EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
令和3年12月10日に、令和4年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の国会における改正法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意下さい。
1) 賃上げに係る税制措置の強化
企業の賃上げを促し、多様なステークホルダーへの還元を後押しする措置が強化されます。継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大30%を税額控除する制度が設けられます。税額控除は、当期の法人税額の20%を上限とします。2年間の時限措置です。中小企業については、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与支給額の増加額の最大40%を税額控除する制度が設けられます。大企業については、収益が拡大しているにもかかわらず賃上げも投資も特に消極的な企業について、租税特別措置(研究開発税制など)の適用を停止する措置が強化されます。
2) オープンイノベーション促進税制の延長・拡充
スタートアップ企業への出資額の25%を課税所得から控除するオープンイノベーション促進税制について、設立15年未満(現行:10年未満)の企業の対象への追加、保有見込期間の短縮(5年→3年)などの見直しを行った上で、2年間延長されます。
3) グループ通算制度の見直し
投資簿価修正制度について、通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人が、離脱時の子法人株式の帳簿価額とされる通算子法人の簿価純資産価額に「資産調整勘定等対応金額(非適格合併における資産調整勘定に類似するもの)」を加算することができる措置が講じられます。通算子法人の離脱時にいわゆる「買収プレミアム」が株式譲渡原価に算入できない問題に対処するものです。連結納税制度からグループ通算制度に移行したグループの連結開始・加入子法人についても対象となります。
4) その他
1) 住宅ローン控除の見直し
適用期限が4年間延長されます。控除率が年末ローン残高の0.7%(現行:1%)に縮小されますが、控除期間は13年となります。
2) 固定資産税
土地に係る固定資産税及び都市計画税の負担調整について、激変緩和の観点から、令和4年度に限り、商業地に係る課税標準額の上昇幅を評価額の2.5%(現行:5%)とします。
3) 消費税
令和5年10月に施行される適格請求書等保存方式(インボイス制度)にかかる所要の整備(見直し)がなされます。また、適格請求書発行事業者の登録手続が一部見直されます。
4) その他
1) 子会社株式簿価減額特例(令和2年度改正)の見直し
子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置について見直しが行われます。適用除外要件(特定支配日利益剰余金額要件)の判定に際して、事業年度期首から対象配当を受けるまでの期間(対象期間)に増加した利益剰余金額を直前事業年度末の利益剰余金額に加算することができるようになります。また、適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた本制度の回避を防止するための措置(適用回避防止規定)について、見直しが行われます。これらの改正は、令和2年4月1日以後に開始する事業年度において受ける対象配当等の額について適用されます。
2) 過大支払利子税制の見直し
国内にPE(恒久的施設)を有しない外国法人に係る国内源泉所得について、過大支払利子税制を適用することとします。国内にPEを有する外国法人のPEに帰属しない国内源泉所得についても同様とされます。
1) 電子取引の取引情報に係る電子保存制度への円滑な移行のための宥恕措置
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に行われる電子取引につき、宥恕措置が整備されます。当該電子取引情報を保存要件に従って保存することができなかったことについてやむを得ない事情があると認められ、かつ、当該保存義務者が電磁的記録の出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができるとされる経過措置が講じられます。
2) 記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応
帳簿の不存在・不提示や記帳不備に対し、意図しない記帳誤りや帳簿の作成能力に配慮した上で、その記帳義務の不履行の程度に応じて過少申告加算税等を加重する仕組みが設けられます。また、納税者が事実の仮装・隠蔽がある年分又は無申告の年分において主張する簿外経費の存在が帳簿書類等から明らかでないような場合には、当該簿外経費は必要経費・損金に不算入とする措置が講じられます。