2023年3月決算会社での有価証券報告書最終チェック
情報センサー2023年5月号 会計情報レポート
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 久保慎悟
会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事しつつ、大手通信業や大手食品製造業のIFRS連結決算支援業務に従事している。主な著書(共著)に『M&A・組織再編会計で誤りやすいケース35』(中央経済社)などがある。
Ⅰ はじめに
本稿では、2023年3月期の有価証券報告書の作成にあたり、会計基準等や開示規則の主な改正などによる開示への影響、金融庁による有価証券報告書レビュー(以下、有報レビュー)の審査項目を踏まえた留意事項を解説します。文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添えます。
Ⅱ 会計基準等の主な改正等による開示への影響
23年3月期から原則適用となる会計基準等が開示に与える影響について解説します。なお、これらの会計処理等の詳細については、本誌23年4月号の「2023年3月期 決算上の留意事項」をご参照ください。
1. 「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」の適用による開示への影響
22年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下、実務対応報告42号)が原則適用となりました。実務対応報告42号の適用により、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計に関して表示及び開示が求められることになります。なお、グループ通算制度を適用する場合の会計処理等については、次の本誌各号で解説していますので併せてご参照ください。
(1) 法人税及び地方法人税に関する表示
① 法人税及び地方法人税
グループ通算制度を適用する場合の法人税及び地方法人税に関する表示については、実務対応報告42号に定めのあるものを除き、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下、法人税等会計基準)の定めに従うこととされています(実務対応報告42号6項、24項)。グループ通算制度では、グループ通算制度を適用する企業(以下、通算会社)がそれぞれ申告・納付を行うため、各通算会社が申告・納付を行う法人税及び地方法人税については、個別損益計算書において「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示するとともに、個別貸借対照表において「未払法人税等」として計上します。
なお、連結納税制度では、連結納税の範囲に含まれる連結会社群が法人税法上同一の納税主体となることから、連結納税親会社が、その個別貸借対照表において、連結納税子会社を含めた連結納税グループ全体として納付すべき連結法人税及び地方法人税の額を(いわば、まとめて)「未払法人税等」として計上することとされていた点と異なりますので留意が必要です。
② 通算税効果額について
通算会社が申告・納付を行う税額は、通算前所得に対して通算グループ内の他の通算会社との損益通算や欠損金の通算を行った後の課税所得を基に算定されます。当該損益通算、欠損金の通算などにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として通算法人間で授受される金額は、通算税効果額と呼ばれ、個別損益計算書において、当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱うこととされています(実務対応報告42号5項、7項)。
このため、通算税効果額は、「法人税、住民税及び事業税」として個別損益計算書に表示します(実務対応報告42号25項、57項)。
また、通算税効果額に係る債権及び債務の表示については、連結納税制度を適用していた場合において個別帰属額に係る債権及び債務を個別貸借対照表に「未収入金」又は「未払金」として計上することとしていた取扱いを踏襲することとされています。このため、通算税効果額に係る債権及び債務は、「未払法人税等」(「未収還付法人税等」)には含めずに、「未収入金」や「未払金」などとして個別貸借対照表に表示します(実務対応報告42号25項、58項)。
(2) 繰延税金資産及び繰延税金負債に関する表示
① 個別貸借対照表における表示
通算会社の個別貸借対照表における繰延税金資産及び繰延税金負債については、双方を相殺して表示します(企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」2項、実務対応報告42号26項、59項)。
② 連結貸借対照表における表示
グループ通算制度においては、各通算会社は異なる納税主体となりますが、連結財務諸表では法人税及び地方法人税に関して通算グループ全体に対して税効果会計を適用することとしていることから、通算グループ全体の法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債については、その合計を相殺して、連結貸借対照表の投資その他の資産の区分又は固定負債の区分に表示します(実務対応報告42号14項、27項、60項)。なお、住民税及び事業税に関してはグループ通算制度の対象とされていないことから、連結財務諸表では、各通算会社における住民税及び事業税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債について、その合計を相殺せずに表示する点に留意が必要です。
(3) 注記
