鉱業会社と金属会社を変革する四つのステップ

鉱業会社と金属会社を変革する四つのステップ


鉱業会社と金属会社は、変革に向けて「デジタルの波」アプローチを採用することで、デジタル能力の改善を支援できます。

鉱業/金属セクターでは、デジタル変革の可能性と現実の間で断絶が拡大しています。結果としてデジタル能力は、このセクターが現在直面する最大のリスクとなっています。デジタルが利益率改善の主要イネーブラーおよび競争力の強化要因となっていることから、組織がこうした断絶を解消するための明確なアプローチを構築することが必須となります。

デジタルソリューションが採用されつつありますが、通常はバリューチェーンの特定箇所におけるポイントソリューションとして導入されるにとどまっており、ここで議論するような包括的なアプローチとなっていません。ポイントソリューションでは、生産性改善の次の水準へ到達できず、エンドツーエンドの意思決定も改善されないでしょう。

これらの課題の全体的な影響により、複数年の変革アプローチに対して強力なコミットメントが実現できず、結果として一時的な戦略アプローチにとどまる可能性があります(小規模の断絶的なイニシアチブとなる)。

 

変革に向けたデジタル・ウェーブ・アプローチ

ビジネスを現状から将来の改善に移行させるには、実際的かつ効果的なアプローチにより、鉱業会社と金属会社が変革に向けた明確な経路を構築する必要があります。こうしたアプローチは、「変革に向けたデジタル・ウェーブ・アプローチ」と呼ばれています。

このアプローチは、組織内でうねる一連の波のようであり、あらゆるデジタルのホットスポットと相互接続を首尾一貫した包括的戦略により着実に導入します。これにより、積極的、漸進的かつ説得力のあるデジタル戦略が実現し、同時にビジネスリスクと関係する問題を認識し、作業の包括的プログラムを維持できます。

変革に向けたデジタル・ウェーブ・アプローチには、「デジタル化前、第一のウェーブ、第二のウェーブ、第三のウェーブ」の四つの主要要素があります。  

  • デジタル化前:ビジョンの確立 

デジタル化前の要素は、明確なビジョンの確立、生産性とデジタル課題の結び付け、現在のデジタル成熟度の理解といった作業を対象とします。現実的な目標に基づくビジョンを持ち、それぞれのウェーブによるプログラムの効果を測定できるようにするには、開始前に意欲的かつ測定可能な目標(KPI)を設定することが必須となります。



こうしたウェーブを通じた経路は、固定的であったり、細切れであったり、または「設定して忘れる」ものではありません。最終的な状況に関するビジョンは常に変化しており、企業は必要に応じて適応/変化する必要があります。



  • 第1ウェーブ:最適化と自動化の方法を見つける

第1ウェーブの活動では、局所的な最適化または自動化によりビジネス価値を高めます。一般に、こうしたイニシアチブでは既存の業務モデルを変更する必要がなく、それ自体は変革的ではありません。これらのイニシアチブでは、組織の複雑な相互作用の網を管理する必要がなく、または過剰なビジネスリスクをもたらすこともなく、変革プロセスを開始することになります。

  • 第2ウェーブ:新規イニシアチブの統合

第2ウェーブの活動では、業務モデルの大幅な変更、または場合によっては組織の境界をまたいで混乱をもたらすようなプロセス変更が行われます。例えば企業が、完全に予測的なメンテナンス体制、または設備の整備状況やコモディティの価格と連動したリアルタイムの鉱山計画に移行する場合が考えられます。現在、鉱業/金属セクターでは、第二の波による活動例が比較的少ないようです。

  • 第3ウェーブ:将来に備える

第3ウェーブでは、「混乱をもたらす」要素がもちこまれ、セクターの業務を大幅に変更し、競争力を維持するためのビジネス戦略においてさらに一歩踏み込んだ変化が必要となることがあります。このセクターでは、新規かつ破壊的なテクノロジーが生まれています。新規参入者は、現在試されていないテクノロジーへの資本投資を既存企業よりも積極的に行い、その能力も高い可能性があります。こうしたテクノロジーにより、革新的なビジネスモデルが実現し、バリューチェーン全体で生産性を改善する新たな波が起こる可能性があります。

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ウェーブを開始するプロセスは必ずしも連続的である必要はありません。例えば、生産性との関連性が高い高価値領域では、ビジネスケースとしての説得力が弱い領域で最初の作業を開始する前に、第一のウェーブから第二のウェーブに進むことができます。

デジタル経路:開始のための五つの質問

1.   敏しょう性を維持し、過剰な投資を行わずにデジタル化を進めるにはどうしたらよいか?

