「リースに関する会計基準」等のポイント

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 
宮﨑 徹、加藤 圭介、平川 浩光、中根 將夫、前田 和哉、大竹 勇輝、石川 仁、森 さやか、浦田 千賀子、小倉 幹生、松川 由紀子

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)及び日本公認会計士協会(以下「JICPA」という。)から2024年9月13日に以下の会計基準等が公表されました。

(ASBJ会計基準等(新設・改正))

企業会計基準第34号

「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)

企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。また、以下、リース会計基準及びリース適用指針を合わせて「リース会計基準等」という。)
企業会計基準第35号「『固定資産の減損に係る会計基準』の一部改正」
企業会計基準第36号「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(その2)」
改正企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」
改正企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(以下「改正賃貸等不動産時価開示会計基準」という。)
改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
改正企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」
改正企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下「改正結合分離適用指針」という。)
改正企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」
改正企業会計基準適用指針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」
改正企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」
改正企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」(以下「改正賃貸等不動産時価開示適用指針」という。また、以下、改正賃貸等不動産時価開示会計基準及び改正賃貸等不動産時価開示適用指針を合わせて「改正賃貸等不動産時価開示会計基準等」という。)
改正企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」
改正実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」
改正移管指針「移管指針の適用」
改正移管指針第6号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」
改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」
改正移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」
改正移管指針第13号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」

(JICPA実務指針等(改正))

監査・保証実務委員会実務指針第90号

「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」

業種別委員会実務指針第19号「リース業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」
業種別委員会実務指針第53号「年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針」
業種別委員会実務指針第65号「投資法人における監査上の取扱い」
会計制度委員会研究報告第12号「臨時計算書類の作成基準について」

(ASBJ会計基準等(廃止))

企業会計基準第13号

「リース取引に関する会計基準」(以下「企業会計基準第13号」という。)

企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下「企業会計基準適用指針第16号」という。また、以下、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号を合わせて「企業会計基準第13号等」という。)
実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」
移管指針第3号「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理に関する実務指針」

リース会計基準等のポイントは以下のとおりです。なお、以下の各項目ではそれぞれ表の右側に記載した内容をまとめています。

Ⅰ. リース会計基準等の概要

リース会計基準等の概要をまとめています

Ⅱ. ASBJのその他の会計基準等の改正、廃止の概要リース会計基準等の適用により影響する企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針の改正(計18件)及び廃止(4件)の概要をまとめています
Ⅲ. JICPAの実務指針等の改正の概要リース会計基準等の適用により影響するJICPAの実務指針等の改正(5件)の概要をまとめています
Ⅳ. 公開草案からの変更点公開草案からの変更点を一覧表にまとめています。

目次

Ⅰ. リース会計基準等の概要

  1. 経緯

  2. 開発の基本的な方針(リース会計基準BC13項、BC39項、BC53項、リース適用指針BC4項、BC5項、BC35項、BC98項)

  3. 範囲(個別財務諸表への適用含む。)

  4. リースの定義(リース会計基準第6項、BC25項)

  5. リースの識別(リース会計基準第25項から第30項、BC30項からBC33項、リース適用指針第5項から第16項、BC9項からBC27項)

  6. リース期間

  7. 借手のリースの会計処理

  8. 貸手のリースの会計処理

  9. サブリース取引(リース適用指針第89項から第93項、BC123項からBC136項)

  10. 借地権(リース適用指針第4項(3)から(9)、第27項、127項、BC7項、BC50項からBC57項、BC168項からBC169項)

  11. 建設協力金等の預託保証金

  12. 開示

  13. 適用時期(リース会計基準第58項、BC69項、リース適用指針第112項)

  14. 経過措置(リース適用指針第113項から第137項、BC163項からBC172項)
     


Ⅱ. ASBJのその他の会計基準等の改正、廃止の概要

  1. 改正賃貸等不動産時価開示会計基準等

  2. 改正結合分離適用指針(改正結合分離適用指針第61-2項から第61-3項、第371-2項から第371-5項)

  3. その他の会計基準等の改正

  4. 会計基準等の廃止
     


Ⅲ. JICPAの実務指針等の改正の概要

  1. ASBJからの改正依頼による主な改正

  2. ASBJからの改正依頼によらないJICPA独自の主な改正
     

Ⅳ. 公開草案からの変更点




Ⅰ. リース会計基準等の概要

1. 経緯

2007年3月にASBJより、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号が公表され、リースに関する我が国の会計基準は当時の国際的な会計基準と整合的なものとなりました。

その後、2016年1月に国際会計基準審議会(IASB)より国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(以下「IFRS第16号」という。)が公表され、同年2月に米国財務会計基準審議会(FASB)よりFASB Accounting Standards CodificationのTopic 842「リース」(以下「Topic 842」という。)が公表されました。IFRS第16号及びTopic 842では、借手の会計処理に関して、主に費用配分の方法が異なるものの、原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルにより、オペレーティング・リースも含むすべてのリースについて資産及び負債を計上することとされています。IFRS第16号及びTopic 842の公表により、我が国の会計基準とは、特に負債の認識において違いが生じることとなり、国際的な比較において議論となる可能性がありました。

これらの状況を踏まえ、ASBJでは2019年3月より、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上する会計基準の開発に着手し、2023年5月に公開草案を公表し、広くコメント募集を行った後、寄せられた意見等について検討が重ねられていました。今般、ASBJにおいて公表が承認され、2024年9月13日にリース会計基準等が公表されました。

2. 開発の基本的な方針(リース会計基準BC13項、BC39項、BC53項、リース適用指針BC4項、BC5項、BC35項、BC98項)

(1) 借手の費用配分の方法

IFRS第16号と同様に、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを使用権の取得と捉えて使用権資産を貸借対照表に計上するとともに、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する「単一の会計処理モデル」(※)によることとされています((図表1)参照)。なお、借手のオペレーティング・リースに係る影響のイメージは(図表2)のとおりです。

(図表1) 借手における会計処理のイメージ

     企業会計基準第13号等の会計処理リース会計基準等の会計処理
    ファイナンス・リースオンバランス
    (リース資産、リース債務)
    オンバランス
    (使用権資産、リース負債)

     
    オペレーティング・リースオフバランス
    (通常の賃貸借処理)

    (図表2) 借手のオペレーティング・リースに係る影響のイメージ

    (図表2) 借手のオペレーティング・リースに係る影響のイメージ
    出所:リース会計基準等を基にEY作成

    (※)IFRS第16号の「単一の会計処理モデル」に対して、Topic842では、使用権モデルによりオペレーティング・リースも含むすべてのリースについて資産及び負債を計上するという点は相違ないものの、オペレーティング・リースの借手が取得する権利及び義務は、残存する資産に対する権利及びエクスポージャーを有さず、オペレーティング・リースを均等なリース料と引換えにリース期間にわたって原資産に毎期均等にアクセスする経済的便益を享受するものと捉えて、従前と同様にファイナンス・リース(減価償却費と金利費用を別個に認識する。)とオペレーティング・リース(通常、均等な単一のリース費用を認識する。)に区分する「2区分の会計処理モデル」が採用されています。

    (2) IFRS第16号と整合性を図る程度

    以下の方針とされています。


    • IFRS第16号のすべての定めを取り入れるのではなく、主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が高いこと

    • IFRSを任意適用して連結財務諸表を作成している企業が、リース会計基準等を個別財務諸表に適用した場合に、IFRSでの連結財務諸表作成にあたって当該個別財務諸表を用いても、基本的に修正が不要となる会計基準とすること

    • その上で、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定める、又は経過的な措置を定めるなど、実務に配慮した方策を検討すること
       

    (3) 貸手の会計処理

    貸手の会計処理については、IFRS第16号及びTopic 842ともに抜本的な改正が行われていないため、次の点を除き、基本的に、企業会計基準第13号の定めを踏襲することとされています。


    • 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)との整合性を図る点(リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(いわゆる第2法)が廃止される点)

    • リースの定義及びリースの識別

    3. 範囲(個別財務諸表への適用含む。)

    (1) 他の会計基準等との関係(リース会計基準第3項、第4項、BC14項からBC19項)

    リース会計基準等は、契約の名称などにかかわらず、(図表3)の①から④に該当する場合を除き、リースに関する会計処理及び開示に適用するとされています。

    (図表3) 範囲外とされた項目

     項目範囲外とする理由
    実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第35号」という。)の範囲に含まれる運営権者による公共施設等運営権の取得実務対応報告第35号において、当該運営権を分割せずに一括して会計処理を行うこととしており(実務対応報告第35号第29項)、当該運営権の構成要素についてリースに該当するかどうかの検討を行わないこととするため
    収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与。ただし、製造又は販売以外を事業とする貸手は、当該貸手による知的財産のライセンスの供与についてリース会計基準を適用することができる
    • 収益認識会計基準を適用することとするため
    • ただし、リースを主たる事業としている企業のように製造又は販売以外を事業とする貸手においては、専ら金融取引として利息相当額を稼得するために利用されていると考えられるため 、リース会計基準を適用することを認める
    鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生型資源を探査する又は使用する権利の取得国際的な会計基準との整合性を図るため
    ①から③にかかわらず、無形固定資産のリースについて、リース会計基準を適用しないこととした場合
    • 貸手によるその他の無形固定資産のリースについて、IFRS第16号ではその適用を任意とする定めはないものの、その他の無形固定資産のリースが広範に行われているようには見受けられなかったため。また、企業会計基準第13号における会計処理を変更する必要がないようにするため
    • 借手によるリースのうち、無形固定資産のリースについては、借手によるソフトウェアのリースが企業会計基準第13号に基づいて会計処理されている実務を変更する必要がないようにするとともに、無形資産のリースに適用することを要求していないIFRS第16号との整合性を図るため

