令和6年度税制改正大綱(概要版)

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2023年12月19日 PDF
カテゴリー 税制改正関連

Japan tax alert 2023年12月19日号

令和5年12月14日に、令和6年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の国会における改正法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意ください。

 

法人課税

1. 戦略分野国内生産促進税制の創設

国として戦略的な長期投資が不可欠となる対象物資が選定され、それらの商品を生産するための機械・設備を取得した場合に、それらの商品の生産・販売量に比例して法人税額を控除する戦略分野国内生産促進税制が創設されます。具体的な対象物資は、電気自動車等(蓄電池)、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF(持続可能な航空燃料)、半導体とされ、物資ごとに単価が設定されます。措置期間を通じた控除上限は既設の建屋等を含む生産設備全体の額とされるほか、各年度の控除上限は当期の法人税額の40%(半導体については当期の法人税額の20%)となります。企業の投資の中長期的な予見可能性を高める観点から、措置期間を計画認定から10年間という極めて長期の措置とした上で、4年間(半導体は3年間)の税額控除の繰越期間が設けられます。

2. イノベーションボックス税制の創設

企業が国内で自ら研究開発を行った特許権またはAI分野のソフトウェアに係る著作権について、当該知的財産の国内への譲渡所得または国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認める制度が創設されます。令和7年4月から7年間を期限とします。所得全体から知的財産から生じる所得のみを切り出して税制優遇を行うという制度であり、わが国の民間企業による無形資産投資を後押しします。税制適用の対象範囲については、状況に応じ、今後見直しが検討されます。

3. 賃上げ税制の見直し

大企業については、より高い賃上げへのインセンティブを強化するため、前年度から7%以上の賃上げをした企業は増額分の25%を法人税額から控除できることになります。女性活躍・子育て支援を後押しする企業には、一定の要件のもとで控除率の上乗せ措置が講ぜられます。大企業・中堅企業の最大控除率は、35%となります。また、中小企業の最大控除率は45%に引き上げられるとともに、赤字の場合には控除できなかった部分の5年間の繰越しが可能となります。

4. 外形標準課税制度の見直し

法人事業税における外形標準課税対象法人の現行基準(資本金1億円超)は維持されますが、補充的な基準が追加されます。前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には外形標準課税の対象とすることとされます。この改正は令和7年4月1日に施行され、同日以後に開始する事業年度から適用されます。直前の駆け込み減資等を防ぐ措置も講じられます。

5. その他

  • 発行者以外の第三者が継続的に保有する暗号資産については、一定の要件のもと、期末時価評価課税の対象外とされます。
  • パーシャルスピンオフを適格株式分配とする制度について、見直しを行った上で適用期限が4年延長されます。
  • オープンイノベーション促進税制は、適用期限が2年延長されます。
  • 中小企業事業再編投資損失準備金制度が拡充されます。
  • 特定税額控除規定の不適用措置(いわゆるムチ税制)について、要件が強化されます。
  • 交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準について、現行の一人当たり5千円以下から1万円以下に引き上げられます。


国際課税

1. グローバル・ミニマム課税

令和5年度税制改正において導入された所得合算ルール(IIR: Income Inclusion Rule)について、所要の見直しが行われます。OECDにおいて令和6年以降も引き続き実施細目が議論される見込みであるものについては、国際的な議論を踏まえ、令和7年度税制改正以降の法制化が検討されます。

2. 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備

暗号資産等を利用した国際的な脱税および租税回避を防止する観点から、非居住者の暗号資産に係る取引情報等を租税条約等に基づき各国税務当局と自動的に交換するため、国内の暗号資産取引業者等に対し非居住者の暗号資産に係る取引情報等を税務当局に報告することを義務付ける制度が整備されます。

3. その他

  • 外国子会社合算税制について、追加的な見直しが行われます。
  • 内国法人が外国法人の本店等に無形資産等の移転を行う現物出資について適格現物出資の対象から除くこととされます。また、移転資産の内外判定の規定が見直されます。
  • 過大支払利子税制の超過利子額の繰越期間が10年に延長されます。
  • 子会社株式簿価減額特例制度の見直しが行われます。

 

所得・消費・資産課税・納税環境整備

1. 所得税

  • 一人当たり所得税3万円、住民税1万円の定額減税が実施されます。納税者本人に加え配偶者や扶養親族も対象となりますが、所得制限が設けられます。
  • 児童手当の対象が高校生まで拡大する代わりに、16~18歳の子どもに対する扶養控除が縮小されます。
  • 若い夫婦や子育て世帯に限って、引下げ予定であった住宅ローン減税の借入限度額が令和6年も維持されます。
  • ストックオプションの税優遇を得られる権利行使価格の上限が、一定の要件のもと、現行の1200万円から3600万円に引き上げられます。

2. 消費税

  • 国外事業者に代わってプラットフォーム事業者に納税義務を課す制度が導入されます。国外事業者が提供するデジタルサービスを対象とし、対象となるプラットフォーム事業者は一定の規模を有する事業者とされます。
  • 国外事業者により行われる事業者免税点制度や簡易課税制度を利用した租税回避を防止するために、必要な制度の見直しが行われます。
  • 外国人旅行者向け免税制度について、出国時に税関において購入物品の持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度に見直されます。令和7年度税制改正において、制度の詳細について結論を得るとされています。

3. 資産課税

  • 固定資産税の負担調整措置が令和6年度から令和8年度までの間、継続されます。
  • 事業承継税制(特例措置)について、特例承継計画の提出期限が令和8年3月末まで2年延長されます。

4. 納税環境整備

  • 仮装・隠蔽したところに基づき「更正の請求書」を提出した場合が、重加算税の賦課対象に加えられます。
  • 法人の代表者等が不正行為を行い、法人の財産を散逸させて納税義務を免れる行為等に対して、一定の要件のもと、当該代表者等に対して国税の第二次納税義務を課す措置が講じられます。

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