グループ通算制度の適用により、実務対応報告42号に従って法人税及び地方法人税の会計処理又はこれらに関する税効果会計の会計処理を行っている場合、税効果会計に関する注記(繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳に関する注記など)については、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税を区分せずに、これらの税金全体で注記します。なお、税金の種類によって繰延税金資産の回収可能性が異なる場合があり、同じことが生じ得る連結納税制度における取扱いでは、評価性引当額について税金の種類を示して注記することが望ましいとされていました。しかしながら、評価性引当額を税金の種類ごとに開示することによる情報の有用性は限定的であると考えられることなどから、税金の種類ごとに注記することは求められなくなりました。ただし、このような場合に、評価性引当額について税金の種類を示すことは妨げられません(実務対応報告42号29項、62項)。
上記の注記に併せて、グループ通算制度の適用により、実務対応報告42号に従って法人税及び地方法人税の会計処理又はこれらに関する税効果会計の会計処理を行っている旨を注記します(実務対応報告42号28項)。従来、連結納税制度を適用している企業において、これに相当する注記を重要な会計方針の注記として記載していることもありましたが、実務対応報告42号では税効果会計に関する注記において記載することが求められていることから、記載場所について留意が必要となります。
なお、通算会社が負っている連帯納付義務については、偶発債務としての注記は要しません(実務対応報告42号30項)。
また、連結納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合、実務対応報告42号の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当します。しかしながら、実務対応報告42号は連結納税制度を適用する場合の会計上の取扱いを踏襲しており、会計方針の変更によって重要な影響は生じないと考えられるため、その影響はないものとみなすこととされ、会計方針の変更に関する注記は要しません(実務対応報告42号32項、67項)。
2.「時価の算定に関する会計基準の適用指針」の改正による開示への影響
22年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より、改正企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下、改正時価算定適用指針)が原則適用となりました。改正時価算定適用指針の適用により、投資信託の取扱いに関連する注記や貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資に関連する注記が求められることになります。なお、改正時価算定適用指針の会計処理等については、次の本誌各号で解説していますので併せてご参照ください。
(1) 投資信託の取扱いに関連する注記
① 投資信託財産が金融商品である投資信託
投資信託財産が金融商品である投資信託については、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求(以下、合わせて解約等)に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額を時価とする(ただし、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下、時価算定会計基準)における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格の利用を妨げるものではない)とされています(改正時価算定適用指針24-2項)。一方で、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合には、一定の要件を満たすことを条件として、基準価額を時価とみなすことができる取扱い(以下、24-3項取扱い)が定められています(改正時価算定適用指針24-3項)。投資信託財産が金融商品である投資信託のうち、市場における取引価格が存在しないものについて、基準価額を時価とするケースと基準価額を時価とみなすことができる取扱い(24-3項取扱い)を適用するケースとでは、基準価額が計上額になる点は同じですが、注記すべき内容が異なりますので留意が必要です。
投資信託財産が金融商品である投資信託に関して、24-3項取扱いを適用せずに算定した時価については、時価算定会計基準に従った取扱いと整理されるため、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の注記が必要となります(改正企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下、時価開示適用指針)5-2項)。
一方、24-3項取扱いを適用した投資信託については、「金融商品の時価等に関する事項」(時価開示適用指針4項)を他の金融商品と合わせて注記したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、24-3項取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記します。そして、24-3項取扱いを適用した投資信託は時価算定会計基準の本則に従って基準価額に対して調整を行っていれば利用したであろうインプットのレベルは把握されないこととなり、基準価額のインプットのレベルのみによって時価のレベルを決定することは適切ではないことから、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」は注記しません。ただし、時価をもって貸借対照表価額とする他の金融資産及び金融負債に関するレベルごとの時価の合計額に関する注記に併せて、<表1>の内容を注記します。なお、当該注記を連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しません(改正時価算定適用指針24-7項、49-8項)。
② 投資信託財産が不動産である投資信託