    (2) 個別財務諸表への適用(リース会計基準BC20項、BC21項)

    リース会計基準等を連結財務諸表のみに適用すべきか、連結財務諸表と個別財務諸表の双方に適用すべきかについて検討した結果、リース会計基準等の適用に関する懸念の多くは個別財務諸表固有の論点ではないと考えられ、リース会計基準等では、連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理は同一であるべきとする基本的な考え方及び方針を覆すに値する事情は存在しないと判断し、連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理を同一とするとされています。

    (3) 公開草案からの変更点(リース会計基準第3項)

    公開草案で一律に適用除外とされていた「収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与」について、製造又は販売以外を事業とする貸手は、当該貸手による知的財産のライセンスの供与についてリース会計基準を適用することができるとされました。

    また、国際的な会計基準との整合性を図るため、「鉱物、石油、天然ガス等を探査する又は使用する権利の取得」について、リース会計基準の適用範囲から除外することとされました。

    4. リースの定義(リース会計基準第6項、BC25項)

    リースの定義に関する定めは借手が貸借対照表に計上する資産及び負債の範囲を決定するものであることから、国際的な会計基準との整合性を確保するためには、リースの定義に関する定めについて、IFRS第16号との整合性を確保する必要があると考えられます。

    このため、リース会計基準等では、リースの定義に関する定めについて、IFRS第16号の定めと整合させて、借手と貸手の両方に適用することとされています。具体的には、「リース」について、「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分」と定義されています。

    5. リースの識別(リース会計基準第25項から第30項、BC30項からBC33項、リース適用指針第5項から第16項、BC9項からBC27項)

    リース会計基準等では、リースの識別に関する定めについて、基本的にIFRS第16号の定めと整合させて、借手と貸手の両方に適用するとされています。具体的には、主に次の定めが置かれています。なお、これらの定めをフローチャートで表現すると(図表4)のとおりです。


    (1) 契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む。

    (2) 特定された資産の使用期間全体を通じて、次の①及び②のいずれも満たす場合、当該契約の一方の当事者(サプライヤー)から当該契約の他方の当事者(顧客)に、当該資産の使用を支配する権利が移転している。

    ① 顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。
    ② 顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。

    (3) 借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行う。


    ただし、リースの識別に関する細則的なガイダンスについては、国際的な比較可能性が大きく損なわれるか否かを主要な判断基準として、取捨選択して取り入れることとされています。リース会計基準等に取り入れていないものとして、例えば、次のものがあるとされています。


    • 資産が契約に明記されない場合でも黙示的に定められることによって特定され得るとの定め

    • 使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定の例示

    リースの識別に関する定めは企業会計基準第13号では置かれていなかった定めであり、リース会計基準等の適用によって、これまで企業会計基準第13号により会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると考えられます。

    (図表4) リースの識別に関するフローチャート

    (図表4) リースの識別に関するフローチャート
    * 各権利や契約内容の判断を行う際は、すべて「使用期間全体を通じて」該当するか否かを判断する必要があります。

    (※)当該判断においては、以下も考慮する

     ・サプライヤーが資産を代替する実質上の能力を有するか
     ・顧客が使用することができる資産が物理的に別個であるか

    出所:リース適用指針の設例Ⅰ.リースの識別[設例1]を基にEY作成

    6. リース期間

    (1) 借手(リース会計基準第15項、第31項、BC34項からBC37項、リース適用指針第17項、BC28項からBC34項)

    借手のリース期間の決定は、借手が貸借対照表に計上する資産及び負債の金額に直接的に影響を与えるものであり、IFRS第16号における定めと整合的に、次の定めを置くこととされています(リース会計基準第15項、第31項)。


    • 借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の①及び②の両方の期間を加えて決定する
      ① 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
      ② 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間

    • 借手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該権利は借手が利用可能なオプションとして、借手は借手のリース期間を決定するにあたってこれを考慮する。貸手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該期間は、借手の解約不能期間に含まれる

    ここで、「合理的に確実」の判断にばらつきが生じる懸念及び過去実績に偏る懸念に対応し、借手が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかを判定するにあたって、例えば、次の経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮することとされています(リース適用指針第17項)。なお、ここでいう「合理的に確実」は、リース適用指針BC29項において、蓋然性が相当程度高いことを示しているとされています。


    ① 延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
    ② 大幅な賃借設備の改良の有無
    ③ リースの解約に関連して生じるコスト
    ④ 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
    ⑤ 延長オプション又は解約オプションの行使条件


    (2) 貸手(リース会計基準第16項、第32項、BC38項)

    審議の過程では、貸手のリース期間について借手のリース期間と同様にすることが検討されましたが、(図表5)に記載の理由から、貸手のリース期間の決定については、継続して適用することを条件として、次のいずれかの方法を選択することとされています(リース会計基準第32項)。なお、下記①の方法はIFRS第16号と整合的な方法であり、下記②の方法は企業会計基準第13号のリース期間の定めを踏襲した方法です。

    (図表5) 貸手のリース期間の決定方法

    方法理由
    ① 借手のリース期間と同様に決定する方法借手による延長オプション又は解約オプションの行使可能性が合理的に確実か否かを評価することができる場合に借手のリース期間と同様に決定することを妨げる特段の理由がなく、また、借手のリース期間と同様に決定する方法を認めることにより、国際的な会計基準との整合性が図られると考えられること
    ② 借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間(事実上解約不能と認められる期間を含む。)にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法リース会計基準は、主として借手の会計処理について改正を行うものであり、貸手は、借手による延長オプション又は解約オプションの行使可能性が合理的に確実か否かを評価することが困難であると考えられること

    (3) 公開草案からの変更点

    ① 借手のリース期間

    借手のリース期間の決定に際して、延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが「合理的に確実」かどうかを判断することが求められていますが、公開草案では、「合理的に確実」の閾値について、米国会計基準の考え方が結論の背景に参考として記載されていました。この点、公開草案に寄せられたコメントに対応して、「合理的に確実」は、蓋然性が相当程度高いことを示していることが追加されています。

    ② 貸手のリース期間

    公開草案では、企業会計基準第13号の定めを踏襲した方法(上記(2)の②の方法)が提案されていましたが、借手のリース期間と同様に決定する方法(上記(2)の①の方法)も認めることとされました。

    7. 借手のリースの会計処理

    (1)使用権資産及びリース負債の計上(リース会計基準第33項から第35項、BC40項からBC46項、リース適用指針第18項から第19項、第24項から第26項、第28項から第37項、BC36項、BC46項からBC49項、BC58項からBC66項)

    企業会計基準第13号では、リース資産及びリース債務の計上額を算定するにあたっては、原則として、リース契約締結時に合意されたリース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によるとされていました。

    リース会計基準等では、(図表6)のとおり、IFRS第16号の定めと同様に、借手は、使用権資産について、リース開始日に算定されたリース負債の計上額に、リース開始日までに支払った借手のリース料(以下「前払リース料」という。)、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブ(借手に対する現金の前払い、移転費用などの借手に発生する費用の補填、又は借手が第三者と締結している既存のリースの貸手による引受けなどが考えられる。)を控除した額により算定することとされています(リース会計基準第33項)(※1)。また、リース負債の計上額を算定するにあたっては、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定することとされています(リース会計基準第34項)。

    ここで、借手のリース料は、IFRS第16号の定めと同様に、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払であり、次の①から⑤のもので構成されるとされています(リース会計基準第35項)。


    ① 借手の固定リース料
    ② 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料
    ③ 残価保証に係る借手による支払見込額(※2)
    ④ 借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額
    ⑤ リースの解約に対する違約金の借手による支払額(借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合)


    (図表6) 使用権資産及びリース負債の構成要素

    (図表6) 使用権資産及びリース負債の構成要素
    出所:リース会計基準等を基にEY作成

    (※1)使用権資産の計上額については、企業会計基準適用指針第16号における貸手の購入価額又は見積現金購入価額と比較を行う方法を踏襲せず、IFRS第16号と整合的に、借手のリース料の現在価値を基礎として算定することとされています(リース適用指針BC36項)。

    (※2)「③残価保証に係る借手による支払見込額」については、見積りが困難である場合に残価保証額を用いることができるとする簡便的な取扱いを設けることが検討されたものの、審議の結果、簡便的な取扱いを設けないこととされています(リース会計基準BC44項)。

    (2) 利息相当額の各期への配分(リース会計基準第36項、リース適用指針第38項から第42項、BC67項からBC70項)

