ベトナム、政令91によるアップデートと2022年の移転価格遵守義務に関する注意喚起

ベトナムJBSタックスアラート2022年11月

本アラートでは、以下のポイントを強調します。

  • 2022年10月30日に政府が発行した政令91/2022/ND-CPに基づく変更点のアップデート
  • ベトナムにおける移転価格の遵守義務と2022年の移転価格プランニング

その他の税金と法律の最新情報はこちら


今回のタックスアラートでは、政令126/2020/ND-CPの一部の条文を修正・補足した政令91/2022/ND-CPのポイントについてご紹介します。

また、政令132/2020/ND-CPに基づく2022年度の移転価格規制遵守義務に関連する注意事項をお届けします。

政令91/2022/ND-CPは政令126/2020/ND-CPの一部の条文を修正・補足しています。

政府はこのほど、租税管理法を精緻化した2020年10月19日付の政令126/2020/ND-CP(政令126)の一部条文を修正・補足する政令91/2022/ND-CP(政令91)を2022年10月30日に公布しました。政令91は署名日である2022年10月30日に発効しました。

以下は、政令91のポイントです。

  • 提出期日:税務申告、納税、税務当局の申請処理期限、執行決定の有効期限などが営業日(平日)以外の日にあたる場合、実際の期日は翌営業日となります。
  • 源泉徴収個人所得税(PIT)申告書の提出:給与支払を行っている団体は、申告対象期間中に源泉徴収義務が発生しなかった場合、個人所得税の申告をする必要はありません。
  • 四半期ごとの法人所得税(CIT)予定納付の決定:納税者は、各四半期の業績に基づいて、四半期ごとに法人税の予定納付をする必要があります。ただし、第4四半期までの法人税予定納付額は、年間法人税額の80%を下回ってはなりません。下回った場合、納税者は、不足税額に対して第4四半期の法人税納付期日から不足税額納付日の前日までの遅延利息が課されます。
    この予定納付は、2021年の課税年度以降に適用されます。特に2021年度については、政令91による法人税の予定納付の適用は、2021年第1四半期から第3四半期までの法人税の予定納付額が、法人税総額の75%未満である納税者のみに適用され、これにより遅延利息が増加することはないとしています。
    税務当局が政令126に従って計算した2021年第3四半期までの法人税の予定納付額に不足があるとして遅延利息を課された場合、税務当局にForm 01/GTCNを提出し、政令91の関連規定を適用することで遅延利息の減額調整を要請できます。また、遅延利息の過払い分の還付を請求することができます。
  • 電子商取引プラットフォーム所有者の情報開示義務:電子商取引プラットフォームの所有者であるベトナム企業は、電子商取引プラットフォーム上で販売活動の全部または一部を行う企業および個人の情報を税務当局に開示する必要があります。この開示には、電子商取引プラットフォームを通じて商品・サービスを販売する事業者および個人の収入に関する情報が含まれ、報告期間の翌月末までに、電子形式で行わなければなりません。
  • 個人に対して支払われる有価証券の配当/プレミアムからの個人所得税の源泉徴収義務:政令91は、2023年1月1日以前に証券口座に記録された有価証券の配当/プレミアムを受け取った個人に代わっての源泉徴収と税務申告について、延期することを認めています。
    有価証券の形で配当/プレミアムを受け取る個人は、管理機関が有価証券で受け取った配当/プレミアムから個人所得税を源泉徴収していない場合、2020年12月5日の政令126の発効日から2022年12月31日までの期間、罰則/遅延利息を課されず直接税務当局に申告・納税する責任を負います。
    2023年1月1日以降、管理機関は、有価証券の形でこの種の所得を受け取る個人のために、配当/ボーナスに対する個人所得税を源泉徴収し、税務申告する義務があります。

2022年ベトナムの移転価格税制に基づく遵守義務

ベトナムの移転価格規制は、2020年12月20日から施行された政令132/2020/ND-CP(政令132)に定められており、2020年以降の法人税申告期間から適用されています。政令132は、関連者間取引を行うベトナムの納税者に対し、以下の情報、文書、データ、記録を含む移転価格文書を整備・提供することを求めています。

  • 政令132添付の付録I、II、IIIに規定されている関連者との関係および関連者間取引に関する情報
    • この政令の対象となる関連者間取引がある納税者は、この政令に添付された付録I、II、IIIに規定された関連者との関係および関連者間取引に関する情報を申告し、毎年の法人税の確定申告と一緒にこれらの付録を提出する義務があります。
  • 関連者間取引、移転価格ポリシー、移転価格算定方法に関する情報からなるローカルファイルは、政令132の付録IIに規定されている内容、情報、文書のリストに従い、納税者において作成、保管されなければなりません。
    • 移転価格文書は、毎年のCIT確定申告の期限までに作成・保管し、税務当局の要求に応じて提出する必要があります。
    • 移転価格文書の提出期限は、税務当局の書面による要請を受けた日から30営業日です。この提出期限は、納税者が正当な理由をもって延長する場合、一度だけ、最初の提出期限から最大15営業日まで延長することができます。
    • 納税者は、管轄当局の要請に応じて、政令132に従って移転価格算定方法の分析、比較、選択を説明する責任を負います。
  • マスターファイルは、政令132の付録IIIに規定されている内容、情報、文書のリストに従って、多国籍にわたるグループの事業活動、移転価格ポリシーとグループに適用される移転価格算定法、グループの所得配分と事業活動配分ポリシー、グループのバリューチェーン全体で実行される機能に関する情報により構成されます。
  • 政令132の第5条、第18条および政令132に添付される付録IVに従い、最終親会社は国別報告書(CbCR)を、最終親会社の会計年度末から12カ月以内に税務当局に提出しなければなりません(注:ベトナム企業が最終親会社にあたる場合のみ必要であり、通常ベトナムの日系企業は準備する必要はありません)。

