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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 森 さやか
企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2024年3月22日に、改正実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表しました。
2021年10月に経済協力開発機構(OECD)において合意が行われたグローバル・ミニマム課税のルールには、所得合算ルール(IIR)、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)があります。令和5年度税制改正において、このうちの所得合算ルール(IIR)に係る取扱いが定められたことに対応して、2023年3月に実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(以下「2023年実務対応報告」という。)が公表されています。
我が国ではグローバル・ミニマム課税制度を導入するための法人税法の改正は数年にわたって行われる予定であり、令和6年度の税制改正において所得合算ルール(IIR)に係る取扱いの見直しが予定されています。また、軽課税所得ルール(UTPR)に係る取扱い及び国内ミニマム課税(QDMTT)に係る取扱いについては今後の税制改正での法制化が予定されているものの、国際会計基準審議会(IASB)が2023年5月に公表した「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(修正IAS第12号)」では、所得合算ルール(IIR)のみならず、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)も含めて、税効果を認識しないこととされています。このため、ASBJにおいても検討が行われ、本実務対応報告が公表されました。
ASBJが本実務対応報告の適用を終了するまでの間、連結会計年度及び事業年度の決算における税効果会計の適用にあたっては、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないものとし、この取扱いは四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表並びに中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表においても適用することが定められています。
また、ここに至った次の考え方は結論の背景において示されています。
① 2023年実務対応報告では、グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の会計処理について、明らかではないと考えられる点があること、グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いについては、実務上の負担も想定されるとしていた。軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)もグローバル・ミニマム課税を構成するルールであることから、こうした状況は変わらないものと考えられる。
② IASBが2023年5月に公表した修正IAS第12号では、IAS第12号の要求事項からの一時的な例外として、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債について、企業は認識することもそれらに関する情報を開示することもしてはならないとしており、所得合算ルール(IIR)に係る取扱いのみならず、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)も含めて、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債を認識しないこととしている。さらに、IASBは、修正IAS第12号における一時的な例外をどれだけ長く残すのかは定めないことを決定している。このため、今後の税制改正により法制化される予定の軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)等の取扱いも含めて、税効果会計の適用にあたっては、税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないことで、当該取扱いが現時点の国際的な会計基準における取扱いと整合することになる。
企業がグローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれるか否かの判断を適時にかつ適切に行うことについて懸念があるとの意見に配慮し、2023年実務対応報告における取扱いと同様、グローバル・ミニマム課税制度の影響が見込まれる企業において本実務対応報告を適用した旨の注記を求めないこととすることが定められています。
2024年に改正された本実務対応報告の定めは、公表日(2024年3月22日)以後適用するとされています。
公開草案における提案内容から変更はありません。
本稿は本実務対応報告の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
本実務対応報告の全文はこちら(ASBJウェブサイト)へ
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