これだけは知っておきたい!ビジネスプラン入門 第1回 ビジネスプラン作成にあたっての注意点

作成 特定非営利活動法人 日本MITベンチャーフォーラム 本橋 健
協力 新日本有限責任監査法人 WWN 公認会計士 福山伊吹

本コンテンツは2014年11月28日(金)に開催された新日本有限責任監査法人と株式会社日本政策投資銀行との共催セミナー「DBJ-WEC&WWN共催セミナー・女性起業家のためのビジネス実践講座~経営を学ぶシリーズ~ビジネスプラン基礎編-ビジネスプランを学ぼう!」における講演内容を基に編集されました。


Ⅰ. ビジネスプランとは何か

1. ビジネスプランとは

ビジネスプランとは商品やサービスを売り、さまざまな経費をかけながら収益を上げる"事業"として見たときの計画のことです。

ビジネスプランにおける計画とは、商品やサービスを提供し、その対価として売上、そのために必要な経費、およびその経過における資金繰りを説明するものです。そのため、単に「△△という商品を作っています。とても良いですよ。」と商品やサービスの説明をするのではなく、「誰々の○○を解決するための商品を提供して、年商XX億円、利益△△億円を目指します」といった、お金の出入りの視点が重要です。

よく、商品・サービスの紹介をするかたがいますが、それだけでなく、その商品がどうして売れて、どれくらいの収益になるのかを書くのがビジネスプランです。

2. ビジネスプランはどんな時に必要か

ビジネスプランは主に次のような時に必要となります。

  1. 自分自身の考え方を整理するため
    ひとたび起業をし、社長となると、お金を借りる、人を雇う、他社と連携するなど、すべてを決めなければならなくなります。経営上の判断をするうえでの大きなポイントはお金の動きです。お金がなくなってしまうと自分だけでなく社員や関係者に迷惑をかけてしまいます。いつお金がいるかの「資金計画」や、お金の出入りの確認となる「キャッシュ・フロー」で自社が実現できる範囲が見えてくるので、無茶な判断を行わないようになります。
  2. お金を借りたり、投資してもらうため
    銀行から借りる場合、会社のビジネスを理解してもらい計画的に返済できる目途がなければ、融資を受けることは難しいでしょう。また、投資をしてもらう場合に、投資家に出資した金額の何十倍かになって返ってくることを理解してもらうためにビジネスプランが投資家にとって重要な判断材料になります。
  3. 周りの人に協力してもらうため
    ビジネスプランはパートナーとなる例えば原材料、機材の納入者(売り手)や販売代理店、プロモーション(買い手)から協力を得るためにも必要となります。さらに、事業のアドバイスを行うアドバイザーや経営者に向けたアドバイス(メンタリング)を行うメンターからの協力を得たい場合にも用いられます。


Ⅱ. ビジネスプランに求められる要素

ビジネスプランに求められる要素は3つあります。それは、市場性、収益性、実現性です。

1. 市場性

市場性とは、市場規模及び売上獲得シナリオといった、具体的には誰にどんな商品・サービスを提供するのか、この事業がどれくらい大きな事業になりえるのかということです。対象となる市場がどれくらい大きいか、どれくらい地域や全国、海外等で成長が期待できるのか、もし100%の市場占有率であればどれだけの売上となるのかが投資家が見る一つの基準となります。

また、扱う商品・サービスが世の中にどの程度必要とされているかという点も重要です。「誰の」「どのような課題を」解決するものなのか、今までのものとの違いはなにで、それがどうして受け入れられるのか、他社よりうまくできる理由は何か、を示す必要があります。具体的には、新規・独自性、競合優位性などで、他の人と同じものではなく独自に開発した新しい技術やサービスにより新たなニーズや市場を掘り起こせる可能性があるか、または、独創的なサービスや商品によって他との差別化が図られ、競争力を発揮できるかどうかが重要です。

2. 収益性

収益性とは、継続的に事業が可能か、赤字続きでないか、資金が足りるかという点です。具体的には、採算性や収益性、つまり、お金は足りるのか、いつどのくらいお金が必要か、ということです。売上や資金繰りとの関係を見て、この事業の持続・発展性があるのかもポイントになります。

主に、出費に関しては、人件費、材料費から水道光熱費まであり、事業売上計画に合わせて想定しておく必要があります。商品やサービスを必要な数だけ提供できる環境(仕入れや工数など)が用意できるか、また、売上を得るために必要な販売委託先・プロモーションなどの経費も想定しておく必要があります。先端技術の商品であれば、特許費用などの研究開発経費も考慮する必要があります。

3. 実現性

実現性とは、このビジネスプランを実際に実行できるのか、ということです。実現性で重要なのは、経営陣、すなわち経営する主体となる人物、すなわち皆さんのことです。明確なビジョンや情熱とともに、企業経営に関する経験、知識、能力を持ち、組織を率いていくことができる人物かといった経営者としての資質が求められます。

経営陣はこのビジネスプランを実行するに足る経験やスキルがあるか、一人なのか複数なのか、複数の場合はどのような役割・関係かも事業を遂行するための組織の観点で重要です。


Ⅲ. ビジネスプランを書く際に気を付けるべき注意点

ビジネスプランの主な記載事項としては、以下の6つがあげられます。

  • 事業タイトル、提案者氏名・連絡先
  • 事業概要
  • 商品・サービス概要/差別化・競争優位性
  • ビジネスモデル/マーケティング・プロモーション・販売チャネル
  • スケジュール/収支計画
  • 経営陣