    リース会計基準等では、(図表7)のとおり、原則的な取扱い及び簡便的な取扱いのいずれも現行と同様の取扱いとすることとされています(リース会計基準第36項、リース適用指針第39項、第40項)。

    (図表7) 利息相当額の配分方法

    原則的な取扱い

    利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に利息法により配分する方法(※1)

    簡便的な取扱い

    使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合(※2)は、次のいずれかの方法を適用することが可能(※3)

    ① 借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法。この場合、使用権資産及びリース負債は、借手のリース料をもって計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみ計上する
     

    ② 利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法

    (※1)企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号におけるファイナンス・リース取引に関する定め並びにIFRS 第16号の定めと同様となっています。

    (※2)使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高の、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合(*)が10パーセント未満である場合をいうとされています(リース適用指針第41項)。また、連結財務諸表においては、当該判定を連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができるとされています(リース適用指針第42項)。
    (*)使用権資産総額に重要性が乏しいかどうかを判断する割合については、次のことを考慮し算定することが考えられるとされています(リース適用指針BC68項)。

    • 短期リース(下記(4)参照)及び少額リース(下記(5)参照)を適用しているもの、並びに原則的な取扱い(利息法)により配分している使用権資産を除く

    • 有形固定資産及び無形固定資産の期末残高について未経過の借手のリース料の期末残高と二重になる場合、未経過の借手のリース料、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額の算定上、二重にならないように調整を行う
       

    (※3)これらはIFRS第16号では設けられていない取扱いですが、実務の追加的な負担を軽減することを目的として企業会計基準適用指針第16号に定められたものであり、実務において浸透していることから、リース会計基準等においても、これらの簡便的な取扱いを踏襲することとされています(リース適用指針BC69項)。

    (3) 使用権資産の償却(リース会計基準第37項から第38項、BC47項からBC48項、リース適用指針第43項、BC71項)

    リース会計基準等では、(図表8)のとおり、使用権資産の償却について、基本的に現行のリース資産の償却と同様の会計処理を行うこととされています(リース会計基準第37項、第38項)。

    (図表8) リースの種類別の償却方法

    契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース

    使用権資産の減価償却費は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定し、この場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間とし、残存価額は合理的な見積額とする

    上記以外のリース使用権資産の減価償却費は、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、この場合、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする

    また、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに該当するか否かの定めについては、一部を除き基本的に企業会計基準適用指針第16号における所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するか否かの定めを踏襲し、次の場合をいうとされています(リース適用指針第43項)。


    ① 契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース
    ② 契約期間終了後又は契約期間の中途で、借手による購入オプションの行使が合理的に確実であるリース
    ③ 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース


    (4) 短期リースに関する簡便的な取扱い(リース適用指針第4項(2)、第20項から第21項、第50項、BC37項からBC38項、BC80項)

    リース会計基準等では、現行の定め及びIFRS第16号の定めと同様に、借手は、短期リース(リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいう。)について、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができるとされています(リース適用指針第20項)。

    (5) 少額リースに関する簡便的な取扱い(リース適用指針第22項から第23項、BC39項からBC45項)

    リース会計基準等では、次の①と②のいずれかを満たす場合について、借手は、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することを認めるとされています(リース適用指針第22項)。


    ① 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース

    ② 次のいずれかを満たすリース(※1)

    • 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しい(借手のリース料が300万円以下)リース(※2)

    • 新品時の原資産の価値が少額である(新品時に5千米ドル以下程度)リース(※3)

    (※1)会計方針の選択としていずれかを選択でき、選択した方法を首尾一貫して適用するとされています(リース適用指針第22項)。

    (※2)当該方法は、企業会計基準適用指針第16号において定められていたリース契約1件当たりの借手のリース料が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れたものとされています(リース適用指針BC43項)。ここで、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として、借手のリース期間とするとされています。ただし、当該借手のリース期間に代えて、契約上、契約に定められた期間とすることができるとされています。また、リース契約1件当たりの金額の算定にあたり維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができるとされています(リース適用指針第23項)。

    (※3)当該方法は、IFRS第16号と同様の方法を認めることを目的として取り入れたものであるとされており、IFRS第16号の結論の根拠で示されている新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産のリースを念頭に置いているとされています(リース適用指針BC45項)。

    (6) 契約条件の変更

    ① リースの契約条件の変更(リース会計基準第24項、第39項、BC49項、リース適用指針第44項から第45項、BC72項からBC76項)

    リース会計基準等では、「リースの契約条件の変更」について、リースの当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲又はリースの対価の変更(例えば、1つ以上の原資産を追加若しくは解約することによる原資産を使用する権利の追加若しくは解約、又は契約期間の延長若しくは短縮)と定義されています(リース会計基準第24項)。

    また、借手は、IFRS第16号の定めと同様に、リースの契約条件の変更が生じた場合、変更前のリースとは独立したリースとして会計処理を行うか又はリース負債の計上額の見直しを行うこととされています(リース会計基準第39項)。なお、リースの契約条件の変更に複数の要素がある場合、これらの両方を行うことがあるとされています(リース会計基準第39項ただし書き)。具体的には、(図表9)のとおりです(リース適用指針第44項から第46項)。

    (図表9) リースの契約条件の変更時の取扱い

    要件

    (ⅰ)1つ以上の原資産を追加することにより、原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大されること
    (ⅱ)借手のリース料が、範囲が拡大した部分に対する独立価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること

    上記2つの要件をいずれも満たす
    ||
    独立したリースとして会計処理を行う
    リースの契約条件の変更
    上記2つの要件のいずれか又はいずれも満たさない
    ||
    独立したリースとして会計処理を行わない
    リースの契約条件の変更
    独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権資産を計上する

    リースの契約条件の変更の発効日に、次の会計処理を行う

    (a)リース負債について、変更後の条件を反映した借手のリース期間を決定し、変更後の条件を反映した借手のリース料の現在価値まで修正する


    (b)使用権資産について、次のことを行うことによって、(a)のリース負債の見直しに対応する会計処理を行う

    • リースの契約条件の変更のうちリースの範囲が縮小されるもの(※1)については、リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額する。このとき、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合は、当該差額を損益に計上する
    • 他のすべてのリースの契約条件の変更(※2)については、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する

    (※1)このようなリースの契約条件の変更には、例えば、不動産の賃貸借契約においてリースの対象となる面積が縮小される場合や契約期間が短縮される場合等が含まれる(リース適用指針BC74項)。

    (※2)このようなリースの契約条件の変更には、例えば、リース料の単価のみが変更される場合や契約期間が延長される場合等が含まれる(リース適用指針BC75項)。

    ② リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し(リース会計基準第40項から第42項、BC50項からBC52項、リース適用指針第46項から第49項、BC77項からBC79項)

    リース会計基準等では、借手は、IFRS第16号の定めと同様に、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、次のいずれかに該当するときには、該当する事象が生じた日にリース負債について当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減することとされています(リース会計基準第40項、リース適用指針第46項)。


    (ⅰ)借手のリース期間に変更がある場合
    (ⅱ)借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合


    ただし、使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなお、リース負債の測定の減額がある場合には、残額を損益に計上することとされています(リース適用指針第46項ただし書き)。

    (7) 借手のリース期間に含まれない再リース(リース会計基準第17項、BC27項、リース適用指針第52項、BC81項)

    企業会計基準適用指針第16号では、再リース期間をリース資産の耐用年数に含めない場合の再リース料は、原則として、発生時の費用として処理する取扱いを定めていました。当該取扱いは、IFRS第16号では設けられていない取扱いとなっていますが、再リースは我が国固有の商慣習(※)であり、当該取扱いを引き続き設けることにより、国際的な比較可能性を大きく損なわせずに、財務諸表作成者の追加的な負担を減らすことができると考えられることから、当該取扱いを踏襲した取扱いを認めることとされています。

    具体的には、借手は、借手のリース期間の決定に関する定め(6.(1)参照)に基づきリース開始日に再リース期間(再リースに関する取決めにおける再リースに係るリース期間をいう。)を借手のリース期間に含めていない場合又はリースの契約条項の変更の定めの適用((6)①参照)において借手のリース期間の決定に関する定めに基づき直近のリースの契約条件の変更の発効日において再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができることとされています(リース適用指針第52項)。

    なお、この取扱いを採用しない場合、借手においては、再リース期間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられる旨が示されています(リース適用指針BC81項)。

    (※)我が国の再リースの一般的な特徴としては、再リースに関する条項が当初の契約において明示されており、経済的耐用年数を考慮した解約不能期間経過後において、当初の月額リース料程度の年間リース料により行われる1年間のリースが挙げられます。
     

    (8) セール・アンド・リースバック取引(リース適用指針第4項(11)、第53項から第58項、BC82項からBC97項)

    セール・アンド・リースバック取引の会計処理については、Topic842を参考に会計基準が定められました。なお、審議の結果、IFRS任意適用企業の個別財務諸表においてIFRS第16号と同様の会計処理を認める代替的な取扱いは定められないことになりました。

    ① セール・アンド・リースバック取引の対象(リース適用指針第4項(11)、第53項、第54項)

