EYの事例

武田薬品はいかにして、決算プロセスを約2週間短縮できたのか

⼤⼿医薬品企業である武⽥薬品⼯業株式会社(以下、武⽥薬品)は、EYのチームと連携し、財務イノベーションの実施と卓越したプロセスの実現により価値を創造しました。

The better the question

懸命にではなく、賢明に働くために、ファイナンス部⾨は何をすべきか︖

武田薬品は、財務プロセスの変革、決算プロセスの短縮、ユーザーエクスペリエンスの向上を目指しました。

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世界有数の大手医薬品企業である武田薬品は、2019年にシャイアー社を買収した後、ベスト・イン・クラスのファイナンス組織になるための取り組みを開始しました。
 

同社グローバルCFOのCosta Saroukos⽒は、自社ビジョンの達成にはファイナンス組織を進化させる必要があることを認識していました。そのため、EYのチームと3年契約を交わして決算プロセスの徹底したトランスフォーメーションに取り組み、プロセスの短縮とユーザーエクスペリエンス向上を⽬指したのです。


このビジョンを実現し、決算プロセスを改善してベスト・イン・クラスを⽬指すべく開始したのが「プロジェクト・クァンタム」です。


「2020年初めにプロジェクト・クァンタムを⽴ち上げた時、ベスト・イン・クラスの決算プロセスを構築するという⽬標に到達するには長い道のりが待っていることは明らかでした。しかし私は、武⽥薬品のファイナンス部⾨の優秀な⼈材と適切なアプリケーションがあれば、この⽬標は達成できると確信していました」。Saroukos⽒はこう振り返ります。


プロジェクトの範囲は業績目標にまで拡⼤され、ファイナンス・リーダーシップ・チームの強⼒な⽀持のもと、主要指標が設定されました。この主要指標は、各⼦会社のパフォーマンス⽬標に対する達成度合いをトラックする、モニタリングやガバナンスのワークストリームを有効活用するものです。


変⾰を実現させるために、同プロジェクトチームはR2D(Record-to-Disclose:記帳から開⽰まで)のグローバル・プロセス・オーナーが責任者を務め、以下の4つのワークストリームを構築しました。
 

  • 各社個別決算(現地の決算手続きからコーポレートチームへの提出まで)
  • 決算スケジュールとそのガバナンス
  • 財務システム、連結手続きとそのガバナンス
  • 外部開示


同社のプロジェクト・クァンタム責任者 兼 グローバル・プロセス・オーナー(R2D)を務めるBarbara Lenzlinger⽒いわく、「プロジェクト・クァンタムの開始以来、私たちは懸命にではなく、賢明に働き、決算プロセスを短縮することを⽬標にしてきました」

プロジェクト・クァンタムの開始以来の私たちの⽬標は、懸命にではなく、賢明に働いて、決算プロセスを短縮することです。

The better the answer

実効性のある決算プロセスを構築する

プロジェクト・クァンタムには、幅広い専⾨知識と、分野・地域・ビジネスユニットを超えて連携できるチームが必要でした。

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会計プロセスの最適化には、世界各地で標準化された作業方法を実現すべく、グローバルな決算ガバナンスとモニタリングの確⽴が重要でした。プロジェクトチームは、部⾨を超えた連携と全社共通の考え方を促進するために毎⽇ハドルミーティングを開催し、これが決算プロセスの⼤幅短縮につながりました。また、グローバルに統⼀した⽉末締めの決算スケジュールも確⽴しました。


各社からコーポレートチームへの決算提出タイミングをモニタリングすることで、どの決算業務がどの業務に依存しているかが浮き彫りになり、決算プロセスの透明性が高まりました。武田薬品はKPIの1つとして「初回提出時から正確」(提出以降に修正をしない)という指標を設定し、各社がコーポレートチームに財務報告書を提出する際の正確性をより重視しました。その結果、「初回提出時から正確」な会計報告の提出が⼤幅に増え、連結決算のやり直しの回避につながりました。


プロジェクトにとってイノベーションとテクノロジーの進歩は、プロセスの効率性を⾼める上での重要な推進⼒となりました。その取り組みの中核が、発注書(PO)ユーザーからの関連データを簡単に収集しながら毎⽉の費用の見積もり計上を⾃動化する、発⽣主義会計の新たなデジタルソリューションの開発です。このツールは、ユーザーエクスペリエンスを⼤幅に向上させ、グローバルに標準化された⽅法によるデータ照合を初めて実現し、POオーナーにとってのゲームチェンジャーとなりました。最終的に、このツールのリリースにより年間10万時間以上の節約が可能となり、より付加価値の⾼い決算業務に集中できる時間が確保できるようになったのです。


