金融機関におけるデジタルプラットフォームの未来予想図 ~デジタルシフトの変革をサポートするEY Nexus~

金融機関におけるデジタルプラットフォームの未来予想図 ~デジタルシフトの変革をサポートするEY Nexus~


金融機関が迫られているビジネス変革の一環として、デジタルプラットフォームの導入が求められています。

時代に合わせたオペレーションモデル、それを支えるアーキテクチャの進化を可能にするEYのデジタルプラットフォーム「EY Nexus」がどのような役割を果たすのか探ってみました。


要点

  • ビジネスの変換期を迎える金融機関にとって、グループ全体での問題解決に向けたデジタルプラットフォームの導入が不可欠
  • 金融業界の課題や社会情勢に合わせて変化し続けるクラウドネイティブのデジタルプラットフォーム「EY Nexus」で、業界特有の足かせを軽減
  • 「EY Nexus」は、既存のレガシーシステムを生かしつつ、最新のソリューションを柔軟に活用できるだけでなく、段階的にシステムをモダナイズしていくアプローチも可能

2023年3月末に開催したワークショップ「金融機関におけるデジタルプラットフォームの未来予想図」にて、EY Japanで金融サービス・コンサルティング統括リーダー兼保険コンサルティングセクターリーダーを務める青木計憲が、金融機関を取り巻く状況とその未来予想図に深堀りしました。さらに、EY Nexusを導入された第一生命保険の樋川雅人氏をお招きし、導入の経緯とメリットを語っていただきました。

金融機関の問題点は顧客・データ・エコシステム。足かせはプラットフォーム

銀⾏、証券、保険の⾦融機関がビジネスの変換期を迎え、グループ企業全体でデジタルシフトを進めるためのプラットフォーム変⾰に迫られているタイミングの中、⾦融機関には顧客・データ・エコシステムの3つの⼤きな問題があります。

まず顧客についてですが、⾦融機関⾃⾝で顧客を捉えきるのが困難な⾯を有しています。多⽤なプラットフォームで優れたカスタマーエクスペリエンスを経験する中で、顧客のデジタルリテラシーが⾼まっています。さらには新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で変化した顧客の価値観もつかみかねています。

次にデータについてです。膨⼤な量の顧客データを持っているのにもかかわらず、これを使いこなせず、賢くなっていく顧客との間にギャップが⽣じています。

エコシステムに関しては、もはや⾃分たちだけで対応できないケイパビリティを使って顧客を囲い込まなければならないだけでなく、社会貢献も求められる現状があります。

顧客・データ・エコシステムをうまく取り扱う上で⼤きな⾜かせになっているのは、現⾏のオペレーションモデルとアーキテクチャです。レガシー技術を活⽤し⻑年かけて強固な基盤を構築してきましたが、レガシーを中⼼としたアーキテクチャでは最新技術の導⼊や外部サービスの利活⽤をしようとするとコストと時間がかかります。全⾯的な刷新よりもレガシーと最新技術を共存させるべきですが、その落としどころが⾒えていない状況が続いています。

銀⾏は、現在の低⾦利の環境下でトップラインが伸び悩む中、ATMや店舗といったインフラにコストがかかっています。顧客がインフラに価値を⾒いださなくなってきた状況下で、インフラコストを削減し、収益を⽣み出すデジタル領域へ投資を振り分けるなど、抜本的なコスト構造変⾰が重要です。

とは⾔え、トップラインを伸ばすための新しいレベニューエンジンを⾒つけなければなりません。そのためには顧客を理解するためのデータをより多く収集・分析し、顧客に寄り添うサービスが提供できるケイパビリティをつける必要があります。それ以外にも、エマージング・カントリーや、これからGDPが伸びるアジアにも進出しければなりません。そうした課題がある中、従来のビジネスモデルから変⾰し、顧客・データ・エコシステムをうまく扱う必要があります。その⼤きな⾜かせになっているのが現在のプラットフォームです。

金融業界の課題や社会情勢に合わせて変化し続けるデジタルプラットフォーム

保険業界は特にコロナの影響もあり、社会インフラとしての役割をますます期待されています。具体的には、疾病、パンデミック、事故などのリスクの予防ニーズがますます増えてきています。新たなレベニューエンジンを模索・構築しながら、社会インフラとしての機能を果たすための取り組みが、保険会社の中期経営計画にも盛り込まれていることからも明らかです。

それらを果たすためには、既存のビジネスを続けながら顧客にもっと目を向け、エコシステムを形成しながら新たな事業を行う必要があります。ただ、それを推し進めようとすると、既存のオペレーションモデルやレガシーを中心に据えたアーキテクチャが足かせになっており、改革の難しさに直面することになります。

そうした課題に取り組む第⼀⽣命の樋川⽒が先頭に⽴って実践されたのが、コア・インシュランスのデジタル化です。それに伴うプラットフォーム変⾰で導⼊されたのが、EY独⾃のソリューションである「EY Nexus」でした。EY Nexusは、以下の4つのトランスフォーメーションに活用することが可能です。

