EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
3つの質問:
AIをはじめとする最新技術の導入は、企業のIT戦略において中心的な役割を担い、重要な予算配分が求められています。しかし、レガシーシステムや古いアドオンを多く抱えるERPシステムが、新規投資の余地を狭めている日本企業も少なくありません。EYが指摘する「価値の流出」とは、時間がたつにつれて投資のリターンが減少する現象を指し、IT予算の適切な管理には不可欠な考慮点です。EYは、これらのIT投資を最適化し、持続可能な成果を生むための体系的なサポートを提供しています。
先行き不透明な経済情勢にもかかわらず、テクノロジーリーダーの大多数は、今後1年間にデータサイエンス、アナリティクス、サイバーセキュリティ、AIへの多額の投資を見込んでいます。企業のテクノロジー投資は全体的に増加傾向ですが、戦略的なCIO(最高情報責任者)は、ビジネスの年間目標に見合う投資計画を立て、ITによる生産性を向上させることの必要性を認識しています。
「今現在、私たちのどのクライアントも直面している課題の1つは、IT部門が自社のビジネス目標を俯瞰的に理解し、同じ目標に向かって行動するよう働きかけ、また確実にそうさせることです」と、EY Americas Technology Strategy and Transformation LeaderであるMazen Baroudiは述べています。
CIOがIT部門にビジネス感覚を浸透させ、ビジネス部門とIT部門との間の壁を取り払うことができれば、CIO自身そしてIT部門の業務範囲や社内への影響力、またビジネスインパクトを大幅に増強させることができるのです
AI技術の中でも、特に生成AIの勢いが2023年から加速したことで、テクノロジー投資とその優先順位付けの複雑さは新たなレベルに達しています。生成AIへの投資が本格展開するには数年以上かかるかもしれませんが、変革を加速するためのテクノロジー投資は今まさに進行中です。企業が計画する生成AI関連の資金調達(PDF、英語版のみ)には複数のシナリオがあり、CEOの37%が主に他の投資予算から捻出し、34%が新規に調達し、26%がテクノロジー関連予算から再配分すると回答しています。
CIOはこれまで長い間、賢明なテクノロジー投資策を模索しなければならないプレッシャーを感じてきました。今はさらに、投資要請の頻度や負うべきリスクも高まっています。EYによる最新のCFO調査(英語版のみ)によると、企業の財務担当役員は圧倒的に2024年の状況や債務コストの増加を警戒しており、71%が運転資金を引き締め、88%が投資の判断基準となるハードル・レート(最低収益率)を引き上げると回答しています。
進化し続けるテクノロジー環境において一歩先を行くためには、IT運用コストの最適化が避けては通れない課題です。この局面を乗り越えるためには、ITコストを最適化するための適切な戦略を立て、実行することが必須であり、このことがまさにゲームチェンジャーとなり得るのかもしれません。ITコストに注視することは、レジリエンスを高めることと表裏一体であり、また価値創造にもつながります。「新たなツール、テクノロジー、市場の制約、M&Aといったさまざまな外部環境要因が変化するスピードに、CIOも常時追いついています。CIOは、特定の領域に思い切った投資をし続けるよう努めていると同時に、投資計画の軌道修正が必要な場合にはリーダーシップを発揮する能力も備えています。例えば、一部のプロジェクトで中断すべきタイミングを判断し、優先的に投資を増やす領域を選別することもあるでしょう」とBaroudiは言及しています。
本来のコスト最適化には、自社のビジネス価値を最大化しつつ、支出を削減する目的があります。そのため、テクノロジーを駆使したビジネスの継続が前提となります。例えば、コスト削減を通じて再投資の機会を得ようとする場合、IT部門ではそのITサービスの定期的な見直しを検討するかもしれません。また、ベンダーに対するガバナンスを厳格化することによって、ITサービス支出の急増が抑えられ、自己防衛にもなるはずです。
