EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
ブラジル連邦上院は、新移転価格税制の法案(ブラジルの移転価格税制の枠組み)を可決しました。具体的には、2023年5月10日に可決された2023年法律第8号案は、2022年12月29日に公表された暫定措置(PM)第1,152号(PM 1,152/22号)に由来しており、新たな移転価格税制の枠組みに対応するものです。この議会承認は、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインに従った移転価格税制を導入する上での最終ステップになります。
新移転価格税制は、ブラジルをグローバルバリューチェーンに統合し、二重課税と二重非課税の両方のリスクを軽減することを目指しています。さらに、この新移転価格税制の導入によって、ブラジルが関与するクロスボーダー取引で支払われる所得税、ならびに源泉徴収される所得税から生じる米国での外国税額控除の認識に関する障害が取り除かれることになります。
暫定措置第1,152/22号(PM1,152/22号)法案は2023年3月30日に連邦議会の下院で審議・可決された後、上院で可決されました。
当該暫定措置の原案に対して下院で加えられた主な修正の内容は次のとおりです。
i. 内部間比較対象取引の使用を許可する。
ii. 独立価格比準法(CUP法)以外の移転価格算定方法の使用を許可する。
iii. 独立価格比準法に比較調整を入れる場合には、慎重を期した上で、別の移転価格算定方法の選択も検討することの重要性が強調されている。
iv. 公的価格(public price)が独立間企業価格を検討する上で優先されるべきであると強調されている。
v. 公的価格の使用により得られる結果が独立企業間原則と矛盾する場合など、特別な状況下では、当該の公的価格の使用は不適切であると判断されるべきであると強調されている。
連邦上院での暫定措置第1,152/22号法案の審議の過程で追加の修正案が提案されましたが、承認されませんでした。当該修正案を以下に要約します。
最終的には、上院で追加修正案はすべて否決され、下院で可決された暫定措置法案が追加修正なしに上院で承認されたような結果になりました。
ブラジルで新移転価格税制を実施する上での最終ステップとして、暫定措置第1,152/22号法案は大統領の最終承認をされることになります。大統領の承認を得た後、当該暫定措置法は連邦官報に掲載されます。
ブラジルの納税者は、今年(2023年)からOECDのガイドラインに沿った新移転価格税制の早期適用を選択することができます。そのためには、納税者は2023年9月1日から9月30日までの間にブラジル連邦歳入庁(RFB)1にその旨を通知しなければなりません。2024年1月1日からは、新移転価格税制の適用がすべての納税者に義務付けられます。
新移転価格税制に係わる暫定措置第1,152/22号法の成立はブラジルにとって画期的であり、同国の国際的立場において新たな章を象徴するものとなります。新移転価格税制の枠組みによって、海外からの新たな直接投資が呼び込まれ、ブラジルがグローバルバリューチェーンに統合されることが期待されます。こうしたことから、多国籍企業は、ブラジル国内外での事業への潜在的な影響(例えば、早期適用、法人所得税や関税評価への影響、米国における外国税額控除など)をマッピングすることを含め、この変化に適切に備えることが不可欠となります。
暫定措置第1,152/22号の主要なポイントの中で、次の点をハイライトしておきます。
巻末
1連邦歳入庁(RFB)が提供するデジタルポータルを通じて通知を行う
Raul Moreno Partner & Desk Leader
Luis Coronado Partner
Hector Rosano Manager
Patricio Velasco Manager
Ernst & Young LLP (United States), Latin American Business Center
Tak Morimoto Senior Manager
APAC Tax Desk Leader-US Tax Desk Leader
Jeremy Litton Partner
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