投資信託財産が不動産である投資信託についても、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額を時価とする(ただし、時価算定会計基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格の利用を妨げるものではない)とされています(改正時価算定適用指針24-8項)。一方で、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合には、基準価額を時価とみなすことができる取扱い(以下、24-9項取扱い)が定められています(改正時価算定適用指針24-9項)。投資信託財産が不動産である投資信託についても、その市場における取引価格が存在しないものについて、基準価額を時価とするケースと基準価額を時価とみなすことができる取扱い(24-9項取扱い)を適用するケースとがあり、それぞれ注記すべき内容が異なります。また、投資信託財産が金融商品である投資信託の場合と異なり、基準価額を時価とみなすことができる取扱いを適用する上で一定の要件を満たすことが求められていないことにも留意が必要です。
投資信託財産が不動産である投資信託に関して、24-9項取扱いを適用せずに算定した時価については、時価算定会計基準に従った取扱いと整理されるため、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の注記が必要となります(時価開示適用指針5-2項)。
一方、24-9項取扱いを適用した投資信託については、「金融商品の時価等に関する事項」(時価開示適用指針4項)を他の金融商品と合わせて注記したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、24-9項取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記します。そして、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」は注記せず、時価をもって貸借対照表価額とする他の金融資産及び金融負債に関するレベルごとの時価の合計額に関する注記に併せて、<表2>の内容を注記します。なお、投資信託財産である不動産については、時価の算定が時価算定会計基準の対象に含まれないことから、投資信託財産が金融商品である投資信託と同様に解約等に関する制限の内容の注記を求めたとしても、会計基準との差異を理解するための有用な情報にはならないと考えられるため、解約等に関する制限の内容の注記は求められません。また、当該注記を連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しません(改正時価算定適用指針24-12項、49-14項)。
(2) 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資に関連する注記
貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」132項、308項)については、貸借対照表の科目ごとの時価等の注記(時価開示適用指針4項(1))を要しない取扱い(以下、24-16項取扱い)が定められています。24-16項取扱いを適用する場合、他の金融商品における貸借対照表の科目ごとの時価等の注記に併せて、<表3>の事項を注記します。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しません(改正時価算定適用指針24-16項)。
(3) 適用初年度における注記など
改正時価算定適用指針の適用初年度においては、当該改正時価算定適用指針が定める新たな会計方針を将来にわたって適用し、その変更の内容について注記します。
なお、経過措置を適用して、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の注記をしていなかった投資信託については、改正時価算定適用指針の適用初年度において、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」における当該投資信託に係る比較情報の注記を要しません。
また、改正時価算定適用指針を年度末から適用する場合には、その適用初年度において、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の注記をしていなかった投資信託で、24-3項取扱い及び24-9項取扱いを適用しないものに関する時価が「レベル3の時価に分類される金融資産及び金融負債の期首残高から期末残高への調整表」の注記を省略することができます。この場合、適用初年度の翌年度においては、当該投資信託に係る「レベル3の時価に分類される金融資産及び金融負債の期首残高から期末残高への調整表」の比較情報は要しません(改正時価算定適用指針27-2項から27-4項)。
Ⅲ 開示府令の改正等
23年1月31日に、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等が公布・施行されました(23年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から原則適用)。
本改正は、22年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告における「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」や「コーポレートガバナンスに関する開示」等の制度整備を行うべきとの提言に基づいたものです。改正内容については本誌23年3月号「改正企業内容等の開示に関する内閣府令の解説」にて解説していますので、ご参照ください。
Ⅳ 記述情報の開示
金融庁では、毎年、投資家と企業との建設的な対話に資する充実した企業情報の開示を促すため、「記述情報の開示の好事例集」を公表しています。23年1月に公表された「記述情報の開示の好事例集2022」では、22年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告における「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」に関して制度整備を行うべきとの提言を踏まえ、どのような開示が投資判断にとって有用と考えられるかを含め、投資家・アナリスト及び企業により開催された勉強会にて議論された開示例が紹介されています。