    「セール・アンド・リースバック取引」について、「売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリース(以下「リースバック」という。)する取引」と定義されています。ただし、リースバックが行われる場合であっても、売手である借手による資産の譲渡が次のいずれかであるときはセール・アンド・リースバック取引に該当しません。


    • 収益認識会計基準に従い、一定の期間にわたり充足される履行義務(収益認識会計基準第36項)の充足によって行われるとき

    • 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」第95項を適用し、工事契約における収益を完全に履行義務を充足した時点で認識することを選択するとき

    また、売手である借手が原資産を移転する前に原資産に対する支配を獲得しない場合、当該資産の移転と関連するリースバックについては、セール・アンド・リースバック取引に該当せず、リースとして会計処理を行うことになります。

    ② 基本となる会計処理(リース適用指針第55項、第56項、BC93項、BC95項)

    セール・アンド・リースバック取引における資産の譲渡が売却に該当するか否かで、(図表10)のとおり異なる会計処理となります。

    (図表10) セール・アンド・リースバック取引の会計処理

    資産の譲渡が売却に該当する場合

    売手である借手は、当該資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等に従い当該損益を認識し、リースバックについてリース会計基準等に従い借手の会計処理を行う

    資産の譲渡が売却に該当しない場合売手である借手は当該資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて、金融取引として会計処理を行う
    ③ 資産の譲渡が売却に該当するかの判断(リース適用指針第55項)

    以下の要件のうちいずれかを満たす場合には、資産の譲渡が売却に該当しないことになります。


    • 収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと、売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売却に該当しない場合

    • 収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと、売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売却に該当するが、リースバックにより、売手である借手が、資産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受することができ、かつ、資産の使用に伴って生じるコストのほとんどすべてを負担することとなる場合

    ④資産の譲渡が売却に該当するが、資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではない場合の取扱い(※)(リース適用指針第57項、第58項)

    売手である借手は、当該資産の譲渡対価と借手のリース料について(図表11)のとおり取り扱うこととされています。なお、この取扱いはセール・アンド・リースバック取引に該当しない場合(上記①参照)にも適用されます。

    (図表11) 資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではない場合の取扱い

    会計処理

    譲渡対価を増額する場合

    (ⅰ)資産の譲渡対価が明らかに時価を下回る場合、時価を用いて譲渡について損益を認識し、譲渡対価と時価との差額について使用権資産の取得価額に含める
    (ⅱ)借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を下回る場合、借手のリース料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を増額した上で譲渡について損益を認識し、当該差額について使用権資産の取得価額に含める


     

    譲渡対価を減額する場合

    (ⅰ)資産の譲渡対価が明らかに時価を上回る場合、時価を用いて譲渡について損益を認識し、譲渡対価と時価との差額について金融取引として会計処理を行う
    (ⅱ)借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を上回る場合、借手のリース料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を減額した上で譲渡について損益を認識し、当該差額について金融取引として会計処理を行う

    (※)資産の譲渡対価が明らかに時価ではないかどうか又は借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではないかどうかは、資産の時価と市場のレートでのリース料のいずれか容易に算定できる方を基礎として判定する。

    (9) 公開草案からの変更点

    借手のリースの会計処理に関する公開草案からの主な変更点は次のとおりです。

    ① 使用権資産及びリース負債の計上

    使用権資産の取得原価の範囲について、公開草案においては、借手は、リース開始日に算定されたリース負債の計上額に、前払リース料及び付随費用を加算した額により算定することを提案していましたが、これらに加えて資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除することが明確にされています。

    ② 短期リースに関する簡便的な取扱い

    短期リースの定義について、公開草案では短期リースに購入オプションを含むか否かが明示されていませんでしたが、短期リースの取扱いがIFRS第16号と同様の取扱いとなるように、短期リースとは、リース開始日において、購入オプションを含まないリースであることが明確にされています。

    ③ 少額リースに関する簡便的な取扱い

    少額リースに関する簡便的な取扱いの適用単位及び判定について、公開草案では、借手のリース料、すなわち借手のリース期間において貸手に支払うリース料に基づいて判定することとされていました。この点、公開草案に寄せられた、適用にあたり延長オプション及び解約オプションの行使可能性を判断することの実務上の負担が大きいとの意見を踏まえ、契約期間において貸手に支払うリース料によることができるとされました。また、当該借手のリース料から維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができるとされました。

    ④ 借手のリース期間に含まれない再リース

    借手のリース期間に含まれない再リースの取扱いについて、公開草案では、リース開始日及び直近のリースの契約条件の変更の発効日において再リース期間を借手のリース期間に含めないことを決定した場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができるとされていました。この点、公開草案に寄せられたコメントに対応し、再リースについても、借手のリース期間の決定に関する定め(6.(1)参照)に基づき決定することが明確にされています。

    8. 貸手のリースの会計処理

    (1) ファイナンス・リース(リース会計基準第45項から第47項、BC56項からBC57項、リース適用指針第71項から第81項、BC111項からBC119項)

    ① 基本となる会計処理

    リース会計基準等では、ファイナンス・リースの会計処理について、収益認識会計基準において対価の受取時にその受取額で収益を計上することが認められなくなったことを契機としてリースに関する収益の計上方法を見直した結果、企業会計基準適用指針第16号で定められていた3つの方法のうち、「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」を廃止することとされました。

    リース適用指針では、貸手の基本となる会計処理について、(図表12)のとおり定めています(リース適用指針第71項、第72項、第78項)。

    (図表12) 貸手の基本となる会計処理

     

    事業の一環で行うリース

    事業の一環以外で行うリース


     
     

    製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース

    製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース

    所有権移転外ファイナンス・リース① リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上する。また、原資産の帳簿価額により売上原価を計上する。原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を売上原価に含める(※1)

    ② 各期に受け取る貸手のリース料(以下「受取リース料」という。)を利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、後者をリース投資資産の元本回収額として会計処理を行う
    ① リース開始日に、原資産の現金購入価額(原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を計上する

    ② 受取リース料の会計処理は、左記②と同様とする
    ① リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額と原資産の帳簿価額との差額を売却損益として計上し、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額でリース投資資産を計上する。原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を含めて売却損益に計上する(※2)

    ② 受取リース料の会計処理は、左記②と同様とする
    所有権移転ファイナンス・リース所有権移転外ファイナンス・リースの場合と同様(とする(この場合、「リース投資資産」を「リース債権」と読み替える。)。また、割安購入選択権がある場合、当該割安購入選択権の行使価額を貸手のリース料及び受取リース料に含める

    (※1)ただし、売上高と売上原価の差額(以下「販売益相当額」という。)が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、原資産の帳簿価額(付随費用がある場合はこれを含める。)をもって売上高及び売上原価とし、販売益相当額を利息相当額に含めて処理することができる。

    (※2)ただし、当該売却損益が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、当該売却損益を利息相当額に含めて処理することができる。

    ② 利息相当額の各期への配分

    リース会計基準等では、(図表13)のとおり、原則的な取扱い及び簡便的な取扱いのいずれも現行と同様の取扱いとすることとされています(リース適用指針第73項から第75項、第79項)。

    (図表13) 貸手の利息相当額の配分方法

    原則的な取扱い

    利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に利息法により配分する

    簡便的な取扱いリースを主たる事業としていない企業による所有権移転外ファイナンス・リースに重要性が乏しいと認められる場合、利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができる
    上記の「貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合」とは、未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が、当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいう

    (2) オペレーティング・リース(リース会計基準第48項、リース適用指針第82項、BC120項からBC121項)

    企業会計基準第13号では、オペレーティング・リース取引は、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことのみを定めていました。

    リース会計基準等では、フリーレント(契約開始当初数か月間賃料が無償となる契約条項)やレントホリデー(例えば、数年間賃貸借契約を継続する場合に一定期間賃料が無償となる契約条項)に関する会計処理を明確にして収益認識会計基準との整合性を図るため、貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上することとされました(リース適用指針第82項本文)。

    また、貸手が貸手のリース期間について、「借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法」を適用して決定する場合、当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額(ただし、将来の業績等により変動する使用料を除く。)について契約期間にわたり計上することとされました(リース適用指針第82項ただし書き)。

    (3) 公開草案からの変更点

    ① 貸手のファイナンス・リースについての基本となる会計処理及び貸手が事業の一環以外で行うリースの会計処理の明確化(リース適用指針第71項、第72項)

    貸手の基本となる会計処理についての適用区分が企業会計基準適用指針第16号の取扱いと必ずしも整合的ではないとの意見に対応して、企業会計基準適用指針第16号と整合的になるように修文されました。

    また、貸手が事業の一環以外で行う限定的な領域の会計処理の明確化が行われました。

    ② 貸手のオペレーティング・リースについて貸手のリース期間に無償賃貸期間がある場合の定めの明確化(リース適用指針第82項)

    上記(2)のとおり、貸手のオペレーティング・リースについて貸手のリース期間に無償賃貸期間がある場合の取扱いが明確化されました。

    9. サブリース取引(リース適用指針第89項から第93項、BC123項からBC136項)

