EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 井澤依子
a. 吸収合併存続会社である子会社の個別財務諸表上の会計処理
ア.吸収合併消滅会社である子会社の合併期日の前日における決算
吸収合併消滅会社である子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産および負債の適正な帳簿価額を算定します(結合分離指針246、企業結合会計基準41 、[設例29-2])
イ.資産・負債の受入の会計処理
吸収合併存続会社が吸収合併消滅会社から受け入れる資産および負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上します(結合分離指針247(1)、企業結合会計基準41)。
ウ.増加資本の会計処理
ⅰ.株主資本項目の取扱い
連結子会社(存続会社)は吸収合併消滅会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本(資本金または資本剰余金)として会計処理します(結合分離指針247(2)、185(1)①準用)。なお、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額がマイナスの場合および後述の抱合せ株式等の会計処理により株主資本の額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理します。
合併の対価が自社の株式のみである場合には、吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金およびその他利益剰余金の内訳科目(ただし、積立目的の趣旨は同じであるが、吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社の間でその名称が形式上異なる場合に行う積立金の名称変更を除く)を、後述の抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことができます(結合分離指針247(2)、185(1)②準用)。当該取扱いは、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額がマイナスとなる場合も同様です。
また、吸収合併の手続とともに、株主資本の計数の変動手続(会社法第447条から第452 条)が行われ、その効力が合併期日に生じる場合には、合併期日において、会社の意思決定機関で定められた結果に従い、株主資本の計数を変動させることができます。
ⅱ.株主資本以外の項目の引継ぎ
吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の評価・換算差額等および新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぎます(結合分離指針247(2)、185(2)準用)。
エ. 抱合せ株式の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社の株式(関連会社株式またはその他有価証券)を保有している場合で、新株を発行したときの吸収合併存続会社の増加すべき株主資本の会計処理は、次のいずれかの方法により処理します(結合分離指針247(3))。
オ.企業結合に要した支出額の会計処理
企業結合に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として処理します(結合分離指針247(4))
b. 結合当事企業の株主(親会社)に係る会計処理
結合当事企業の株主(親会社)においては、交換損益は認識されず、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が受け取った吸収合併存続会社の株式(子会社株式)の取得原価は、引き換えられた吸収合併消滅会社の株式(子会社株式)に係る企業結合日直前の適正な帳簿価額に基づいて計上します(結合分離指針248、[設例29-2])。
c. 連結財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社の株主(親会社)は、連結財務諸表上、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額(吸収合併消滅会社の株主としての持分比率が増加する場合は、吸収合併消滅会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額)と吸収合併消滅会社に係る株主(親会社)の持分の減少額(吸収合併存続会社の株主としての持分比率が減少する場合は、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の減少額)との間に生じる差額を、のれん(または負ののれん)および持分変動差額として取り扱います(結合分離指針249、[設例29-2])。
a. 前提条件
S1社 |
S2社 |
交換比率 |
合併後の |
合併後の |
|
---|---|---|---|---|---|
親会社保有株数 |
600 |
800 |
1.00 |
1,400 |
70.00% |
少数株主の保有株数 |
400 |
200 |
1.00 |
600 |
30.00% |
1,000 |
1,000 |
2,000 |
|||
P社 |
S1社 |
S2社 |
個別合算 |
投資と資本相殺消去
|
連結財務諸表 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
諸資産 |
20,800 |
4,000 |
5,000 |
29,800 |
29,800 |
|||
S1社株式 |
600 |
0 |
0 |
600 |
(600) |
0 |
||
S2社株式 |
1,600 |
0 |
0 |
1,600 |
(1,600) |
0 |
||
23,000 |
4,000 |
5,000 |
32,000 |
|||||
諸負債 |
(14,000) |
(1,500) |
(2,000) |
(17,500) |
(17,500) |
|||
資本金 |
(5,000) |
(1,000) |
(2,000) |
(8,000) |
1,000 2,000 |
(5,000) |
||
利益剰余金 |
(4,000) |
(1,500) |
(1,000) |
(6,500) |
600 200 |
(5,700) |
||
少数株主持分 |
(1,000) (600) |
(1,600) |
||||||
(23,000) |
(4,000) |
(5,000) |
(32,000) |
0 0 |
(29,800) |
|||
b. ×1年4月1日における合併仕訳
受け入れる資産・負債は、S2社において合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上します
c. ×1年4月1日におけるP社の個別財務諸表上の処理
交換損益を認識せず、S2社株式の帳簿価額をS1社株式に振り替えます。
d.×1年4月1日における連結財務諸表上の処理
S1社、S2社の開始仕訳およびS2社消滅に伴う開始仕訳の振戻処理については、省略します。
ア. S1社株式追加取得に係る連結仕訳
合併の前後で、S1社の持分比率が60%から70%に増加しているので、10%増加部分につき追加取得の会計処理を行います。
※1:S1社株式の取得原価は、S1社の時価評価額(5,000)に持分比率の増加分(10%)を乗じて計算します。 5,000×10%=500
※2:適正な帳簿価額に基づく純資産は、2,500(=1,000+1,500)であることから、減少する少数株主持分は、10%を乗じて計算します。 2,500×10%=250
※3:S1社株式の取得原価(500)と減少する少数株主持分(250)との差額(250)は、のれんとして計上します。
以上を図で示すと図表10のようになります。
【図表10】
イ. S2社の親会社持分減少に係る連結仕訳
ⅰ.投資と資本の消去および払込資本の振替
S1社の受け入れた旧S2社部分につき、投資と資本の相殺消去と、その他資本剰余金から取得後増加剰余金をその他利益剰余金に振り替える仕訳は以下です。
※1:S2社の純資産3,000×20%=600
※2:S2社取得後増加剰余金1,000×80%=800
少数株主持分は、合併により持分に変動がおきる以前の比率で計上します。取得後増加剰余金は、少数株主持分が存在するため、親会社持分に帰属する部分のみ計上します。
ⅱ.持分変動差額の計上
※1:S2社持分の減少額は、S2社の資産・負債の適正な帳簿価額に基づく純資産(3,000)に減少する持分比率を乗じて計算します。 3,000×10%=300
※2:減少するS2社持分に係る価値は、S2社の時価(5,000)に減少する持分比率(10%)を乗じた500となります。また、取得するS1社株式の時価も同じく500ですが、これはS1社持分の減少とS2社持分の増加とが、理論的には等価交換であることによります。
※3:※1と※2の差額が持分変動差額となります。持分変動差額は、減少したS2社持分に対する移転損益と考えられます。
以上を図で示すと図表11のようになります。
【図表11】
また、S1社およびS2社の図表を連結したのが以下の図表12です。連結精算表と合わせてみますと、S1社およびS2社の持分比率の移動に係る部分の企業価値は同じ額(500)であることが分かります。
【図表12】
連結精算表は以下のとおりです。
企業結合(平成15年会計基準)