EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
内国歳入庁(IRS)は、2020年5月11日に相互協議申出手続き(Rev. Proc. 2015-40, 2015-35 IRB 236)及び事前確認申請手続き(Rev. Proc. 2015-41, 2015-35 IRB 236)に関する暫定修正案を公表しました。暫定ガイダンスによると、相互協議及び事前確認申出手続きにおいてデジタルファイリングやデジタルサインが認められることになり、当面の間、書面での提出の必要がなくなります。
また、本告示で、事前確認・相互協議(APMA)プログラムは、協議中及び締結済みのAPA事案において、昨今の経済低迷時における適用可能な移転価格算定方法や特定の産業における影響などの問題を、納税者及び条約国の権限のある当局と積極的に議論していくと述べています。既に締結済みのAPAで2020年が確認対象期間に含まれている場合、もしくは現在協議中のAPAで2020年が確認対象期間に含まれる事案はAPMAの担当者に相談するよう提言しています。APMA担当者とのミーティングが行われる場合、少なくともミーティングの2週間前までに書面で相談内容の趣旨、財務データ、納税者の要求や提案内容等の提出が求められます。
EYでは専門チームが多くの日系企業にAPA及び相互協議支援サービスを提供しております。世界景気の急激な後退により、従来からの手法では移転価格のサポート困難に直面する納税者が存在し得る点をAPMAプログラムが認知している点は吉報と言える一方、個別事案でAPMAプログラムの理解を得るためには、納税者側によるタイムリーかつプロアクティブな先回りアプローチの必要性が改めて浮き彫りになったと言えます。
特に、昨今の景気後退時における適用可能な移転価格算定方法の問題を提示していることについては、従来の移転価格算定方法であるCPMについては片側検証であることから、インカムクリエーションになる問題が認識されており、APMAが昨年導入したFunctional Cost Diagnostic Modelで採用している残余利益分割法を損失分割に応用することも視野に入っています。
当発表は相互協議およびAPAにかかわるもので、実地調査の現場レベルでは必ずしも同様の理解が得られるとは限らない点も、移転価格リスク管理手法の選択時に重要な検討要因となります。