推奨されるアプローチは、従来のプロジェクト管理と変わりません。戦略が健全であることを確認し、明確なビジョンでこれを支援します。適切なフェーズ設定とマイルストーンを考えます。価値要因と結び付いた明確なビジネスケースにより投資が裏付けされていることを確認します。変革による文化的影響を検討し、ビジネスの適切なステークホルダーに働きかけます。

2.   最初にどのステップを実行するべきか?

「デジタル化前」のプロセスの一環として、一連の一般的な活動があると思われます。こうした活動では、ビジネスの推進要因と組織のデジタル成熟度を理解することに力を注ぎます。この作業を効果的に行うことで、「おもちゃ箱」のようなイニシアチブを回避し、デジタル変革をビジネス価値に直結させるための正しい作業を特定できます。サイロ化してお気に入りのプロジェクトを追求するのは回避しなければなりません。起業家精神とプロジェクトガバナンスの間で適切なバランスを取ることが不可欠です。

例えば、資産の稼働時間を極めて重視する組織は、重要資産の予測分析から着手することができます。他の企業では、サプライチェーンの変動に対する支援として、意思決定支援システムを導入する必要があるかもしれません。市場主導型の企業では、取引の判断を支援する分析を検討することで、最大限の利点が得られるでしょう。こうした最初のステップを選択する際は局所的な最適化を検討しますが、これらのソリューションが将来どのように結び付くか意識する必要があります。

 3.   生産性、利益率またはコストへの関心を失わずにデジタル変革を開始するにはどうすればよいか?

デジタルイニシアチブは、生産性とコスト利点の関係が明らかな領域でのみ開始すべきであるとEYは考えます。これには長期的な視点が必要となる場合がありますが、組織は、明確なビジネス機会の活用に対するこうした関係を明らかにする前にデジタル化を推進すべきではありません。

4.   デジタルを管理するにはどのような組織構造が必要か?

事業部門内での担当の設定から、専門のデジタル部門、上級管理者の支援を受ける短期のプロジェクトチーム、集中型PMO構造まで、さまざまな選択肢が存在します。特定の企業では、これらの選択肢を組み合わせることがあります。

自社のビジネスにとっての正解は、組織のデジタル成熟度、検討しているデジタルイニシアチブの種類と数、そしてビジネス価値に対するデジタルの相対的な重要度などの要因によって変わります。ビジネスの規模、多様性、地域的な広がりも決定に影響を与えます。最後に、組織構造の選択肢を検討する際は、事業部からの積極的な意見の収集と適切なIST設計の間でちょうど良いバランスを取ることが重要です。

組織は、効率的な稼働環境と革新の必要性の間でバランスを取ることに注意する必要があります。これは場合によって、デジタル革新を事業部門内、その隣接部門、またはその外で行うことが適切であることを意味します。いずれにせよ、明確な姿勢を取ることで、企業内で説明責任、ガバナンス、推進力を構築しなければなりません。

5.   従業員にどのような影響を与えるか?

 

運搬トラック業務や財務報告などの一部の領域では、自動化の推進による一部の雇用喪失は避けられないと思われます。こうした状況は、手動タスクが情報集約的なグローバル労働力に変わっていくという広範な社会的トレンドに沿ったものです。企業には、従業員のスキル改善または再教育を行うことで、現状の現場知識を完全には失わない一方で、自動化およびリアルタイムのデータ利用の利点を活用し、適切なバランスを確立する機会があります。組織は、業務の焦点を意思決定の改善と実行の効率性に移行させることができます。

 

業界内の関係に制約が多い国で活動する組織にとっては、規制当局に働きかけることで業務の性質の変化に対応することが重要となるでしょう。従業員への影響は、地域コミュニティーにも影響します。そのため、組織がこうしたコミュニティーと協力して変化を管理することが重要です。


サマリー

デジタル能力を確保するには、鉱業/金属セクターのリーダーが、完全に統合的なビジネス文化の変化としてデジタル変革を検討する必要があります。報告書全文をダウンロードする(pdf)


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