EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
「次世代教育・就労支援」の一環として、世界中でEYのメンバーファームが活用しているEY Future Skills Workshopを日本でも展開しています。2022年11月には、和歌山県立和歌山商業高等学校の生徒に向けてEY Future Skills Workshopの起業家精神ワークショップを実施しました。EYのグローバルなチームが作成した教材を日本向けに再編集し、日本の学生ならではの社会課題に対する特定方法と解決方法を検討、ビジネスアイデアを考えることに焦点を当てました。
終了後、ある生徒から以下のようなコメントがありました。「自ら問題点を探して改善へ進める方法を学んだことにより、もし将来起業したら自分の会社をどうしていくかを考えるスキルを学べた」
その他にも、金融リテラシー講座などを日本の小学生向けにローカライズして実施しています。
EY Japanでは将来の働き方や日本の社会問題を自分ごと化して検討するためには、起業家精神やイノベーションに対する柔軟な捉え方が必要だと考えています。日本のFuture Skills WorkshopはEYの世界基準の教材に加え、日本独自の問題や視点を追加することで、より付加価値のあるスキル習得の機会を提供しています。
気候変動による非常事態と、地球規模のパンデミック、デジタル化が加速する中で成人する若者が働く世界は、従来とは全く異なるものになるでしょう。この変化の背景には、ハイブリッド化し、柔軟になった働き方だけではなく、雇用者が新たなスキルセット、資質、姿勢を求めていることもあります。
雇用者、教育者、そして次世代を担う若者自身も、たとえ将来の職場がどのようなものであっても適応し成功するには、従来とは異なる考え方とスキルが必要であることを認識しています。
このような新しい能力は、多くの場合、批判的思考(critical thinking)、創造性(creativity)、意思疎通(communication)、協働(collaboration)の「4C」で説明できます。この「4C」は、長期的な方向性やビジョン、複雑さの認識や異文化への対応能力まで、人間の能力を幅広く捉えています。
EYとジュニア・アチーブメント(JA)・ワールドワイドの合同チームは、 昨年約6,000人のZ世代の学生を対象に調査を実施しました。この調査結果で学生は、金融・起業・環境リテラシーなどの学際的なテーマの探求に比べ、伝統的な授業科目の重要性をかなり低く(最大20ポイント差をつけて)評価しています。
キャリアにおける長期的成功と持続可能な能力開発の両面で極めて重要な4Cの資質は、EY Future Skills Workshops (FSWs)の焦点となっています。FSWsは、5歳から22歳までの生徒・学生が地球市民として仕事に就く準備ができるよう支援する新しい学習プログラムで、従来の教育環境では習得できないテーマについて学べるようになっています。
第1章
エクイティ(公正)とインクルージョンの向上が、EY Future Skills Workshopsの継続的進化の原動力です。
ある地域のEYのメンバーファームにおいて、数年間にわたり、ブロックチェーン、サステナビリティ、人工知能(AI)などのテーマで若者を対象とするスキル習得プログラムが開催されました。EY Future Skills Workshopsの目的は、この取り組みをグローバルな規模で展開することです。
2019年にEYのグローバル企業責任(Corporate Responsibility)チームは、新しいテクノロジー、サステナビリティ、起業家精神、ビジネス倫理、金融、さらにダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)などの多様なテーマに関して、13歳から18歳までの学生を対象とする対話型のワークショップのパイロット版を開発しました。その更新版は好評を博し、生徒・学生から大きな支持を得ました。サステナビリティをテーマとするモジュールについて、コスタリカのある学生は、次のように述べました。「このワークショップは、私たちの世代が地球のために意見を発信する後押しをしてくれます。私たちは気候変動の危機について学び、それを人に伝え、力を合わせて学校や地域社会に変化をもたらそうとしています」
学校、非営利団体およびEYの参加者からは、ワークショップのパイロット版に対する強い需要と肯定的な評価が得られました。これを受け、EYのカリキュラム開発者は、より広い領域を対象とする質の高いコンテンツの制作に取り組みました。
デジタルリテラシーやパーソナルブランディングなどの新しいテーマの追加だけでなく、より幅広い年齢層を対象とするよう内容の調整も行われました。ケーススタディーとグループ活動を通じた学生の参加の増加に伴い、学習の継続および家庭学習のための配布資料が増え、そのコンテンツが及ぼす影響・効果も増大しました。
このワークショップは、私たちの世代が地球のために意見を発信する後押しをしてくれます。私たちは気候変動の危機について学び、それを人に伝え、力を合わせて学校や地域社会に変化をもたらそうとしています。
2019年以来、Future Skills workshopsは45カ国以上で実施され、60,000人の若者が参加しました。
EY Future Skills Workshopsは考案当初、対面で実施するプログラムでしたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生を受け、実施方法を変更せざるを得なくなりました。 主要な青少年支援組織を対象に実施した2020年の調査で明らかになったように、バーチャル学習への大規模な転換にはさまざまな課題が伴いました。例えば、デジタル環境下で意欲の低下を防ぎ、相互交流の水準を維持することや、バーチャルイベントを適切に運営するために必要な追加のトレーニングとガイダンスをファシリテーターに提供することなどです。
しかし、このような課題が山積する中でも、デジタルでの実施に移行したことにより、EY Future Skills Workshopsの規模と対象範囲は拡大しました。対面プログラムの内容は、実施する組織の基本業務に関連するものに集中していましたが、バーチャルモデルでは、場所や背景に関係なく人々がつながることができるため、規模の拡大と公平性の向上につながりました。
