EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
その中で企業が成長するためには、長期的なトレンドを理解する必要があり、新しい価値の創造が、いままで以上に重要になります。これまで四半期ごとの短期的な価値を追求してきた米企業の多くは「長期的価値(Long-Term Value)」に軸足を置き始めました。投資家も長期的価値を基準に投資先を選ぶ傾向が強まっています。
もともと多くの日本企業は長期的価値を重視しており、米国の投資家や企業は四半期ベースなどの短期的な指標を評価の基準とする傾向にありました。短期的な価値を高めない限りROE(株主資本利益率)も株価も上がりにくかったためです。その影響もあり、近年、日本企業も短期的な価値を追求するようになってきました。そこへきて、今度は米国が「これからは長期的価値が重要だ」と言い始めたのです。必然的に右往左往する状況になります。その意味でも長期的視座をもっておくことがとても重要だと言えます。
米国を始めとする多くの国でこのような議論が活発にされ始めた背景は何でしょうか。まさにE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の影響、とりわけ環境問題に関する一般の意識が高まっていることだと思います。多くのステークホルダー(顧客、従業員、投資家など)の意識が高まることより、単に「良いこと」という文脈から、経済的にも意味があることに変わってきています。
例えば、「温暖化で北極の氷が溶けて困っている白クマを助けたい」と倫理や道徳に訴える方法には限界がありました。営利企業内で従業員がただ「白クマを救いましょう」と提案しても、経営者には刺さりません。投資家も同じです。
ところが消費者が「良いことをしている会社の製品を買います」と言い、学生が「良いことをしている会社に入社したい」と言い始めたことで様相は一変しました。また投資家が「リターンが同じ水準なら、良いことをしている会社に投資する」「二酸化炭素削減に努めていない会社の株式は買わない」と言い始めています。そうなると、経営者も無視できなくなります。倫理や慈善の問題ではなく、経済の問題だからです。
こうして環境、人権問題への対応、人材育成、男女平等など、バランスシートに反映されない価値を含めて企業を評価する「Inclusive Capitalism(多様性を尊重した資本主義)」の考え方が醸成されつつあります。
EYは2013年より、長期的価値の考え方につながるPurpose(理念)「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」を掲げています。2017年にはCoalition for Inclusive Capitalismに参加し、「Embankment Project for Inclusive Capitalism(統合的な目線による新たな資本主義社会の構築に向けた取り組み、以下EPIC)」を発表しました。EPICの目的は企業の長期的価値を測り、それを金融市場に示す新たな指標を作ることです。
2020年の7月にはEY Japanの中に「LTV推進室」を設置しました。推進室の役割は企業の非財務活動の定量化・KPI化、ソーシャルインパクトの測定、サステナビリティ・ESG・SDGsの経営への統合などでクライアントを総合的に支援することです。
「サステナブルな長期的価値がFuture Valueにつながる」今こそ、資本主義をバージョンアップし、長期的価値の創造することが企業にとって重要になるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大により、日本でもデジタル化が加速し、新しい働き方も定着してきました。既に日本経済は新しいS字曲線に移っています。その中で企業が成長するためには、長期的なトレンドを理解する必要があり、新しい価値の創造が、いままで以上に重要になります。これまで四半期ごとの短期的な価値を追求してきた米企業の多くは「長期的価値(Long-Term Value)」に軸足を置き始めました。投資家も長期的価値を基準に投資先を選ぶ傾向が強まっています。