EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
その実践プログラム「第2期WABNアカデミー」には10人の選抜メンバーが参加しました。ここでは、半年間の活動へのアカデミー生の思い、2023年4月の閉講式の模様をレポートします。
WABNの活動は、「優れた女性アスリートは起業家としても有望な資質を持つ」というEYの独自調査(PDF:5.2MB)の結果に基づいています。世界の400人の女性起業家への調査で、94パーセントの人が、スポーツを経験していたというデータも得ており、女性アスリートには、高いビジネスリーダーシップ能力が潜在的に備わっているとWABNは考えています。
にもかかわらず、女性アスリートが社会で資質を生かし切れていない現状に、EYは長年、危惧を抱いてきました。EY JapanのWABNリーダー 佐々木 ジャネルは「もどかしかった」という思いをこう明かします。
「女性アスリートはメンタルが強く、目的を達成する能力が高いのに、いざその経験をビジネスに生かそうと思っても、何をどう始めていいか、分からないという人が多いのです。それどころか、セカンドキャリアが思うようにいかないため、過去のアスリートとしての実績や経験への自信まで失ってしまう人もいる。でも、それはもったいないこと。だったら、私たちが女性アスリートたちにビジネススキルを伝えれば、社会に大きな価値を生むと考えました」
つまり、「WABN」の願いは、スポーツ界で成功した女性アスリートに、ビジネスの世界でも成功するきっかけをつかんでほしいということ。そして、アスリートの成功をサポートする実践の場が「WABNアカデミー」なのです。
「WABNアカデミー」は、ビジネスのプロであるEY Japanのスタッフが起業家精神やマーケティング戦略などを解説する8回の「セッション」と、担当メンターによる1対1の対話を通じ、行動を起こすための導きを得る「メンタリング」、さらに3~4人ずつ分かれて事業の企画書を作製する「グループワーク」を3つの柱としています。
第2期生の顔ぶれはこちら
第2期生のひとり、山田 幸代さんは、すでに起業家として活躍中ですが、WABNアカデミーに参加した動機について、「お金の知識が私の弱いところ。セッションを通じ、知見のある方にもっと学ばせてもらいたかったんです」と語っています。そして、半年間の学びについて、こう振り返りました。
「多くのアスリートは、自分主体で物事を考え、思いを発信することは得意。でも、起業し、お金を動かそうと思うのなら、もっとまわりに目を向け、客観的に細分化して物事を表現しなければなりません。それなのに以前の私は、完全に自分の思い先行型(苦笑)。企画書を書く場合においてもそう。しかし、アカデミーを通じ、特にお金の部分で、何をどう書けばいいか、細かい点まで深く学ぶことができました。たとえ企画書が自分から離れても、大事な部分に目をとどめてもらえる表現方法も学べたと思います」
(元日本代表。台湾ラクロス女子代表監督)
こう話す山田さんは、それぞれのセッションでの学びを企画書に落とし込む「グループワーク」でも積極的な姿勢が目立ちました。グループワークでは、以前から温めていたという事業計画「Kids×Sports×Dreams(キッスポドリーム)」の企画書作りを提案。子供たちにさまざまな競技や、スポーツに関連する仕事を体験する機会を与えるビジネスの実現化のため、なぜこの事業が有益か、どんなサービスをどこで提供するのか、どう収益化するかなど、アカデミー生3人と企画書を練り、アカデミー最終日に発表を行いました。
「グループワークで大変だったのは、情報が少ないアイデアに対し、どう説得力を持たせるか。私は事業計画に企業版ふるさと納税を組み込むべきだと思ったのですが、情報が少なく、なぜそれがよいか、まず、みんなを説得することが難しかったんです。さらに説得できた後も、実際にどう活用できるか、みんなで調べなければならず、時間をかけて計画に組み込めたという経緯もありました」
しかし、こうした苦労の末、完成した企画書は、最終日、審査員から「廃校の利用で固定費がしっかり抑えられ、事業として十分可能」「企業版ふるさと納税の活用もいいアイデア」など、高い評価を獲得。山田さんは「セッション、メンターの方のアドバイスがあったからこそ、形にできた」とWABNアカデミーでの学びに手応えを得ていました。
また、ほか2グループは、「アスリートのセカンドキャリアを支援するプラットフォームの立ち上げ」「アスリートとの対話を通じ、子供が自己肯定感を高める場の創設」を目的にした事業企画をグループワークとして発表しました。
セカンドキャリア支援を提案したカーリング選手の青田しのぶさんは、最終日、涙をこぼしながら、WABNアカデミーを通じ、成長できたことを喜んでいました。特に「感謝している」と話したのは、担当メンターとの「メンタリング」です。
「受講前、アスリートとしての経験を生きる活力にし何かしたいと、漠然と思っていましたが、何をどう生かしていけばいいか、分からなかったんです。でも、メンターさんにアスリートとして苦しかった思い出を話したり、自分の個性や強みを言語化してアウトプットすることで、驚くほど、あれもできる、これもできるというエネルギーが沸き立つようになりました」
「子供が自己肯定感を高める場の創設」を提案したパラ陸上の新田恵子さんもまた、WABNアカデミー、特にメンターとの対話を通じ、夢の実現に一歩近づいたと感じています。
「以前の私は、スポーツとビジネスを結ぶ何かがしたいとおぼろげに思っていても、何が分からないのかも分からない状態。でも、メンターさんに相談し、夢をどう収益化し、持続可能にしていくか、フィードバックをもらい、意識や意欲が変わりました。今後、何をするか、具体的な内容は明かせないのですが、夢の実現のため、前へ進もうと思います。WABNは私に勇気をくれました」
こうして第2期WABNアカデミーも、アスリートたちの背中をしっかり後押しして幕を閉じました。第3期生の募集は7月から、プログラムは10月からスタート。参加をご希望される方は、WABNアカデミー事務局 wabn.japan@jp.ey.com までご連絡ください。
「第2期WABNアカデミー」は、2022年10月から6カ月にわたるセッション、1on1 メンタリング、グループワークからなるプログラムを終えました。アカデミー生の皆さまの今後のますますのご活躍を願っています。