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2020年5月に公表された基準の改訂の内容

2020年10月1日 PDF
カテゴリー IFRS実務講座

情報センサー2020年10月号 IFRS実務講座

IFRSデスク 公認会計士 上浦宏喜

当法人入所後、主として半導体製品、硝子製品等の製造業、小売業、ITサービス業などの会計監査及び内部統制監査に従事。2019年よりIFRSデスクに所属し、IFRS導入支援業務、研修業務、執筆活動などに従事している。

Ⅰ  はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2020年5月14日、幾つかのIFRSの改訂を公表しました。それらの改訂には、IFRS第3号「企業結合」、IAS第16号「有形固定資産」及びIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の三つの基準の狭い範囲の改訂のほか、2018-2020サイクルの年次改善に関する改訂が含まれています。また、これらの改訂は22年1月1日に発効し、早期適用が認められています。
本稿では、それらの改訂に関する主な内容について解説します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りします。

Ⅱ 改訂の主な内容

1. IFRS第3号「企業結合」の改訂

「財務報告に関する概念フレームワーク」への参照を更新するものであり、企業結合の会計処理の要求事項を変更することは意図されていません。IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」又はIFRIC第21号「賦課金」が適用される負債及び偶発負債に関する認識原則に例外規定を追加し、また、偶発資産の既存のガイダンスを明確化しています。
具体的にIASBは、企業結合以外の別個の取引として生じた場合にIAS第37号又はIFRIC第21号が適用される負債及び偶発負債については、上記フレームワークへの参照を更新することによって企業の財務業績の側面を忠実に表さない「Day2」利益又は損失が発生する可能性があることから、そうした問題を回避するためにIFRS第3号11項の認識原則の規定を免除する例外規定を追加しました。
同時にIASBは、偶発資産が取得日時点で認識の要件を満たさないことについて、IFRS第3号の既存のガイダンスをより明確化することを決定しました。

2. IAS第16号「有形固定資産」の改訂

当改訂は、追加された20A項によって、例えば有形固定資産の機能の評価のために生産された試作品のような、企業が資産を意図した使用のために準備している間に生産された項目の販売により受け取った金額について、そのような販売収入及び関連するコストを純損益に認識することを規定し、企業が有形固定資産の取得原価からを控除することを認めないことにしました。また、そのような試作品のコストについてはIAS第2号「棚卸資産」の測定に関する規定を適用して識別及び測定しなければならないことが明確化されました。
また、開示については、通常の事業活動の過程で生産されるものではない(企業がIFRS第15号とIAS第2号を適用することにならない)項目の売却について、企業は以下を要求されます。

① 純損益に認識される売却収入と関連する生産コストを別個に開示する。

② 売却収入と関連する生産コストを含む純損益及びその他の包括利益計算書上の表示科目を特定する。

3. IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の改訂

追加された68A項によって契約が損失を生じるものである(不利な契約)かどうかを評価する際に企業がどのコストを含めるべきかを明確にしています。具体的には、当該評価のために、契約に直接関連するコストとして、直接労務費や直接材料費のような契約を充足するための増分コスト及び、契約を充足するために使用される有形固定資産項目の償却費の配分のような契約の充足に直接関連したその他費用の配分を含めるべきであると規定しています。
従って、従来、企業が増分コストのみを集計するような方法を採用していた場合は、会計方針の変更として対応する必要が生じます。具体的には、企業が、増分コストのみを考慮し、個々に収益性がある(不利な契約でない)と判断した長期のサービス契約等について、改定後の直接関連コストによる集計が採用されることに伴い、増分コスト以外の直接関連コストを含めて計算された結果として収益性がないと判断される場合には、企業が不利な契約に係る損失を早期に認識する結果を生じさせます。

4. 2018-2020サイクルの年次改善の概要

2018-2020サイクルの年次改善の概要は<表1>の通りです。

表1 2018-2020サイクルの年次改善の概要

Ⅲ 発効日、早期適用

各改訂は22年1月1日以降に開始する事業年度から適用がされ、早期適用が認められます。なお、IFRS第16号の改訂(年次改善)については、付属する設例(IFRS第16号の一部を構成するものではない)のみに関するものであることから、発効日は記載されていません。

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