香港、オフショアクレームについて実体要件を導入する見通し

Japan tax alert 2021年10月20日号

背景

欧州連合(EU)はこのほど、香港における国外源泉所得免除(FSIE:Foreign-Source Income Exemption)制度の審査を実施しました。EUはFSIE制度自体は問題ではないことを認めましたが、香港にて実質的経済活動を営んでいない企業が、国外からの受動的所得(利息やロイヤルティなど)について課税を受けておらず1、二重非課税という事態を引き起こしていると懸念しています。

香港は2021年10月5日、税務面で非協力的な国・地域のEUリスト(EU list of non-cooperative jurisdictions for tax purposes)の付属書II(いわゆるグレーリスト)に追加されました2

EUの評価に対する香港の反応

香港税制に関するEUの評価を受けて、香港政府は、受動的所得と能動的所得共に源泉地国課税の原則を維持すると強調しました。

そうしたことから、香港は2022年末までに受動的所得に関するオフショアクレーム3を修正するか、あるいは同クレームについて追加条件を課すことを明言しています。ただし、施行は2023年が予定されています。

香港政府は、同法律改正案は、香港において実質的経済活動を営んでいない企業が受動的所得の稼得を通じて租税を回避する行為を対象とするにとどまることと示唆しています。香港政府はさらに、法改正の具体的内容について利害関係者と協議し、企業によるコンプライアンス上の負担を最小限に抑えるよう努めるとの方針を示しています。

香港政府が、将来的にオフショアクレームについて十分な実体要件を求めることが想定されています。納税者においては、これらの動向を注視し、事業運営や税務方針に対する影響について評価する必要があります。

関連アラート

巻末注

  1. 香港は、2017年OECDモデル租税条約に含まれる恒久的施設の定義を既に採用しているため、(貿易取引やサービスなどの)能動的所得に関する源泉地国課税制度は、EUの審査を通過しています。
  2. 2021年10月6日付 Global Tax Alert「EU Member States adopt revised list of non-cooperative jurisdictions for tax purposes」をご参照ください。
  3. オフショア所得を香港外における源泉所得として、税務局が認定する申請制度

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