    (1) 基本となる会計処理

    リース会計基準等では、「サブリース取引」について、原資産が借手から第三者にさらにリース(以下「サブリース」という。)され、当初の貸手と借手の間のリースが依然として有効である取引と定義し、当初の貸手と借手の間のリースを「ヘッドリース」、ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」と定義した上で、サブリース取引について、IFRS第16号と同様にヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うこととされています((図表14)参照)。

    (図表14) サブリース取引の基本的な会計処理

    (図表14) サブリース取引の基本的な会計処理
    出所:リース適用指針を基にEY作成

    IFRS第16号においては、本会計処理に対する例外は設けられていませんが、リース会計基準等では、サブリース取引の例外的な定めとして、「中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合」の取扱いと「転リース取引」の取扱いを定めています。

    (2) 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合

    我が国の不動産取引において、法的にヘッドリースとサブリースがそれぞれ存在する場合であっても、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行い、貸借対照表において資産及び負債を計上することが取引の実態を反映しない場合があるとの意見が聞かれました。

    これを受けたASBJでの審議の結果、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で、(図表15)のとおり、我が国における例外的な取扱いを定めることとされています。

    (図表15) 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の要件及び会計処理

    要件

    中間的な貸手において、次の要件をいずれも満たす取引
     

    (1) 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない
     

    (2) 中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である
     

    (3) 中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない
     

    ① サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む。)
    ② サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法

    会計処理ヘッドリースにおける使用権資産及びリース負債を貸借対照表に計上せず、サブリースにおいて受け取るリース料の発生時又は当該リース料の受領時のいずれか遅い時点で、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上することができる

    (3) 転リース取引

    転リース取引とは、サブリース取引のうち、ヘッドリースの原資産の所有者から当該原資産のリースを受け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引とされています。企業会計基準適用指針第16号における転リース取引の取扱いについては、主に機器等のリースについて仲介の役割を果たす中間的な貸手の会計処理として実務に浸透しているため、(図表16)のとおり、リース会計基準等では、当該取扱いをサブリース取引の例外的な取扱いとして、企業会計基準適用指針第16号の定めを変更せずに認めることとされています。

    (図表16) 転リースの要件及び会計処理

    要件

    中間的な貸手において、転リース取引のうち、貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当するとき

    会計処理(1) 貸借対照表上、リース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上する(※)
    (2) 損益計算書上、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で計上する
    (※)リース債権又はリース投資資産とリース負債は利息相当額控除後の金額で計上することを原則としつつ、利息相当額控除前の金額で計上することもできるとされています。

    10.  借地権(リース適用指針第4項(3)から(9)、第27項、127項、BC7項、BC50項からBC57項、BC168項からBC169項)

    リース会計基準等では、借地権の設定に係る権利金等に係る会計処理は(図表17)のとおりとされています。

    (図表17) 借地権に係る会計処理

    原則

    使用権資産の取得価額に含め、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行う

    容認
    (対象は旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等)

    (リース会計基準等の適用前に償却していなかった場合)

    次の双方又は①のみについて減価償却を行わないものとして取り扱うことができる


    ➀ リース会計基準等の適用初年度の期首に計上されている当該権利金等
    ② リース会計基準等の適用後に新たに計上される権利金等


     

    (リース会計基準等の適用前に計上していなかった場合)
     

    リース会計基準等の適用後に新たに計上される権利金等について減価償却を行わないものとして取り扱うことができる

    11. 建設協力金等の預託保証金

    リース会計基準等では、建設協力金等及び敷金については、これらの項目が、主にリースの締結により生じる項目であるため、これらの具体的な会計処理の定めについては、移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)から削除し、リース適用指針に定めることとされています。

    (1) 建設協力金等の差入預託保証金(借手)

    ① 建設協力金等(リース適用指針第29項から第32項、BC59項からBC63項)

    預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値であるとされています。当該差入預託保証金の支払額と当該時価との差額を使用権資産の取得価額に含め、当初時価と返済額との差額は、弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で受取利息として計上するとされています。

    また、預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額について、使用権資産の取得価額に含めるとされています。

    なお、返済期日までの期間が短いもの等、その影響額に重要性がない将来返還される差入預託保証金(敷金を除く。)について、当初認識時の時価を返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値とする会計処理を行わないことができ、この場合の差入預託保証金は、債権に準じて会計処理を行うとされています。

    ② 敷金(リース適用指針第33項から第35項、BC64項からBC65項)

    差入企業である借手は、差入敷金のうち、差入敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還される差入敷金について、取得原価で計上するとされています。ただし、上記①建設協力金等に準じて会計処理を行うことができます。

    また、差入敷金のうち、差入敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に返還されないことが契約上定められている金額を使用権資産の取得価額に含めるとされています。さらに、建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合(企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項)の定めに従って、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法を選択する場合、同項に従って差入敷金の会計処理を行うとされています。

    ③ 貸倒引当金(リース適用指針第36項)

    差入預託保証金の預り企業である貸手の支払能力から回収不能と見込まれる金額がある場合、金融商品会計基準に従って貸倒引当金を設定するとされています。

    (2) 建設協力金等の預り預託保証金(貸手)

    リース会計基準等では、貸手の会計処理については、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲することとしたことから、預り預託保証金に関する貸手の会計処理は、金融商品実務指針の定めを踏襲することとされています。

    ① 建設協力金等(リース適用指針第83項から第85項、BC122項)

    預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建設協力金等の預り預託保証金(敷金を除く。)に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値であるとされています。当該預り預託保証金の受取額と当該時価との差額を長期前受家賃として計上し、契約期間にわたって各期の損益に合理的に配分するとされており、当初時価と返済額との差額を契約期間にわたって配分し支払利息として計上するとされています。

    また、預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額については、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上するとされています。

    なお、返済期日までの期間が短いもの等、その影響額に重要性がない預り預託保証金(敷金を除く。)について、当初認識時の時価を返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値とする会計処理を行わないことができ、この場合の預り預託保証金は、債務に準じて会計処理を行うとされています。

    ② 敷金(リース適用指針第86項、BC122項)

    預り企業である貸手は、将来返還する預り敷金について、債務額をもって貸借対照表価額とされています。
    また、預り敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に返還されないことが契約上定められている金額について、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上するとされています。

    12. 開示

    (1) 表示(リース会計基準第49項から第53項、BC58項からBC64項)

    ① 借手

    借手の会計処理をIFRS第16号と整合的なものとする中で、借手の表示についても、(図表18)のとおり、IFRS第16号と整合的なものとしています。

    (図表18) 借手の表示

    使用権資産

    次のいずれかの方法により貸借対照表に表示する
     

    ① 対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法
    ② 対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産又は投資その他の資産等)において使用権資産として区分する方法

    リース負債
    • 貸借対照表において区分して表示する又はリース負債が含まれる科目及び金額を注記する
    • 貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債に属するものとし、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するリース負債は固定負債に属するものとする
    リース負債に係る利息費用損益計算書において区分して営業外費用に表示する又はリース負債に係る利息費用が含まれる科目及び金額を注記する
    ② 貸手

    貸手の会計処理について、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲しており、貸手の表示についても、(図表19)のとおり、企業会計基準第13号を踏襲しています。

    (図表19) 貸手の表示

    貸借対照表

    表示区分

    当該企業の主目的たる営業取引により発生したものである場合

    リース債権及びリース投資資産について、流動資産に表示する


     

    当該企業の主目的たる営業取引以外の取引により発生したものである場合

    貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に入金の期限が到来するものは流動資産に表示し、入金の期限が1年を超えて到来するものは固定資産に表示する


     

    表示方法

    原則

    リース債権及びリース投資資産のそれぞれについて、貸借対照表において区分して表示する又はそれぞれが含まれる科目及び金額を注記する


     

    容認

    リース債権の期末残高が、当該期末残高及びリース投資資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合、リース債権及びリース投資資産を合算して表示又は注記することができる

    損益計算書表示方法

    次の事項について、損益計算書において区分して表示する又はそれぞれが含まれる科目及び金額を注記する
     

    (ⅰ)ファイナンス・リースに係る販売損益(売上高から売上原価を控除した純額)
    (ⅱ)ファイナンス・リースに係るリース債権及びリース投資資産に対する受取利息相当額
    (ⅲ)オペレーティング・リースに係る収益(貸手のリース料に含まれるもののみを含める。)

    (2) 注記(リース会計基準第54項から第57項、BC65項からBC68項、リース適用指針第94項から第109項、BC137項からBC159項)

    ① 開示目的

    開示目的を定めることで、リースの開示の全体的な質と情報価値が開示目的を満たすのに充分であるかどうかを評価することを企業に要求することになり、より有用な情報が財務諸表利用者にもたらされると考えられるため、リースに関する情報を注記するにあたっての開示目的(借手又は貸手が注記において、財務諸表本表で提供される情報と併せて、リースが借手又は貸手の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示すること)を定めています。

    ② 借手及び貸手の具体的な注記事項

    開示目的を達成するため、リースに関する注記として、(図表20)の事項を注記します。
     

    (図表20) 借手及び貸手の注記事項

     注記事項具体的な記載内容
    借手の注記事項会計方針に関する情報

    リースに関して企業が行った会計処理について理解することができるよう、次の会計処理を選択した場合、その旨及びその内容を注記する
     

    (ⅰ)リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う選択
    (ⅱ)指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの選択
    (ⅲ)借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択


