証券業 第7回:引受け・売出し(アンダーライティング)業務および募集・売出しの取扱い(セリング)業務について

2011年4月15日
カテゴリー 業種別会計

証券業研究会
木村嘉浩/本間正彦

7. 引受け・売出し(アンダーライティング)業務および募集・売出しの取扱い(セリング)業務について

ここでは、前述の引受け・売出し(アンダーライティング)業務および募集・売出しの取扱い(セリング)業務について、特に引受け業務に焦点を当てて説明します。なお、引受け業務は自己売買業務に類似した側面もあるため、取引の流れ、特徴的な会計処理および収益認識時点について、主に仕訳を用いて説明します。

(1) 引受手数料等の会計処理

関連する手数料は、「統一経理基準」においてその計上時期が具体的に定められています。

①引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料
引受責任料および事務幹事料相当額は条件決定日。販売手数料相当額は募集等申込日(引受手数料および事務幹事手数料相当額と一括して条件決定日に計上する場合には、当該条件決定日とすることができる。)。
②募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料
募集等申込日。
受益証券等または投資証券等で、売買形式によるものは普通取引の委託手数料の計上時期に準じる。
<引受けにおける会計処理の流れ>

引受け業務における一連の流れを仕訳で簡便的に示すと、以下のようになります。ここでは販売手数料相当額は募集等申込日に計上する方法を前提としています。

① 条件決定日

① 条件決定日

② 顧客からの募集等申込日

② 顧客からの募集等申込日

③ 顧客からの入金時

③ 顧客からの入金時

④ 発行会社等への払込時

④ 発行会社等への払込時

⑤ 払込日

⑤ 払込日

⑥ 引受手数料等の入金時

⑥ 引受手数料等の入金時

なお、新規公開株式以外の有価証券については、募集価格から「販売手数料相当額」を控除した額を単価として、販売価格との差額が手数料相当額として認識されます。

また、募集・売出しの取扱い業務で有価証券等を直接保有しない場合は、募集等申込日(上記②)において「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」を計上し、その後に入金を受けることになります。

まとめ

有価証券関連業は、その特殊性からさまざまな法律や規制等が定められています。また、有価証券関連業の会計を理解するためには、一般事業会社で必要な経理知識のほかに証券会社固有の会計処理および表示等も理解する必要があります。

最後に、本文中で使用した表やフローチャートおよび仕訳例等は極力簡便的にかつ概観を説明することを重視しているため、省略されている部分や厳密さに欠けている点があること、また、例示した委託売買業務および自己売買業務に関する財務報告に係るリスクおよび統制活動は、すべてが必須のもの、あるいはこれだけに限定されるものではないことをお断りさせていただきます。

関連法規等

  • 金融商品取引法
  • 金融商品取引業等に関する内閣府令
  • 有価証券関連業経理の統一に関する規則
  • 顧客資産の分別管理Q&A(改訂第2版)日本証券業協会

参考文献等

  • 新・証券市場2010 日本証券業協会 証券教育広報センター 髙橋文郎
  • 金融機関の内部統制〔改訂版〕 評価と文書化手続のすべて 新日本有限責任監査法人金融部 金融財政事情研究会
  • 統一経理基準による証券会社の経理と決算 日本証券業協会内経理研究会編 財団法人大蔵財務協会
  • 証券会社各社ホームページ

(週刊 経営財務 平成22年11月1日 No.2989 掲載)