EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な流行とその長期化に伴い、世界中の多くの企業や人々の間で価値観の変容や雇用・就業形態の多様化が進んでおり、リモートワークなどの新しい働き方が当たり前になってきています。この新しい働き方を支えているのが、ウェブ会議やバーチャルコミュニケーションツールなどのデジタルツールです。
また企業は、激変する外部環境の中で生き残りをかけビジネスモデルの変革や新たなイノベーションを起こそうとしており、これらの変化・変革の後押ししているものの一つにデジタル・テクノロジーの積極活用が挙げられます。
これらの動きが、最近よく耳にする「デジタルトランスフォメーション(以下、DX)」です。DXは、ウメオ大学(スウェーデン)教授であるエリックストルターマンが2004年に提唱した概念とされており、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義されています。海外人事では、多様化する海外赴任の在り方や、タレントマネジメントの文脈からの海外赴任戦略など、上流の業務にフォーカスすることが急務となっているにもかかわらず、多忙で手が付けられていないことが課題になっています。このDXを人事部門の世界、とりわけ、海外赴任者業務についても推進することで、海外人事の業務負荷を下げ、戦略立案の時間を捻出することが可能となります。
日本企業では、未だに、経費承認は紙出力や判子ありきの非効率な業務オペレーションや、社内独自のシステムをパッチワーク的に改修してきたことにより社内の特定の人しか数字の流れ等を理解できないようなブラックボックス化した給与計算システム、数多くの承認者が介在する承認プロセス、オペレーションを想定していない海外赴任者規程などの課題をよく聞きます。
これらの問題を解決する一つの施策がDXの活用であるのは言うまでもありません。実際に、ここ数年で、海外赴任業務に特化したプラットフォームが多く市場に出回っており、すでに導入されている企業も増えています。ただし、1つ気を付けるべきポイントとしては、簡単に、今までのオペレーションプロセスを、そのままデジタルに置き換えるだけでは、いかに素晴らしい海外赴任業務に特化したプラットフォームなどのデジタルツールを導入したとしても、海外赴任業務自体の標準化や集約化作業、ルール形成ができていない場合、費用対効果を得るのは難しい、ということです。
そのため、まずは、現状の海外赴任業務における課題点を見つける必要があります。例えば、非効率になっている業務を洗い出し、効率化・標準化が可能なのか、そして、それを実行するためには、テクノロジーツールの導入が必要なのか否かなどを検証する必要があります。また、場合によっては、そもそも論として、その作業自体を、社内で行う必要があるのかを検討し、費用対効果が上がるのであれば、外注化することも1つの考え方です。内容によっては、海外赴任業務の担当部門・担当者間だけでは決定できない作業などで、各関係者との事前交渉・合意形成が必要不可欠となり、大変な作業が想定されるものもあります。しかし、サプライチェーンやファイナンス、IT部門に関わる業務プロセスでも、簡単に国単位や子会社単位で分断せずに業務集約化やグローバル標準化を推進することが結果としてDX推進の下支えになっているため、海外赴任業務においても、全社を挙げて対応することが必要になるのではないでしょうか。
海外赴任者業務について、デジタル化に進む前にまずは課題の洗い出しと外注化の可能性、業務効率化について、考えてみませんか。
EY税理士法人
川井 久美子 パートナー
羽山 明子 ディレクター
後藤 大悟 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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