     
    リース特有の取引に関する情報

    リースが企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、主に次の事項を注記する
     

    (ⅰ)貸借対照表において、使用権資産の帳簿価額について対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの金額等を区分して表示していない場合の注記
    (ⅱ)損益計算書において、短期リースに関する簡便的な取扱いを適用し会計処理を行った場合における短期リースに係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額等を区分して表示していない場合の注記
    (ⅲ)セール・アンド・リースバック取引及びサブリース取引に関する注記


     
    当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

    当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する
     

    (ⅰ)リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額
    (ⅱ)使用権資産の増加額
    (ⅲ)対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額

    貸手の注記事項ファイナンス・リースの貸手の注記リース特有の取引に関する情報

    リースが企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、次の事項を注記する
     

    (ⅰ)貸借対照表において、リース料債権部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額等を区分して表示していない場合の注記
    (ⅱ)損益計算書において、リース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を区分して表示していない場合の注記

     

     
    当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

    当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する
     

    (ⅰ)リース債権の残高に重要な変動がある場合のその内容
    (ⅱ)リース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容
    (ⅲ)リース債権に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額
    (ⅳ)リース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

     

     
    オペレーティング・リースの貸手の注記リース特有の取引に関する情報

    リースが企業の経営成績に与える影響を理解できるよう、次の事項を注記する
     

    (ⅰ)損益計算書において区分して表示していない場合の注記

     

     
    当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

    当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する
     

    (ⅰ)オペレーティング・リースに係る貸手のリース料について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

     
    全般事項
    • 開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができる
    • 注記を記載するにあたり、上記の注記事項の区分に従って注記事項を記載する必要はない
    • リースに関する注記を独立の注記項目とする。ただし、他の注記事項に既に記載している情報については、繰り返す必要はなく、当該他の注記事項を参照することができる
    • 上記に掲げる注記事項以外であっても、開示目的を達成するために必要な情報は、リース特有の取引に関する情報として注記する
    ③ 借手の注記事項に関する方針

    借手の会計処理をIFRS第16号と整合的なものとする中で、借手の注記事項についても、IFRS第16号と整合的なものとしています。

    ただし、簡素で利便性が高いものを目指していることから、取り入れなくとも国際的な比較可能性を大きく損なわせない内容については、必ずしもIFRS第16号に合わせる必要はないと考えられるため、取り入れないこととしています。具体的には、使用権資産が投資不動産の定義を満たしている場合におけるIAS第40号「投資不動産」の開示要求事項等の我が国の会計基準に関連のない注記、少額リースの費用に関する注記及び短期リースのポートフォリオに関する注記について、取り入れないとしています。

    ④ 貸手の注記事項に関する方針

    貸手の会計処理について、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲することとしたため、貸手の注記事項についても、企業会計基準第13号の定めを踏襲することが考えられました。しかし、貸手の会計処理を基本的に変更しないとしても、国際的に貸手の注記事項が拡充する中で貸手の注記事項を拡充すべきであるとする財務諸表利用者を中心とした意見があったこと、リースの収益に関連する注記事項は、リースを本業とする企業などのリースが財務諸表に重要な影響を与える企業において重要な情報とあると考えられ、リースを適用対象外としている収益認識会計基準では、重要性のある収益に関する情報を注記することを企業に求めており、リースに関する収益が収益の一形態であることを考慮すれば、収益認識会計基準と同様の注記を求めることが有用と考えられること、収益認識会計基準と同様の内容ではないもののIFRS第16号で求められている注記事項についても、企業会計基準第13号に同様の定めがあり、リース料の支払いが通常分割して行われることを考慮した際に将来のリースのキャッシュ・フローの予測と流動性の見積りをより正確に行うことを可能とする観点で有用な情報を適用すると考えられることから、貸手の注記事項について、IFRS第16号と整合的なものとしています。

    (3) 連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項(リース適用指針第110項から第111項、BC160項からBC162項)

    連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、借手及び貸手の注記のうちの「リース特有の取引に関する情報」及び「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」について注記しないことが認められています。また、個別財務諸表においては、借手の注記のうちの「会計方針に関する情報」を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照することも認められます。

    開示に関して、リース会計基準等に基づく連結財務諸表における開示の定めと個別財務諸表及び中間財務諸表との関係は、(図表21)のとおりとなります。


    (図表21) 連結財務諸表における開示の定めと個別財務諸表及び中間財務諸表との関係

    項目リース会計基準等の定め個別財務諸表中間財務諸表
    表示
    区分表示が求められているものに関する注記(借手)リース会計基準第49項から第51項
    (貸手)リース会計基準第52項、第53項
    注記する注記不要(※1)
    注記事項
    会計方針に関する情報
    (リース会計基準第55項(1)①)
    (借手)リース適用指針第97項連結財務諸表
    参照可
    (※2)
    注記不要(※3)
    リース特有の取引に関する情報
    (リース会計基準第55項(1)②及び(2)①)
    (借手)リース適用指針第94項から第95項、第98項から第101項
    (貸手)リース適用指針第94項、第96項、第103項から第105項、第108項
    省略可(※4)
    注記不要(※5)
    当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
    (リース会計基準第55項(1)③及び(2)②)
    (借手)リース適用指針第102項
    (貸手)リース適用指針第106項から第107項、第109項
    省略可(※4)注記不要(※5)

    (※1)中間財務諸表において表示又は注記が求められる科目は、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(以下「中間会計基準」という。)の定めに基づいて判断されます。
     

    (※2)連結財務諸表における記載を参照することができます(リース適用指針第111項)。
     

    (※3)リースに関する会計方針が重要な会計方針に該当する場合の当該会計方針の変更は、中間会計基準において注記の対象となります。また、重要な会計方針に該当しない場合の当該会計方針の変更が企業(集団)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要な事項となる場合には、中間会計基準においてその他の事項として注記が求められます。
     

    (※4)連結財務諸表を作成している場合、注記しないことができます(リース適用指針第110項)。
     

    (※5)企業(集団)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要な事項となる場合には、中間会計基準においてその他の事項として注記が求められます。

    (4) 公開草案からの変更点

    中間的な貸手のサブリースがファインナンス・リースに該当する場合の収益の計上について、総額での計上も認められることが明確化されました(リース適用指針第89項、BC127項)。また、短期リースかつ少額リースに該当する場合には、短期リースの注記に含めることを要しないことが明確化されました(リース適用指針第100項)。そして、本適用指針55項を適用して、会計処理を行った資産について、同項を適用して会計処理を行った資産がある旨並びに当該資産の科目及び金額の注記をリースに関する注記の中で記載することを明確化しました(リース適用指針第101項(1)②)。

    13. 適用時期(リース会計基準第58項、BC69項、リース適用指針第112項)

    リース会計基準等では、適用時期について(図表22)のように定められています。

    (図表22) 適用時期

    原則適用

    2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用

    早期適用2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる

    適用時期の検討にあたっては、次の点を踏まえ、会計基準の公表から原則的な適用時期までの期間を2年半程度とし、早期適用を認めることとされています。


    ① これまでにASBJが公表してきた会計基準については、会計基準の公表から原則的な適用時期までが1年程度のものが多い
    ② IFRS第16号の原則的な適用時期が2019年1月であり、また、Topic 842における公開企業の原則的な適用時期もほぼ同時期であったため、会計基準の公表から原則的な適用時期までの期間を長く設ける場合、我が国における実務が国際的な実務と整合的なものとなるまでの期間が長くなる
    ③ リースの識別を始め、これまでとは異なる実務を求めることとなるため、会計基準の公表から原則的な適用時期までの期間は1年程度では短い可能性がある
    ④ 一方、リース会計基準等の適用開始に係る実務上の負担への対応として、我が国の会計基準を基礎とした場合に関連すると考えられるIFRS第16号の経過措置を取り入れていることに加えて我が国特有の経過措置を設けている


    14. 経過措置(リース適用指針第113項から第137項、BC163項からBC172項)

    (1) 基本方針及び項目別経過措置

    リース会計基準等では、会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間すべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとの経過措置が定められています。

    この経過措置を適用する場合、借手は適用初年度においては、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないこととされています。また、借手及び貸手は、適用初年度においては、リース会計基準第55項の借手及び貸手の注記は比較情報に記載せず、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に定める事項を記載することとなります。

    そして、(図表23)のとおり、具体的な経過措置の方法が定められています。

    (図表23) 主な経過措置

    ① リースの識別に関する経過措置

    ・適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用しているリース取引に、契約にリースが含まれているか否かを判断することを行わずに会計基準を適用することができる
    ・適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第13号を適用していない契約について、当該時点で存在する事実及び状況に基づいて、契約にリースが含まれているかどうかを判断することができる

    ② 借手に関する主な経過措置(一部)

    (ⅰ)ファイナンス・リース取引に分類していたリース
    適用初年度の前期末日におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額のそれぞれを、適用初年度の期首における帳簿価額とすることができる
     

