まずは、ご自身の水道事業が置かれた現状の把握・分析を行うことが大切です。その上で、自前で行う方が良いのか、官民連携を進めるべきなのか、方向性の判断を行っていただきたいです。また、官民連携ではコンセッションを始めとするPFI事業や包括委託など手法はたくさんあります。水源などの地域性や地元企業との関係性などを総合的に検討し、ご自身の水道事業に適した手法を選択していただきたいですね。
小さな自治体では、日々の業務に追われ検討する時間も取れない、何から手を付けていいのか分からないといったこともあるかと思います。荒尾市の事例でよろしければご紹介させていただくことも可能ですし、リスク分担やモニタリング手法、また、契約上の法的観点からもEYのようなスペシャリスト集団のより詳しい専門家にご相談いただくのがよろしいのでは、と思います。官民連携にかじ切る場合は、事業開始後すぐは、引き継ぎを行う中で、行政の予算上の仕組みや地域の特性などを理解する上で、どうしても協議の場が多くなります。十分すぎるほどの情報共有に努め、パートナーとして市民の方を向いて業務に当たる環境づくりが大切だと思います。
――荒尾市では、かつて三池炭鉱を運営していた三井鉱山が敷いた民間の水道があり、炭鉱閉鎖後は、最終的に市の水道と一元化した経緯がありますね。
民間の水道については約5,000世帯、当時の市では全体の6分の1の世帯が使っていたことになります。使用料も安価で一元化に対しては反対意見もありました。しかし、平成31年までに終了し、隣の大牟田市と共に広域で連携を図り、一元化することになったのです。
その意味では、包括委託においても、民間事業者を活用することに市民の抵抗感はありませんでした。今は民間の力を借りながら、市がきちんとグリップを利かして運営していることを市民の方々も理解していると思います。私たちの包括委託がうまくいっているのは、民間事業者が地元企業を活用しながら、地域貢献もしっかりされているからです。今後の取り組みについても、地元の事情をすくい上げ、計画にきちんとつなげていくことが大切だと考えています。地域と地元企業をまとめ上げていくことが官民連携には欠かせないのです。
――本日は大変ありがとうございました。最後に、本事業にかける思いなどをお聞かせください。
将来にわたって、水道を安心して利用できることが私たち水道事業者の責務だと思っています。そのために導入した包括委託の意義をしっかりと継承し、官民で信頼を深めたパートナーとして、これからも安全で強靭、持続できる水道事業を目指していきます。
現在は、老朽化や耐震化工事が急務であり、そのための財源が必要となっています。中小自治体にとっては、人口減少などによる給水収益の減少が進み、経営は厳しい状況にあります。これは国への要望となりますが、交付金活用において、施設の老朽化・耐震化対策での条件緩和・拡充など財政面での寛大なるご支援をお願いできればと思っています。
また、包括委託などの官民連携手法においても、事業者選定や契約方法の基準確立などをご相談できたらと思っております。私たちが掲げる水道ビジョン「あらおの水 蛇口から出る安心をこれからも」の基本理念は、子供や孫の世代の利用者との大切な約束です。荒尾市水道事業は、今後も包括委託での運営に努め、官民で協力してこの約束を守っていきたいと考えています。