政令132の遵守違反によるリスク

税務当局は、以下の場合、関連者間取引の申告・決定に関する規定を遵守しない、または関連者間取引の申告・決定に関する十分な情報・データを提供しない納税者に対して、移転価格、利益率、利益配分比率、課税所得または法人所得税を課す権利を有します。

  • 納税者が申告をしない、付録Iの情報が不十分である、あるいは政令132の付録Iを提出しない場合
  • 納税者が、政令132の付録IIおよびIIIに規定された移転価格文書に必要な情報を十分に提供しないか、または、政令132が求める期限内に、移転価格文書、および、移転価格の分析、比較、決定の根拠となったデータ、文書、資料を税務当局の要求に従って提供しない場合。
  • 移転価格文書で申告された情報が、独立した比較対象企業の選択に関する分析結果、移転価格算定方法、または、納税者の移転価格、利益率、利益配分比率の調整結果に影響を与えている場合には、重要なものとして税務当局に考慮されます。
  • 納税者が、関連者間取引の移転価格の分析、申告、決定に際して、独立した比較対象企業に関する不正確または信頼性の低い情報を用いた場合。あるいは、関連者間取引に適用される移転価格、利益率、利益配分比率の決定に際して違法、無効または出所の不明確な資料、データ、文書に依存した場合。
  • 移転価格税制に違反して、納税者が移転価格文書の申告・作成義務を怠った場合。

その他特記すべき点

政令第132第8条第1項bには、次のように記載されています。

"b) 納税者の価格、利益率、利益配分比率が独立企業間比較のレンジに収まらない場合、納税者は、関連者取引がレンジに収まるように、関連者間取引の価格、利益率、利益配分比率の調整を行うことにより、関連者間取引が独立企業間価格に近似するように値を決定しなければならない。ただし、納税者の課税所得と国家予算に対する納税義務を減少させてはならない。"

したがって、納税者は、独立企業間原則を遵守するために、価格設定を下方修正することなく、プロアクティブに管理する必要があります。これにより、政令132第8条第2項cに基づき、独立企業間価格に収まらなかった場合に税務当局によって独立企業間比較レンジの中央値に調整されるリスクも軽減されます。

さらに、納税者は、上記政令91に規定されている、対象年度第4四半期の法人税予定納付が、その年の法人税確定申告書による年間法人税支払額の80%を下回ることができないという条件を考慮した上で、移転価格調整を行う必要があることに留意してください。
 

Contacts

Hanoi Office

Huong Vu | Tax partner
EY Consulting Vietnam Joint Stock Company


Long Ngoc Pham | Partner, Transfer Pricing 
EY Consulting Vietnam Joint Stock Company


Japanese Business Services

Takaaki Nishikawa | Director
Ernst & Young Vietnam Limited


Korean Business Services

Kyung Hoon Han | Director
Ernst & Young Vietnam Limited


Ho Chi Minh City Office

Robert King | Indochina Tax Leader
EY Consulting Vietnam Joint Stock Company


Phat Tan Nguyen | Partner, Transfer Pricing Leader
EY Consulting Vietnam Joint Stock Company


Japanese Business Services

Takahisa Onose | Partner
Ernst & Young Vietnam Limited


Korean Business Services

Phil Choi | Partner
Ernst & Young Vietnam Limited


China Overseas Investment Network

Owen Tsao | Director
Ernst & Young Vietnam Limited 

※所属・役職は記事公開当時のものです

EY  |  Building a better working world

EY exists to build a better working world, helping to create long-term value for clients, people and society and build trust in the capital markets.

Enabled by data and technology, diverse EY teams in over 150 countries provide trust through assurance and help clients grow, transform and operate.

Working across assurance, consulting, law, strategy, tax and transactions, EY teams ask better questions to find new answers for the complex issues facing our world today.

EY refers to the global organization, and may refer to one or more, of the member firms of Ernst & Young Global Limited, each of which is a separate legal entity. Ernst & Young Global Limited, a UK company limited by guarantee, does not provide services to clients. Information about how EY collects and uses personal data and a description of the rights individuals have under data protection legislation are available via ey.com/privacy. EY member firms do not practice law where prohibited by local laws. For more information about our organization, please visit ey.com.

© 2022 EY Consulting Vietnam Joint Stock Company. All Rights Reserved.

00669-226Jpn
ED None

This material has been prepared for general informational purposes only and is not intended to be relied upon as accounting, tax, legal or other professional advice. Please refer to your advisors for specific advice.

ey.com/en_vn