    (ⅱ)オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
    次のとおり会計処理することができる。なお、その適用にあたっては簡便的な方法の適用が認められている(リース適用指針第124項参照)
    (a)リース負債について初度適用日における残存リース料と追加借入利子率を使用して割引計算した現在価値で計上できる
    (b)会計基準がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額又は①で算定されたリース負債と同額のいずれで算定するかを選択して使用権資産を計上する。なお、上記は特性が類似する複数のリースに単一の割引率を使用するなどの方法によることができる
    (c)初度適用日の使用権資産に固定資産の減損基準を適用する
     

    (ⅲ)セール・アンド・リースバック取引
    (a)売手による譲渡が、収益認識基準などに基づき売却に該当するかの従前の判断を見直さない
    (b)リースバックを初度適用日に他のリースと同様に会計処理を行う
    (c)旧基準の定めにより、売却損益を長期前受収益等として繰延処理し、リース資産の減価償却費に加減して損益計上している場合、新基準適用後も当該取扱いを継続する
     

    (ⅳ)借地権の設定に係る権利金等
    (a)従前から償却していた権利金等については、従前簿価を初度適用日に使用し、初度適用日からリース終了までの期間で償却できるリース期間に事後的判断を使用できる
    (b)従前から償却していなかった権利金等については、当該権利金等を計上した日まで遡及して計算できる (リース開始日までの遡及ではない。)、また、リース期間に事後的判断を使用できる
     

    (ⅴ)建設協力金等の差入預託保証金
    将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金除く。)及び差入預託保証金(建設協力金及び敷金)のうち将来返還されない額については従前の会計処理を継続することができる

    ③ 貸手に関する主な経過措置

    (ⅰ)ファイナンス・リース取引に分類していたリース
    適用初年度の前期末日におけるリース債権及び帳簿価額のそれぞれを適用初年度の期首の帳簿価額とすることができる等

    (ⅱ)オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
    適用初年度の期首に締結された新たなリースとして、会計基準を適用することができる

    (ⅲ)サブリース取引
    適用初年度の期首時点における残りの契約条件に基づいて、ファイナンス・リース分類されたものに対し、適用初年度の期首に新たに締結された新たなファイナンス・リースとして会計処理を行う

    ④ IFRSを適用している企業に関する経過措置IFRSの経過措置又は初度適用の免除規定を適用し、IFRSの数値を個別財務諸表に適用できる(ただし、連結内で相殺消去されていたリースに各種の経過措置を適用することができる。)

    (2) 公開草案からの変更点

    ① (1)②(ⅰ)ファイナンス・リース取引に分類していたリース

    重要性の乏しいリースについて適用初年度以前の次の会計処理の継続適用を認めることとされました。


    • 利子込み法又は利息相当額の定額法

    • 通常の賃貸借処理に準じた会計処理

    また、遡及適用しない場合に比較情報の開示は従来の開示とすることを認めることとされています。

    ②  (1)②(ⅲ)セール・アンド・リースバック取引について

    売手である借手は、適用初年度の期首より前に締結されたセール・アンド・リースバック取引について資産の譲渡価値が明らかに時価でない場合等の取扱いを適用しないことが追記されています。



    Ⅱ. ASBJのその他の会計基準等の改正、廃止の概要

    1. 改正賃貸等不動産時価開示会計基準等

    改正賃貸等不動産時価開示会計基準等では、次のとおり定めています。


    ① 棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的としてリースの借手により使用権資産の形で保有されている不動産(ファイナンス・リースの貸手における不動産を除く。)を賃貸等不動産の定義に含める
    ② 賃貸等不動産の範囲を変更しない
    ③ 賃貸等不動産の定義を満たす使用権資産について、賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法の注記の対象外とする
    ④ 賃貸等不動産の定義を満たす使用権資産に係る賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動の注記については、当期末における時価を注記する所有資産である賃貸等不動産とは区別して注記を行う

    2. 改正結合分離適用指針(改正結合分離適用指針第61-2項から第61-3項、第371-2項から第371-5項)

    (1) 取得原価の配分に係る取扱いの改正

    改正結合分離適用指針では、使用権資産及びリース負債について企業結合日の時価を算定することは、時価で測定するための情報の入手が困難な場合があることや時価の算定が複雑となる場合があるため、リースに係るリース負債は、当該リースが企業結合日現在で新規のリースであったかのように残りの借手のリース料の現在価値を基礎として取得原価の配分額を算定できることとされています。

    この場合、リースに係る使用権資産は、リース負債に次の金額を加減した金額を基礎として使用権資産への取得原価の配分額を算定することとされています。


    ① リースの条件が市場の条件と比較して有利又は不利になる場合における市場と異なる条件の影響額
    ② 借地権の設定に係る権利金等が識別されている場合における当該権利金等の時価


    また、少額リース及び企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリースについては、次の取扱いを認めています。


    • 少額リースについては、取得原価を配分しないことができる

    • 企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリースについては、取得原価を配分しないことができる。この場合、企業結合日後に計上した費用について、損益計算書において区分して表示していないとき、リース適用指針第100項(1)の短期リースに係る費用の発生額に含めて注記する

    (2) 公開草案からの変更点

    上記(1)の取扱いの改正は公開草案では提案されていませんでしたが、コメントへ対応するために改正されました。

    3. その他の会計基準等の改正

    その他の会計基準等では、リース会計基準等の定めに合わせるための文言や表現に係る修正、リース会計基準等との関連を補足する結論の背景での追記等の改正がなされています。

    4. 会計基準等の廃止

    リース会計基準の適用により、(図表24)に記載の企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針に従って会計処理されている取引についてはこれらの会計基準等の適用を終了するとされています。

    (図表24) 廃止される会計基準等

    企業会計基準第13号

    「リース取引に関する会計基準」

    企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」
    実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」
    移管指針第3号「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理に関する実務指針」

    なお、移管指針第3号「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理に関する実務指針」については、リースの連結財務諸表上の会計処理の取扱いを示すという意義はあるものの、実際に示されている会計処理は、一般的な連結財務諸表の連結修正仕訳の考え方と大きく変わらないものであるため廃止されています。



    Ⅲ. JICPAの実務指針等の改正の概要

    JICPAの実務指針等の改正の主な内容は以下のとおりです。
     

    1. ASBJからの改正依頼による主な改正

    (1) 用語の変更

    (図表25)のとおり、用語が変更されています。
     

    (図表25) 変更された用語一覧

    従来の用語変更後
    リース取引リース
    リース資産使用権資産
    リース債務リース負債

    (2) 借手の会計処理

    借手のリースの費用配分の方法について、IFRS第16号と同様に、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを使用権の取得と捉えて使用権資産を貸借対照表に計上するとともに、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルにする改正がなされています。

    2. ASBJからの改正依頼によらないJICPA独自の主な改正

    (1) 業種別監査委員会報告第19号「リース業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」

    「2.リース業における負債の包括ヘッジの取扱い」は、ヘッジ取引のうち2000年4月1日以後開始する最初の事業年度末までに行ったヘッジ取引契約(ただし、最長契約期間10年以内のものに限る。)を適用の対象としており、既にその役割を終えているため削除されています。

    また、文書の名称が「業種別委員会実務指針第19号」に変更されています。

    (2) 会計制度委員会研究報告第12号「臨時計算書類の作成基準について」、業種別委員会実務指針第53号「年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針」、同実務指針第65号「投資法人における監査上の取扱い」及び監査・保証実務委員会実務指針第90号「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」

    監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」及び保証業務実務指針(序)「保証業務実務指針及び専門業務実務指針並びに関連する公表物の体系及び用語」(2022年7月21日公表)に伴う適合修正が行われています。



