わかりやすい解説シリーズ「キャッシュ・フロー計算書」 第2回:企業活動とキャッシュ・フロー計算書
1. 企業活動とキャッシュ・フロー計算書
【ポイント】
企業の活動は営業活動、投資活動、財務活動という大きく三つの区分に分けることができます。キャッシュ・フロー計算書には、企業のキャッシュ・フローを当該3区分に分けて記載することになります。
企業の活動は営業活動、投資活動、財務活動という三つの区分に分けることができます。キャッシュ・フロー計算書では、それぞれの活動によるキャッシュ・フローを表示し、期首のキャッシュ残高に当該区分別のキャッシュの増減合計を加減算して、期末のキャッシュ残高を表示する形式をとります。
図2-1
企業活動のイメージ(製造業の場合)
企業活動の中心は営業活動ですが、それぞれの活動は密接に関係しています。
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例えば、企業が投資活動として製造設備等の固定資産を購入する場合、財務活動として、設備投資資金を新規の借り入れを行って調達することがあります。また、投資活動として設備投資を行った結果、生産力が増強され、売上や利益の増大など営業活動に影響を与えることになります。さらに、営業活動によって獲得された余剰キャッシュ・フローは、借入金の返済等の財務活動や新規投資等の原資となるなどの関係があります。
2. 営業活動によるキャッシュ・フロー
【ポイント】
キャッシュ・フロー計算書において、最も重要なキャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローです。営業活動によるキャッシュ・フローには、営業損益計算の対象となる取引及び投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローの情報が記載されます。
営業活動によるキャッシュ・フローには、基本的に営業損益計算の対象となる取引に係るキャッシュ・フローの情報が記載されます。
図2-2
営業活動によるキャッシュ・フローの主な内容は、営業損益計算の対象となる取引から生じたキャッシュ・フローになります。損益計算書に計上された収益及び費用に伴うキャッシュ・フローの他、営業損益計算の対象となった取引によって生じた売掛金や受取手形などの営業債権の回収による入金や、買掛金などの営業債務の支払いによる支出も含まれます。また、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローについても、キャッシュ・フロー計算書の会計基準上、営業活動によるキャッシュ・フローに含まれることになります。
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営業損益計算の対象となる取引とは、製品・商品の販売やサービスの提供、商品や原材料の仕入れ、従業員への給料や経費の支払いなどの取引で、損益計算書において、基本的に売上高や売上原価、販売費及び一般管理費に計上される取引のことです。
製造業であれば、原材料を仕入れ、従業員を雇用し、梱包(こんぽう)費用や配送費用等を支払い、製品を製造し、製品を顧客に販売する一連の活動に係る取引になります。小売業や卸売業であれば、商品を仕入れ、営業担当者を雇用し、消費者や得意先に商品を販売する一連の活動に係る取引です。サービス業であれば、サービス提供する人員を雇用し、交通費等の費用を負担して顧客にサービスを提供し、対価を受領する一連の活動に係る取引になります。
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投資活動や財務活動以外の取引とは、例えば法人税等の支払いや、災害に伴う保険金の授受、損害賠償金の支払いなどのことです。当該取引に係るキャッシュ・フローは、通常の営業キャッシュ・フローと区別して、小計欄の下部に記載されることになります。
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企業の営業活動は主に貸借対照表の流動資産・流動負債と関係があります。製品の販売や原材料の購入・仕入代金の支払い、人件費・経費等の支払いなどの営業活動は、流動資産の売掛金・受取手形等の営業債権や原材料・仕掛品・製品等の棚卸資産、流動負債の買掛金・支払手形等の営業債務や未払費用、未払人件費などと関係があります。これらの債権債務の回収及び支払いについても営業活動によるキャッシュ・フローに記載されることになります。
3. 投資活動によるキャッシュ・フロー
【ポイント】
投資活動によるキャッシュ・フローには、有形無形固定資産の取得及び売却、有価証券の取得及び売却、貸し付けの実行・回収などの投資活動に関係するキャッシュ・フローの情報が記載されます。
設例2-1
投資活動によるキャッシュ・フローには、固定資産の取得及び売却、有価証券の取得及び売却、貸し付けの実行・回収などの投資活動に関係するキャッシュ・フローの情報が記載されます。固定資産には土地や建物、機械装置、備品などの有形固定資産やソフトウエアなどの無形固定資産が含まれ、有価証券には、株式や社債などが含まれます。
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投資活動によるキャッシュ・フローは、企業が将来の利益獲得のためにどれほど製造設備や他企業に対する投資を行ったか、固定資産や有価証券の売却等によってどれほどキャッシュを回収したかを記載しています。経常的に設備(更新)投資を行っている場合、投資活動による正味のキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向にあります。
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企業の投資活動は主に貸借対照表の固定資産と関係があります。例えば、工場の新規設立や余剰資金の運用としての有価証券売買等の投資活動は、貸借対照表の固定資産に計上されている土地や建物、機械装置等や有価証券等と関係があります。
設例2-1では、貸借対照表上、固定資産の取得による増加9,000と減価償却による減少2,000によって、固定資産が7,000増加しています。また、有価証券の取得7,000と売却3,000によって、有価証券が4,000増加しています。これらの投資活動によって固定資産の取得による支出9,000、有価証券の取得による支出7,000、有価証券の売却による収入4,500(売却価額=売却有価証券の簿価3,000+売却益1,500)というキャッシュ・フローが生じることになります。
4. 財務活動によるキャッシュ・フロー
【ポイント】
財務活動によるキャッシュ・フローには、資金の調達及び返済などの財務活動に関係するキャッシュ・フローの情報が記載されます。
財務活動によるキャッシュ・フローには、資金の調達及び返済によるキャッシュ・フローが記載されます。資金の調達には新規の借り入れや借り換え、社債の発行、新株の発行などが含まれ、資金の返済には借り入れの返済や社債の償還、株主への配当金の支払いなどが含まれます。
設例2-2
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企業の財務活動は主に貸借対照表の負債及び純資産と関係があります。例えば、借り入れや社債による資金調達等の財務活動は、貸借対照表の負債に計上されている借入金や社債などと関係があり、増資や配当金の支払い等の財務活動は、貸借対照表の純資産の資本金(資本剰余金)や利益剰余金と関係があります。
設例2-2では、貸借対照表上、新規の借り入れ5,000と借り入れの返済3,000によって、借入金が2,000増加しています。また、当期純利益の計上7,000と配当金の支払い2,700によって、利益剰余金が4,300増加しています。新規借り入れや借り入れの返済、配当金の支払い等の財務活動によって、借り入れによる収入5,000、借り入れの返済による支出3,000、配当金の支払いによる支出2,700というキャッシュ・フローが生じることになります。
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