  1. 革新的な製品、ブランド、マーケットプレイスの立ち上げ(Nexus Launch)
  2. 顧客、パートナー、従業員の体験向上(Nexus Experience)
  3. デジタル活用による業務効率改善(Nexus Operate)
  4. システムアーキテクチャの段階的モダナイゼーション(Nexus Modernize)

EY Nexusの特徴を一つ挙げると、現状のシステムを生かしつつ、一部の機能や業務をデジタル化し、段階的にシステムをモダナイズするアプローチが取れる点です。金融業界が抱える、一足飛びでレガシーを変えられない問題に対応が可能となります。

第一生命がレガシーの先のプラットフォームをどのように変革していくか、EYも長く議論に加わり、その結果、おそらく日本初であろうコア・インシュアランスの次期デジタルプラットフォームを手掛ける機会をいただきました。ここで樋川氏に、EY Nexus採用に至った経緯をお話ししていただきます。

EY Nexusで構築したデジタルプラットフォームが顧客へ最適なサービスを提供できる柔軟性

初めに、私どもがEY Nexusの導入によって目指した5点のメリットを紹介します。

  1. 端末種類を問わない画面デザイン
    「レスポンシブ・レイアウト」を活用した、端末種類(画面サイズ)を意識しない画面設計。

  2. 画面開発の時間短縮・コスト削減
    ノーコードソリューションにより、画面開発の期間やコストを大幅に削減、ユーザー部門が自ら画面をメンテナンス。

  3. ビジネス・ルールの共用
    ビジネス・ルールは実務(新契約、保険金、保全など)を通して整理・構造化し幅広く共有化。

  4. 高度なデータ活用
    集積されたデータを利用し、BIツールによる高度な経営モニタリング、AIを活用した高度なデータ分析を実現。

  5. 現行レガシーのままUI刷新
    APIによる外部連携I/Fを持つことで、既存の契約管理システム、保険金システムなどの機能やDBを活用することが可能。

保険会社としてのNPSを高めるために極めて重要と考えているのは、お客さまに対してスムーズに保険金、給付金をお支払いすることです。その領域にEYのソリューションを使わせていただき、新しいプラットフォームの構築を始めました。導入の大きな決め手になったのは、STPDサイクル1をきっちりと回しながら、顧客に対して最適なサービスを提供できるプラットフォームとして、非常に柔軟であることが確認できたからです。

競争力喪失を回避するには、今こそが変革のタイミング

銀行や保険会社を含めた金融機関にとって、今後の変革でキーとなる要素は、顧客・データ・エコシステムです。その打ち手を各社とも真剣に検討していますが、オペレーションシステムもリソースも一度に用意できず、どういう順序で整えていくかも難しい選択を迫られています。

とは⾔え、待ったなしの状況で何もしなければ、デジタルチャネルの購買活動の中で⾦融商品を同時に購⼊するようになり、顧客が購買チャネルを提供するプラットフォーマーへ流れる可能性もあります。購買チャネルで保険商品を販売するエンベデッド・インシュアランス(組み込み型保険)は、保険市場における元受保険料割合が2030年には25%を占め、その額は7,220億⽶ドルに達すると予想されています2。その割合はさらに増加する傾向にあり、このモデルでは保険会社はオペレーションだけでなく、商品開発も顧客を握っている非金融業者やプラットフォーマーがオーナーシップを握ることになっていく可能性が高く、そういった環境の中で、このビジネスモデルの中における保険会社のポジショニングの確立を迫られてきます。

10年後に向けた戦略は各社それぞれながらも、足かせになっている現行のオペレーションモデルとアーキテクチャを放置すると競争力の喪失につながりかねず、今こそが変革のタイミングと言えます。

ただ、この問題に対する正解は一つではなく、常に進化しています。そのスピードはあまりにも早く課題が多岐にわたっているため、保険会社単独でモニタリングしながら最適な解やソリューションを見つけるのは非常に難しい状況です。

そこでEYは、お客さまの変革が必要な場面で、アライアンス・エコシステム、グローバルで課題解決した知見を、EY Nexusプラットフォームを通じて提供し、最適解を見つけられるお手伝いをさせていただきます。大事なのは、議論を続けることだと考えています。

脚注
1. STPDサイクルとは、See(現状把握)、Think(分析)、Plan(計画)、Do(実行)の頭文字をとったマネジメント手法
2. “Embedded Insurance,” https://discover.rainmaking.io/hubfs(2023年7月3日アクセス)


プロフィール

樋川 雅人 氏
第一生命保険 事務企画部 フェロー

※所属・役職は記事公開当時のものです。


サマリー 

待ったなしのビジネス変革。その障害となるのが顧客・データ・エコシステムの問題。解決する一つの方策がデジタルプラットフォーム導入ですが、業界特有のレガシーが足かせとなる点で、段階的かつ柔軟にシステムを最新化できる、将来的にレガシーと共存可能なプラットフォームの模索が重要になってきます。


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