例えば、イタリアでは、EYはJAイタリアと連携し、オフィスに近い主要都市で対面式のワークショップを実施していました。2020年2月、EY ItalyとJAイタリアは、ミラノ、ローマ、ブレシアでFuture Skills Workshopsを開催する予定でした。ミラノでの最初のワークショップは計画通りに実施されましたが、パンデミックのために、残りの2つのワークショップをバーチャル配信に切り替えざるを得なくなりました。
この経験から、EY ItalyとJAイタリアのチームは、失業率が高く、経済的・教育的機会が少ない遠隔地の町や島の学校を含め、多くの地域にプログラムを拡大できることに気づきました。
その後12カ月間にわたり、すべてのFuture Skills Workshopsをバーチャルで実施し、広い範囲から多様な学生が参加しました。今は制限が解除されたため、プログラムは対面(主要都市)とバーチャル(地方)のハイブリッド型に移行し、遠隔地の学生も引き続き参加できるようになっています。
EYのあるボランティアは、次のように述べています。「他組織との協働活動が、教育を変える力があることを実感したことで、その意義を理解することができました。ワークショップには、学生たちを明るい未来に向けて導き、準備する機会を提供する意味で大きな価値があります」
その後、プログラムの実施範囲をさらに拡大するため、EYはSAPと協力してテキストベースの講座を開発・展開し、EY Future Skills Workshopの起業家精神に関するモジュールを小分けにし、毎日テキストメッセージで提供しました。これらのテキストベースの講座は、携帯電話を持っていれば誰でも利用可能で、これまでに8カ国で延べ10,000人が修了しました。
ナイジェリアのある学習者は自身にとっての問題について次のように述べています。「起業家になるための機器を入手することが課題でした。テキストベースに助けられました。習得したスキルと学んだことを日々の行動に応用することができました」
EYのファシリテーターへの依存度を下げるため、2021年、EY Ripplesのチームは、EY Future Skills Workshopsのコンテンツを教師に直接提供する試験的な取り組みを開始しました。
レバノンではEYのボランティアがTeach for Lebanonと協力して82人の教師に研修を実施し、難民など特別な支援が必要な若者を含む学生にFuture Skills Workshopのモジュールを提供しました。Teach for Lebanonの教師は現在、自身の判断でFuture Skillsのコンテンツを学生に配信する権限が与えられており、利用した学生はすでに3,600人を超えています。
同様に、アラブ首長国連邦(UAE)において、政府開発庁長官(Minister of Government Development Office)および首長国学校機関(Emirates School Establishment)との協働を通じて、Future Skills Workshopsは100校以上の学校で40,000人を超える学生を支援してきました。EYのボランティア18人が、16歳から18歳までの学生を対象に、新しいテクノロジー、ブロックチェーン、IoT、人工知能などのテーマに関して5つのバーチャル講座を実施しました。
EYは今後も、行政や政府と協力し、Future Skills Workshopsのコンテンツ活用の取り組みを継続していきます。
ここでは起業家になるために必要な機器の入手が困難です。携帯電話で受講できる、テキストベースの課程に助けられました。習得したスキルと学んだことを日々の行動に応用することができました
第2章
EY Future Skills Workshopsは進化するごとに、対象範囲と影響力を拡大しています。
EYの目標は、世界のあらゆる場所で、学生や教師がコンテンツを直接利用できるようになることです。
EYは、すでにマイクロソフトとの間で行っていた社会的影響に関する協働を足掛かりとして、マイクロソフトのコミュニティトレーニング用プラットフォームを通じて、関心を寄せた非営利団体にコンテンツを公開しています。このモデルでは、EY Future Skills Workshopのコンテンツをマイクロソフトの学習プラットフォームで共有することができます。
一例として、Trust for the Americasとのコラボレーションが挙げられます。この団体は、ラテンアメリカ全域で、十分な支援を受けていない若者のために、経済的機会の提供や社会的包摂の促進に取り組んでいます。このコラボレーションでは、EY Future Skills Workshopsのすべてが、英語、スペイン語、ポルトガル語で実施されます。Trust for the Americasはラテンアメリカ全域にこれらのリソースを展開していきますが、特にメキシコ、コロンビア、ブラジルで重点的に活動する予定です。また、Future Skills Workshopのコンテンツの提供範囲を拡大するという目標の一環として、EYのチームは自主的に学習を進められる、起業家精神に関する非同期式のモジュールを作成しました。これにより、ファシリテーターが不在でもコンテンツに容易にアクセスし、自分で学習を進められるようになりました。
さらに、EYは現在、この非同期式コンテンツを活用したパイロット版の実地導入に向けて戦略を構築しています。このパイロット版から得た教訓を踏まえ、最終的には非同期式のオンデマンド学習モデルをより広範囲で運用し、世界のあらゆる場所で、学生がEY Future Skills Workshopのコンテンツを利用できるようにする計画です。
他団体との協働活動が、教育を変える力があることを実感したことで、その意義を理解することができました。ワークショップには、学生たちを明るい未来に向けて導き、準備する機会を提供する意味で大きな価値があります
※学習教材の直接提供について、日本での展開時期は未定です。
EY Future Skills Workshopsは、若者が将来の職業と人生の双方での成功に必要となる重要なスキルと考え方を学べる教育プログラムです。このプログラムは、EYのあるメンバーファームのローカルなスキル習得プログラムから始まりました。それが、カリキュラムの標準化や、既存のパートナーと連携して戦略策定を行うグローバルな取り組みに発展し、今ではコンテンツを、EYとは直接関わりのない世界中の人々にも届けられるようになりました。EY Future Skills Workshopsの進化の過程において、EYは、若者が将来の仕事で成功するためのスキルを手にし、能力を習得できるよう力を注いできました。
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