Ⅴ 金融庁による有報レビューを踏まえた留意事項
1. 23年度有報レビューにおける審査項目等
有価証券報告書の記載内容の適正性を確保する目的の下、毎年、金融庁と財務局等との連携により有報レビューが行われています。
23年度の有報レビューの概要は<表4>のとおりです。
2. 過去の有報レビューにおける指摘事項
過去の有報レビューの重点テーマ項目は<表5>のとおりです。
22年度の有報レビュー結果を踏まえた留意事項及び改善の方向性として記載された内容のうち主なものは以下のとおりです。なお、留意事項及び改善の方向性と併せて、収益認識に関する会計基準の主な好開示例も記載されています。
(1) 「時価の算定に関する会計基準等」の公表を踏まえた財務諸表等規則等の改正について
- 「時価で連結貸借対照表に計上している金融商品」と「時価で連結貸借対照表に計上している金融商品以外の金融商品」のいずれの区分で開示するべきかを金融商品の内容や会計処理方法を踏まえて判断しているか
- デリバティブ取引について、外貨建金銭債権債務等に係る為替予約等の振当処理及び金利スワップの特例処理を適用している場合を除き、「時価で連結貸借対照表に計上している金融商品」の区分に記載しているか
(2) 収益認識に関する会計基準について
全般的な事項として、収益認識に関する注記の開示目的(顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示すること)に照らして、重要性があると考えられる注記事項については詳細に記載することが求められるため、開示の重要性について適切に判断する必要があります。また、重要な会計方針に関する注記や有価証券報告書の他の記載項目との関係性を財務諸表利用者が容易に理解できるように、一貫性のある明瞭な開示を行うことが必要となります。
個別的な事項は以下のとおりです。
① 主要な事業における主な履行義務の内容及び履行義務の充足時点を具体的に記載しているか。
② 履行義務の内容等と収益の分解情報やセグメント情報等との関係性を明瞭に記載しているか。
主な履行義務の内容及び履行義務の充足時点に関して、企業固有の取引内容や契約条件に基づいた具体的な記載になっているかや、収益の分解情報やセグメント情報等との関係性もしくは収益の分解情報の区分等における主な履行義務の内容を説明しているかに留意が必要です。
③ 重要性等に関する代替的な取扱い(出荷基準等)を適用した場合にその旨を記載しているか。
履行義務の充足時点と収益認識の通常の時点とが異なる場合にはその内容を適切に開示しているかに留意が必要です。
④ 一時点で充足される履行義務について、財又はサービスの支配を顧客が獲得した時点を評価する際の重要な判断を記載しているか。
顧客に商品の支配が移転した時点のみならず、何故その時点が適切と判断したかについての判断内容を開示しているかに留意が必要です。
⑤ 一定の期間にわたり充足する履行義務について、収益を認識するために使用した方法及び当該方法が財又はサービスの移転の忠実な描写となる根拠を記載しているか。
収益を認識するために使用した方法(インプット法又はアウトプット法など進捗度の具体的な測定方法)やなぜその方法が適切と判断したのかについて記載しているかに留意が必要です。
⑥ 不動産賃貸収入などのリース収益を顧客との契約から生じる収益とは区分して開示しているか。
「リース取引に関する会計基準」に基づく不動産賃貸収入や「金融商品に関する会計基準」に基づく金融収益等については、顧客との契約から生じる収益とは区分して「その他の収益」等の名称で開示しているか留意が必要です。
⑦ 収益の分解を行わない場合に、単一セグメントであることや履行義務の充足時点が全て一時点であることのみを理由としていないか。
例えば、単一セグメントであっても、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析における主要な製品別の分析の開示と同じ区分で分解することなどを検討しているか、また、分解するべきものがなったとしても、適切な検討を行ったことがわかる内容の開示をしているか留意が必要です。
⑧ 契約資産及び契約負債の内容を説明しているか。また、履行義務の充足の時期と通常の支払時期が契約資産及び契約負債の残高に与える影響を記載しているか。
履行義務の充足の時期と通常の支払時期が契約資産及び契約負債の残高に与える影響を説明する上で、その前提として契約資産及び契約負債の内容の説明が必要であることに留意が必要です。
⑨ 実務上の便法を適用し、残存履行義務に配分した取引価格の総額等の開示を省略した場合にその旨を記載しているか。
一定の条件を満たす場合には残存履行義務に配分した取引価格の総額等の開示を省略できるが、その場合には、その旨(どの条件に該当するか、及び当該注記に含めていない履行義務の内容)の開示が必要であることに留意が必要です。
(3) 重点テーマ以外の主な項目
- コーポレートガバナンスの状況等における株式の保有状況において、提出会社に関する記載や連結子会社のうち最大保有会社の次に大きい会社に関する記載を必要に応じて行っているか。
- 複数の退職給付制度を採用している場合において相殺すべきでない年金資産(退職給付に係る資産)と退職給付債務(退職給付に係る負債)とを相殺していないか。
- 退職給付に係る調整額(その他の包括利益)について、連結包括利益計算書に関する注記と退職給付関係の注記とで整合している記載を行っているか。
- セグメント情報等に関する注記において、連結損益計算書の売上高の10%以上となる特定の国の売上高や連結貸借対照表の有形固定資産の残高の10%以上となる特定の国の有形固定資産の残高を開示しているか。また、単一の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の10%以上である場合において、当該顧客の氏名等の情報を適切に開示し、匿名などで開示していないか。
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