    Ⅳ. 公開草案からの変更点

    公開草案からの変更点について、字句修正等を除いた主な内容は(図表26)のとおりです。なお、上記Ⅰ又はⅡに記載している内容も含まれています。
     

    (図表26) 公開草案からの変更点

    No.分類項目公開草案からの変更内容参照条文
    1範囲貸手による知的財産のライセンスの供与の適用範囲の例外の追加公開草案では一律にリース会計基準の適用範囲としないものとしていた、貸手による知的財産のライセンスの供与について、現行実務と同様の会計処理の選択を追加で認めるため、製造又は販売以外を事業とする貸手においては、リース会計基準等を適用することができることとされたリース会計基準第3項(2)ただし書き
    2範囲鉱物、石油、天然ガス等を探査する又は使用する権利の取得の適用範囲からの除外公開草案では除外していなかった「鉱物、石油、天然ガス等を探査する又は使用する権利の取得」について、国際的な会計基準との整合性を図るため、リース会計基準の適用範囲から除外されたリース会計基準第3項(3)
    3リースの識別(借手)リースを構成しない部分とリースを構成する部分の区分の例外の適用単位の追加リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分の例外的な取扱いについて、公開草案では、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごとに適用を選択することとしていたが、IFRS第16号と同様の取扱いを適用することを追加で認めるため、これに加えて、性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに例外的な取扱いの適用を選択できることとされたリース会計基準第29項
    4リースの識別(貸手)一定の要件を満たす貸手のオペレーティング・リースについてリースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分を合わせて会計処理の単位とする例外の追加公開草案では、貸手において、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分を区分して会計処理の単位とすることを求めていたが、米国会計基準の定めを参考に限定的な領域の代替的な取扱いの適用を追加で認めるため、貸手のオペレーティング・リースについて、一定の要件を満たす場合に、契約ごとにリースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分を合わせて会計処理の単位として取り扱うことができることとされたリース適用指針第14項、第15項
    5リース期間(借手)「合理的に確実」の閾値の明確化「合理的に確実」の閾値について米国会計基準の考え方を結論の背景に参考として記載していたが、リース会計基準等における考え方は必ずしも明らかではなかったため、「合理的に確実」は、蓋然性が相当程度高いことを示していることを明確にするため、リース適用指針の結論の背景にその旨が記載され、合わせて設例8について見直しが行われたリース適用指針BC29項、設例8-2から設例8-5
    6リース期間(貸手)貸手のリース期間についてIFRS第16号と同様の取扱いの選択肢の追加公開草案では、貸手のリース期間については、企業会計基準第13号の定めを引き継ぐこととしていたが、IFRS第16号と同様の取扱いの適用を追加で認めるため、借手のリース期間と同様に決定する方法も選択できることとされたリース会計基準第16項、第32項
    7リース期間(貸手)貸手のリース期間に係る解約不能期間の明確化貸手のリース期間の定義及び決定方法の定めにおいて、解約不能期間に事実上解約不能と認められる期間を含むことを明確にするために、リース会計基準の本文にその旨が記載されたリース会計基準第16項(2)、第32項
    8借手のリースの会計処理(使用権資産及びリース負債の計上)使用権資産の取得原価の範囲の明確化借手のリース料及び付随費用に加えて、資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除することを明確にするために、リース会計基準の本文にその旨が記載された

    リース会計基準第33項

    リース適用指針第18項

    9借手のリースの会計処理(短期リース)短期リースの定義の明確化短期リースに購入オプションを含まないことを明確にするために、リース適用指針の定義にその旨が記載されたリース適用指針第4項(2)
    10借手のリースの会計処理(短期リース)短期リースの適用単位の追加短期リースについての例外的な取扱いについて、公開草案では、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごとに適用を選択することとしていたが、IFRS第16号と同様の取扱いを適用することを追加で認めるため、これに加えて、性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに例外的な取扱いの適用を選択できることとされたリース適用指針第20項
    11借手のリースの会計処理(少額リース)少額リースの判定にあたりいわゆる300万円基準における判定期間の例外の追加及び維持管理費用相当額を控除する取扱いの追加公開草案では、少額リースに関する簡便的な取扱いの適用単位と判定について、借手のリース料に基づいて判定することしていたが、借手のリース期間に代えて契約期間に支払うリース料によることができることされた。また、当該借手のリース料から維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができることとされた。これらは、企業会計基準適用指針第16号の取扱いの継続適用などを認めるためであるリース適用指針第23項
    12借手のリースの会計処理(借手のリース期間に含まれない再リース)借手のリース期間に含まれない再リースの取扱いの明確化

    借手は、リース開始日及び直近のリースの契約条件の変更の発効日において再リース期間を借手のリース期間に含めないことを決定した場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができることしていた

    この定めに関して、リース開始日及び直近のリースの契約条件の変更の発効日に再リースを借手のリース期間に含めるかについて、リース会計基準第31項(借手のリース期間の定め)に基づき決定することを明確にするために、リース適用指針の本文にその旨が記載された

    リース適用指針第52項
    13借手のリースの会計処理(セール・アンド・リースバック取引)セール・アンド・リースバック取引について金融取引として取り扱う場合の要件の明確化収益認識会計基準等の他の会計基準に従い資産の譲渡が売却に該当しない場合と、リースバックがフルペイアウトに該当する場合の判定要件及び当該判定要件の適用関係を明確にするために、リース適用指針の本文が修文されたリース適用指針第55項、第56項、BC94項
    14貸手のリースの会計処理(リースの分類)将来の業績等により変動する使用料の明確化貸手において、市場における賃貸料の変動を反映するように当事者間の協議をもって見直されることが契約条件で定められているリース料が、将来の業績等により変動する使用料に含まれず、貸手のリース料に含まれると考えられることを明確にするために、リース会計基準の結論の背景にその旨が記載されたリース会計基準BC29項
    15貸手のリースの会計処理(ファイナンス・リース)貸手のファイナンス・リースについての基本となる会計処理及び貸手が事業の一環以外で行うリースの会計処理の明確化貸手の基本となる会計処理についての適用区分について、企業会計基準適用指針第16号の取扱いと整合的にするため、貸手が事業の一環で行うリースについては、製造又は販売を事業とする貸手か否かで判断するように、リース適用指針の本文が修文された
    また、貸手が事業の一環以外で行うリースの取扱いを明確にするために、リース適用指針の本文にその取扱いが記載された
    リース適用指針第71項、第72項
    16貸手のリースの会計処理(オペレーティング・リース)貸手のオペレーティング・リースについて貸手のリース期間に無償賃貸期間がある場合の定めの明確化貸手が貸手のリース期間についてリース会計基準第32項(2)(貸手のリース期間について借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法)を適用して決定する場合に、当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額について契約期間にわたり計上することを明確にするために、リース適用指針の本文にその旨が記載されたリース適用指針第82項
    17サブリース取引サブリース取引に伴う損益に総額表示を認める取扱いの追記中間的な貸手のサブリースがファインナンス・リースに該当する場合、計上されたリース投資資産又はリース債権と消滅を認識した使用権資産との差額について、純額で損益に計上する定めに加えて、総額での計上も認められることを明確にするために、リース適用指針の本文及び結論の背景にその旨が記載されたリース適用指針第89項、BC127項
    18借地権借地権の設定に係る権利金の残存価額の設定の要否

    以下の点を明確にするために、リース適用指針の結論の背景にその旨が記載された
     

    • 借手のリース期間の終了時に残存価額があると認められる場合には残存価額を控除すること
    • 残存価額の見積りが困難である場合には、残存価額をゼロとすることも考えられること
    リース適用指針BC54項
    19改正結合分離 適用指針(取得原価の配分)企業結合における取得原価の配分の例外の追加公開草案では提案されていなかったが、使用権資産及びリース負債について企業結合日の時価を算定することの困難さを踏まえ、IFRS第3号「企業結合」の定めを参考に代替的な取扱いの適用を追加で認めるため、リース負債は企業結合日現在で新規のリースであったかのように残りの借手のリース料の現在価値を基礎として取得原価の配分額を算定できることなどが追加された結合分離適用指針第61-2項、第61-3項
    20注記(借手)短期リースの注記の簡便的な取扱いの削除短期リースかつ少額リースとなるリースに係る注記は記載することを要しないことを明確化した上で(No.21参照)、コメントにおける指摘を踏まえ、公開草案では認めていた「短期リースに係る費用の金額に少額リースに係る費用の金額を合算した金額で注記することができる」との例外的な取扱いは削除されたリース適用指針第100項
    21注記(借手)短期リースかつ少額リースの注記の取扱いの明確化短期リースかつ少額リースに該当する場合には、短期リースの注記に含めることを要しないことを明確にするために、リース適用指針の本文にその旨が記載されたリース適用指針第100項
    22注記(借手)リース適用指針55項を適用して会計処理したセール・アンド・リースバック取引の注記の明確化リース適用指針第55項を適用して、金融取引として会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引の注記について、同項を適用して会計処理を行った資産がある旨並びに当該資産の科目及び金額の注記をリースに関する注記の中で記載することを明確にするために、リース適用指針の本文にその旨が記載されたリース適用指針第101項(1)②
    23経過措置(借手)経過措置の追加

    重要性の乏しいリースに関する経過措置であるため、公開草案では提案されていなかったが、重要性の乏しいリースについて適用初年度以前の次の会計処理の継続適用を認めることとされた
     

    • 利子込み法又は利息相当額の定額法
    • 通常の賃貸借処理に準じた会計処理
    リース適用指針第120項から第123項
    24経過措置(借手)適用初年度の期首より前に締結されたセール・アンド・リースバック取引に係る価格調整の取扱いに関する経過措置の明確化売手である借手は、適用初年度の期首より前に締結されたセール・アンド・リースバック取引について資産の譲渡価額が明らかに時価ではない場合等の取扱いを適用しないことを明確にするために、リース適用指針の本文にその旨が記載されたリース適用指針第126項(2)
    25経過措置(貸手)ファイナンス・リース取引に分類していたリースの取扱いの明確化販売益に重要性がない場合にも、利益剰余金の加減算が求められることになり、意図しない結果を招くことになるため、「販売益を利息相当額に含めて処理している場合にも同様とする。」との定めがリース適用指針の本文から削除されたリース適用指針第131項ただし書き
    26経過措置(開示)適用初年度の比較情報に関する取扱いの明確化適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従った組替えを行わないこと、並びに企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に定める事項を注記することを明確にするために、リース適用指針の本文にその旨が記載されたリース適用指針第136項、第137項



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