欧州議会、野心的なEU炭素国境調整メカニズムを含む「Fit for 55」気候政策パッケージの5つの要素を承認

エクゼクティブサマリー

2022年5月17日、欧州議会の環境と公衆衛生と食品の安全性に関する欧州議会委員会(以下、「ENVI」)は、投票の上、「Fit for 55」政策パッケージの5つの報告書を採択しました。Fit for 55は、2030年までに温室効果ガス(GHG)の純排出量を1990年比で少なくとも55%削減を達成するという目標と、2050年までに欧州で気候中立を達成するという包括的な目標に合わせ、欧州連合(以下、「EU」)の気候、エネルギー、土地利用、輸送および税制の各政策を調整することを目的としています。

国境炭素調整メカニズム(CBAM)の責任委員会であるENVIは、先の勧告1およびECOFINのCBAMに関する合意2を受けて、CBAMがより野心的な目標を定め、さらに広い範囲をカバーし、また迅速なペースで展開がされるよう投票しました。このほか、EU排出権取引制度(以下、「EU ETS」)の無償割当は当初の予定よりも早く段階的に廃止されることとなり、新しいEU炭素吸収目標はEUの2030年削減目標を57%に引き上げられました。また、EU ETSの対象とならないセクターのGHG排出量を管理する努力分担規則(Effort Sharing Regulation)も強化されることとなります。

対象範囲の拡大やスケジュールの厳格化により、より多くの企業が影響を受けることになることが予測されるため、今後の動向を注視することが重要となります。特にCBAMの立法過程は、2022年6月上旬の投票に続きEU加盟国による交渉が行われることから、展開のペースが速まると考えられるため、特に注意が必要といえます。

巻末注

  1. 2022年3月1日付EY Global Tax Alert「European Parliament provides recommendations on EU Carbon Border Adjustment Mechanism」をご参照ください。
  2. 2022年3月16日付EY Global Tax Alert「EU Finance Ministers reach agreement on EU Carbon Border Adjustment Mechanism」をご参照ください。
     

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岡田 力 パートナー