ここでは、ビジネスプランを書く際に、起こりがちな注意点の例を挙げていきます。本来書くべき項目・書き方については触れませんので、市販の書籍を参照するか、ウェブで公開されている以下の資料を参照ください。

・書籍:キラキラ女性経営者を目指す!会社経営の教科書 新日本有限責任監査法人 Winning Women Network 著

事業計画作成とベンチャー経営の手引き (総務省ウェブサイトへ)


事業体タイトル、提案者氏名・連絡先

ビジネスプランの表紙には、下記の内容を記載します。

  • 事業内容を表すタイトル/副題
  • フルネーム、社名、役職
  • 電話番号、メールアドレス、住所など

タイトルは重要です。タイトルから事業を相手にイメージができるように、2行ぐらいで、簡潔に、何をやる会社なのか、どういう人たちにアピールするのか(誰の課題を解決するのか)を説明できるとよいでしょう。副題をつけて説明するのも方法です。

また、図1のように、名前や連絡先などを忘れないようにしましょう。メールで送付しても、ファイル単位で管理される場合、メールの情報が保管されません。ビジネスプランにも直接書きましょう。

図1: 最初の表紙。これだけだと誰のなんの事業かがわからない

図1: 最初の表紙。これだけだと誰のなんの事業かがわからない


図1の改善例: 事業内容が判りやすいようなサービス名をつける。副題で補完してもよい。また、代表者名と連絡先もあわせてつけておくと相手が連絡しやすい。

図1の改善例: 事業内容が判りやすいようなサービス名をつける。副題で補完してもよい。
また、代表者名と連絡先もあわせてつけておくと相手が連絡しやすい。


事業概要

事業概要には、次のような点を記載します。

  • 何を提供するのか、誰の何が解決されるのかを分かりやすく
  • 関係者と共有しておきたい事実を中心に書く
  • 自身の思いや背景など事業プランに直接関係ない話は書かない

事業概要は、何をやる会社なのかを端的に説明する部分です。誰の何を解決するのか、どんな商品・サービスなのか、どうやって提供するのかを記載します。

事業概要を記載する場合に、図2のように、自身の家庭環境など、事業と関係ないものを記載する必要はありません。起業は誰もがなにかしらの思いがあって行っていますが、その背景が事業に直接関係ない場合は記載せず、相手から聞かれたタイミングで答えればよいでしょう。

図2: エグゼクティブ・サマリーに個人の背景など記載しているケースがあるが、 事業に関係のある内容を簡潔に記載するのが望ましい

図2: エグゼクティブ・サマリーに個人の背景など記載しているケースがあるが、
事業に関係のある内容を簡潔に記載するのが望ましい


図2の改善例: エグゼクティブ・サマリーには、市場動向・課題、 解決法・自社の強み、経営陣などを記載

図2の改善例: エグゼクティブ・サマリーには、市場動向・課題、
解決法・自社の強み、経営陣などを記載


商品・サービス概要/差別化・競争優位性

(1)提供するサービス及び製品概要
会社が提供する商品・サービス概要は、誰にどのような課題を解決するかを簡潔に判りやすく伝えましょう。キャッチフレーズを考えると良いでしょう。

図3-1のようなあいまいな表現ではなく、このようなニーズを満たす、課題を解決する、このような利点がある、という情報が必要です。また、直接関係のないことは混乱を避けるため書かないようにしましょう。

図3: あいまいな表現での説明ではなく、具体的なニーズ・課題への解決を ベースとした商品・サービス説明が望ましい

図3: あいまいな表現での説明ではなく、具体的なニーズ・課題への解決を
ベースとした商品・サービス説明が望ましい


図3の改善例: キャッチフレーズやサービスの特徴を明確に記載

図3の改善例: キャッチフレーズやサービスの特徴を明確に記載


(2)差別化・競争優位性(保有技術、コアコンピタンス)
良いビジネスには必ずライバル(競合他社)がいます(追いかけてきます)。当社を他の競合他社とは差別化するために、客観的な視点から、比較のポイント・基準を明確にする必要があります(図4)。

「ライバルは?」と聞かれたときに「ライバルはいません」と言うかたがいますが、通常は、調査不足だと見られます。市場のあるビジネスならばたいていはライバルか、代替品を持つ事業者がいるはずで、「ライバルがいない」ということは、市場がないか、過去に誰もうまく出来なかったからと考えられます。よって、本当に競合他社がいない場合、なぜ、過去の人たちが失敗して自分たちはうまくいっているのか説明ができることが必要です。

ソフトスキルによる差別化の場合には、経営陣の実績などが重要になりますので、それをアピールする必要があります。また、それ以外でも可能な限り具体的な根拠を説明する必要があります。人脈の場合は、「どこに何人、どんな人?」というような具体性があれば説得力が増します。

図4: 差別化・競争優位性を具体的に説明する必要がある

図4: 差別化・競争優位性を具体的に説明する必要がある

また、ターゲットとなる顧客、市場ニーズ・規模・成長性を説明することは重要です。大きなビジネスチャンスにつながる社会的変化(制度変更、規制強化、規制緩和)や人々の生活の変化などから、どんな人が一番最初に使うのか、なぜ、買ってくれるのかを説明する必要があります。市場規模や成長性は、行政の資料、新聞、雑誌記事などで説明できます。

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