節約した時間
プロジェクト・クァンタムにより1年間に節約できた発注書確認作業の時間

プロジェクトチームは⼿動仕訳⼊⼒(MJE)プロセスを最適化できる⽅法も特定しました。主要なプロセスの⾃動化に焦点を当てた複数の施策をリリースし、リアルタイムの統計情報をより可視化する使いやすいダッシュボードも開発しました。世界各地の作業方法の標準化と管理・モニタリング・報告の改善とが相まって、全世界で⾏われるMJE作業が75%削減できました。これは年間45,000時間の⽣産性に相当します。


さらに節約した時間
1年間に節約できたMJE作業の時間

武⽥薬品はまた、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)におけるデータプロセスを連結決算システムに組み込み、簡略化することを⽬指していました。その⽬的は、システムの複雑さを軽減してデータの透明性を⾼めること、そしてユーザーがデータ分析と洞察により多くの時間を費やせるようにすることです。さらに、同社のデジタルトランスフォーメーションを進める中でプロセスの改良・最適化が可能となり、財務データの透明性を⾼めました。

同社のチーフ・アカウンティング・オフィサー(CAO)である⽵⽥徳正⽒は、次のように述べています。「各社からの連結決算システムへのデータ提出プロセスの変更は、決算プロセスの短縮という⽬標を達成する上で最も重要な取り組みの1つでした。チームは部⾨を超えた素晴らしい連携を実施してくれました。すべてのユーザー向けの総合的なトレーニングマニュアルと標準操作⼿順(SOP)は、私たちにとって大切な資産です。また、この改善により連結決算チームはプロセスのさらなる効率化を進め、連結実績報告プロセスを合理化することができました」

外部開示チームは⽇本国内における決算開示資料の作成分野での機会に着目し、新しいプラットフォームをリリースしました。このプラットフォームは⾼品質な財務報告書の作成にかかるマニュアル作業を削減し、従来は数週間を要していた作業をわずか数ステップにまで減らすことに成功したのです。現在では、製品別や地域別の売上などの複雑な財務開⽰情報の準備が⾃動化され、作成から完了までがボタン1つで操作できるようになりました。


The better the world works

ベスト・イン・クラスのファイナンス組織を目指して

武⽥薬品の財務トランスフォーメーションは、ユーザーエクスペリエンスに重点を置き、時間とコストを節約します。

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この3年間、武⽥薬品のファイナンス部⾨とデータ・デジタル&テクノロジー(DD&T)部⾨、そしてEYのチームが連携し、30以上のグローバルな取り組みを実施してきました。プロセスに関する優秀なエキスパート、デジタルの推進者、そして外部のベストプラクティスを1つのチームにまとめることで、従業員は懸命にではなく、賢明に働くことが可能となり、同社の決算プロセスは9営業⽇短縮されたのです。


迅速化
決算プロセスで短縮された作業⽇数

「これを達成できたことは、⾮常に大きな節目となりました」と、タケダビジネスソリューションズ(TBS)の責任者であるSanjay Patel⽒は述べています。「関係する全グループの努⼒なしには実現できなかったでしょう。ファイナンスオペレーティングモデルの⼒、そして、DD&T部門のサポートを得ながら、要となる⼈々がそれぞれの役割を果たしていることの証でもあります。1つのチームが1つのビジョンを共有し、境界を超えて取り組んだことを⽰す好例です」

武⽥薬品の次なるステップは、記帳から開⽰までのグローバルなプロセスオーナー組織に、継続的改善のフレームワークを組み込むことです。これからの重点は、過去数年間にわたって実施されたプロジェクトのメリットを安定化・最⼤化し、同社のファイナンス組織が今後もベスト・イン・クラスであり続けることです。

「過去3年間のプロジェクト・クァンタムの遂行において、現状への挑戦、組織の壁を超える考え⽅、財務決算プロセスの改⾰などに取り組む上で、ファイナンス部⾨とTBSの両組織は非常に高いレベルのエンゲージメントとサポートを提供したと思います。より俊敏性の⾼いファイナンス組織へと成⻑できたのは、スピードと熱意のおかげです。私たちはこれからも、それらを持ち続けていけると確信しています」(Saroukos⽒談)

EY Financial Accounting Advisory Services パートナーのFrederik Schmachtenbergは、こう述べています。「過去3年間、武⽥薬品とEYのチームは、3つの異なる地域とタイムゾーン(⽇本、欧州、⽶国)において、多⼤な努⼒を重ね、グローバルかつシームレスな連携に取り組んできました。チームメンバーの⼀⼈⼀⼈が皆同じ⽅向を向いたことで⼤きく進歩し、ベスト・イン・クラスの決算プロセスが実現しました」


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