電機産業 第5回:リベート取引に関する会計処理と内部統制の特徴

2020年11月5日
カテゴリー 業種別会計

EY新日本有限責任監査法人 テクノロジーセクター
公認会計士 小島慎一/牧野幸享/松本貴弘/渡邊裕介

1. リベート取引に関する会計処理

コンシューマ産業の取引慣行として、家電量販店をはじめとした顧客企業にリベートを支払うことがあります。リベートは売上割戻とも呼ばれ、ボリュームディスカウント、販売促進費、販売助成金、協賛金などの名目で支払われるものです。

リベートの会計処理においては、各企業のリベートの支払目的に応じて多様な取扱いがあるため、売上高から控除する処理と、販売費及び一般管理費として処理する方法のいずれも行われています。日本の会計基準では、リベートに関する会計基準が存在しないため、取引条件及び、その支払の実態に応じて、個別に判断する必要があります。売上高から控除する処理は、リベートが販売価額の一部減額、売上代金の一部返金という性格を有する場合に採用されていると考えられます。ただし、リベートの条件は様々であり、場合によっては期末時点でリベート金額が確定しない場合もあり得ます。その場合は、必要に応じて引当金等として計上することになります。

販売費及び一般管理費とする処理は、リベートが顧客企業に対する販売促進費等の経費の補てんとしての性格を有する場合に採用されていると考えられます。

2021年4月1日以後開始する事業年度から原則適用となる「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識基準)において、顧客企業に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額することとなったので、従来、販売費及び一般管理費として処理している場合は、会計処理の見直しを検討することになると考えられます。

また、顧客に支払われる対価を取引価格から減額する場合、「関連する財又はサービスの移転に対する収益を認識する時点」又は「企業が対価を支払うか又は支払を約束する時点(当該支払が将来の事象を条件とする場合も含む。また、支払の約束は、取引慣行に基づくものも含む)」のいずれか遅い時点で収益を減額することになりますが、収益を認識するタイミングでリベートの額が確定していないケースがあります。この場合、リベートとして収益を減額する金額(変動対価:顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分)は、過去の実績等に基づいて、期待値又は最頻値のいずれか適当な方法を用いて見積もり、見積もった取引価格を各決算日に見直す必要があると考えられます。

2. リベート取引に関する内部統制の特徴

リベート取引は、契約締結時に販売価額の減額又は代金の支払が確定していないことが多いと思われます。そのため、事後的にリベート金額を決定する場合において、リベート取引自体の正当性及び金額の妥当性を確保するために、適時かつ適切な外部交渉、及び社内承認を行う内部統制を整える必要があります。

また、リベート取引は販売実績等に基づいて計算することも多いため、リベートの計上漏れが発生する可能性があります。この計上漏れを防止するために実績計算にシステムを導入し、結果を人為的にチェックする統制を実施する企業もあります。

まとめ

これまでに解説したとおり、電機産業は非常に幅が広く、すべての製造業の要素を何かしら含んでいる業界といえます。特に、21年4月1日以後開始する事業年度から収益認識基準が原則適用となるので、各企業においては、適用による影響を網羅的に検討することが重要であり、内部統制及び情報システム等への影響を十分に検討することが必要であると考えられます。

参考文献
  • 半導体産業新聞編集部著『図解 半導体業界ハンドブックVer.2』(東洋経済新報社)
  • センス・アンド・フォース著『図解入門業界研究 最新 半導体業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)
  • 福井晋著『図解入門業界研究 最新 電気業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)