「時間の経過とともに、ほとんどの企業でITサービス支出の対価が目減りする『価値の流出』が生じます。比較的少額で支出頻度の高いベンダーのテール支出(非計画購買)分析から、ベンダーやプロバイダーの数が必要以上に急増していれば突き止めることができます。また、ベンダー支出のパレート分析を実施することで、戦略的に関係強化すべき外部パートナーを選定し、委託先ベンダーを集約する機会を見極めることができるでしょう。これらは、CIOが主導できる重要なアクションです」と、EY Americas Technology ConsultingのAnja A. Allenは示唆しています。「レートカード(価格表)のベンチマークを定期的(少なくとも隔年)に設定し、新たに検討するサービスと比較することで、市場レートから乖離した支出となることを回避できます。また、市場のスキルセット分析を行うことで、コモディティ化したために単価が下落傾向にあるスキルには何があり、また、依然として需要が高く、プレミアムレートでなければ調達できないスキルは何であるかを判別できるでしょう」
EYでは、ITコスト最適化を図るために着目すべき5つの重点分野(英語版のみ)を提案しています。経営層とともにコスト削減対策を担うCIOは、コスト削減分を再投資に振り向けることよって、潜在的なビジネス価値を高める結果となるように、うまくバランスを取らなくてはなりません。このバランスを適切に維持することが、変化するテクノロジー環境でビジネスを成功に導くための鍵となります。このことはCIO単独では達成できず、ビジネス部門とのパートナーシップが必要です。経営層や他部門との協働は、一度で完了するものではなく、継続的に行い、注力していくことが欠かせません。
Allenは、「すべてのIT関連支出をビジネス需要にひも付けることが、継続的なコスト削減にもつながります。それは、過剰または過少に陥るリソース分配を防げるからであり、既存のリソースをより有効に活用し、不要な支出を回避する手だてにもなるからです。また、十分に活用されていない、もしくは時代遅れとなったサービスやインフラを特定して無駄を減らし、コストの透明性を高めることにもなるのです」と述べています。
さらに、ビジネス成果に結び付くような慎重な手法を取り入れることで、継続的かつ積極的にコストの最適化戦略をCIOが働きかけた実績を示す機会となり、CFO(最高財務責任者)からの協力を首尾よく得るきっかけにもなるはずです。コスト最適化戦略の有用性は、より効率的なソリューションやアプリケーションの利用ニーズを喚起し、望ましいサービスやプロセスに合わせたユーザーの需要と行動を促すことができる点にもあります。
ビジネス戦略の目標に対するITの貢献度について理解がなければ、多くの場合、コスト削減はできても、真のコスト最適化には至りません。CIOは、意図的かつ的を絞ったITコスト最適化戦略を実践することで、この通例に挑み、イノベーションやデジタルビジネスに取り組むための資金確保に成功できるのです。
ビジネス価値の創出や、企業の成長を引き出すプロジェクトに投資を振り向けるべきです。これは、顧客やエンドユーザーのエクスペリエンスを向上させ、売上成長をもたらすプロジェクトを優先することを意味します。
可能な限りオペレーションを合理化し、複雑さを軽減することで、コストの透明性を確保し、よりインパクトの高い取り組みにリソースを充てることができます。
対象とするベンチマークや開始時点の状況を明確に定義した上で、進捗状況を示していくことが必要です。戦略的にコスト最適化を図るルールをどのように設定するのか、また持続可能な変化をどう促していけばよいのか、これらの方法を検討することがIT部門に求められます。
CIOは、先端テクノロジーへの投資を最適化する機会を見いださなくてはなりません。ITコスト最適化戦略の実践は、既存の予算から再投資すべき領域を特定する手だてになります。効果的なコスト最適化を立案し、実施することで、企業は不要な支出を防ぎ、十分に活用されていない、もしくは時代遅れとなったサービスやインフラを特定し、コストの透明性を高めることができるのです。
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