高く、課税標準額も大きく上昇しているため、今後の情勢には注意が必要です。
不動産市場はグローバルかつローカルな市場であり、マクロ経済環境に加え地域特有の行政、税務などの事象にも影響を受けるため、海外不動産投資に当たっては地域に精通したアドバイザーが必要です。
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サマリー

高い経済成長、人口上昇率を背景にダラスの住宅価格は大幅に上昇しました。金利の上昇や固定資産税などの上昇により、住宅を保有するコストは増加しているものの、世帯収入に対する住宅価格は引き続き適切な水準にあり、人口増加に伴う住宅不足にインフレも相まって、住宅価格は今後も上昇していくことが予測されています。



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