公認会計士 内川 裕介
公認会計士 七海健太郎
1. 退職給付引当金と退職給付費用との関係
【ポイント】
退職給付は、個別財務諸表上(※)、主に「退職給付引当金(B/S)」と「退職給付費用(P/L)」の二つの勘定科目によって処理されます。当該二つの科目は、【図2-1】のとおり、退職給付引当金の1会計期間の増加額と退職給付費用の金額が一致するという関係を有しています。
※ この回では個別財務諸表における処理を前提としています。連結財務諸表での処理については第4回をご参照ください。
退職給付引当金と退職給付費用の関係を図表によって示した場合、【図2-1】のとおりとなります。なお、退職給付引当金については、期首残高と期末残高の内訳との関係も併せて示しています。
【図2-1】
退職給付引当金と退職給付費用それぞれについて、以下、具体的に解説していきます。
2. 退職給付引当金の構成要素
【ポイント】
企業の退職給付に係る実態をB/Sに表す際には、退職給付引当金として計上を行います。 退職給付は将来の退職給付見込額など、見積りの要素を多く含む会計項目であるため、会計上の見積りである「引当金」としてB/Sに計上されます。
退職給付引当金の内訳を図表で示すと、【図2-2】のとおりとなります。
退職給付引当金は、退職給付債務から年金資産を差し引いた金額に、未認識数理計算上の差異と未認識過去勤務費用を加減算して算出します。
以下、退職給付引当金の各構成要素の基本的な内容について、説明します。
【図2-2】
3. 退職給付費用の構成要素
【ポイント】
企業の退職給付に係る実態をP/Lに表す際には、退職給付費用として計上されます。退職給付費用は、当期の会計期間において退職給付引当金が増加した部分としてP/Lに表されます。
退職給付費用の構成要素を図で示すと【図2-3】のとおりになります。
【図2-3】
4. 具体的な算出方法
【ポイント】
退職給付引当金は、勤務費用などの退職給付費用の発生により増加する一方で、会社が退職者に退職給付を直接支給する場合や、年金資産へ掛金を拠出することによって減少します。これら増減項目を集計し、仕訳に反映させた結果として、退職給付引当金の期末残高が決まることになります。
まず、B/Sにおける退職給付引当金勘定の増減を図で示した場合、【図2-4】のとおりになるとします。
【図2-4】
この場合、退職給付引当金の④期末残高は以下のような計算式によって算出されます。
④期末残高
=①期首残高1,200+②増加(退職給付費用)500-③減少(支給又は掛金拠出)300=1,400
【図2-4】の、退職給付引当金の「期首残高」「増加」「減少」「期末残高」それぞれの内容について、「1.退職給付引当金と退職給付費用との関係」の【図2-1】で示した具体的な数値例を基に、以下で説明していきます。
この記事に関連するテーマ別一覧
わかりやすい解説シリーズ「退職給付」
- 第1回:退職給付会計とは (2015.04.15)
- 第2回:退職給付引当金と退職給付費用 (2015.04.15)
- 第3回:退職給付費用 (2015.04.15)
- 第4回:連結上の表示組替 (2015.04.23)