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ベルギーの魅力度調査から分かる日系企業の動向


EYの国別魅力度調査によれば、ベルギーは税水準・規制環境・人件費などのリスクはあるものの、高い労働者の質を背景に、欧州の地理的な中心として物流業などへの海外直接投資(FDI)が高い水準で継続しています。日系企業からの投資も全体の動向と連動する形で活発化しています。


本稿の執筆者

EYベルギー JBS(ジャパン・ビジネス・サービス) 公認会計士 馬場 翔太

2021年9月からのEYベルギーへの赴任以降、会計・税務・法務・労務などの規則関連サポートに加えて、ベルギーでの新規拠点設立やリストラクチャリングなどの経営サポートを手掛ける。本稿の基となっている調査の翻訳サマリーを担当。公認会計士(日本)、CFA協会認定アナリスト(米国)、日本アクチュアリー会 準会員。



要点

  • ベルギーの経済環境は欧州平均を上回って回復している。
  • ベルギーで経営を行う上で投資家が考えるリスクは税水準・規制環境・人件費などがある。
  • 日系企業のベルギーへの投資も活発化している。


Ⅰ はじめに

ベルギーという国を投資先として検討したことはありますか。首都であるブリュッセルには、欧州連合(EU)の主要機関があり、また、2021年のKOFグローバリゼーション指数※1で世界第3位と、ベルギーは国際化が進んでいる国の1つです。また、地理的にも欧州の中心に位置しており、欧州の玄関口として日本からの海外直接投資(FDI)数も高い水準を維持しています。

本稿では、EYが実施した国別魅力度調査※2を基に、日系企業を含むベルギーへの投資に関する主要な動向について紹介します。


Ⅱ 各種統計データから分かるベルギーの経済動向
 

1. ベルギーにおけるFDI数の増加率(+8%)は欧州平均を上回る

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により大きな影響を受けた20年を経て、21年のベルギーでのFDI数は欧州の平均回復率を上回って増加しました。実際の数値を見ていくと21年のベルギーへのFDIは245プロジェクト(+8%)であり、そのうち80%が新規プロジェクトにより構成されています。また、雇用創出の伸びはより顕著であり、約7,000(+28%)の雇用がFDIにより創出されました(<表1>参照)。

表1 国別FDI数(2020年および2021年)

このようにベルギー経済は回復傾向にあり、投資先としての魅力度を高めています。

2. ベルギーは物流の中心地としての重要な役割を担う

上位5つのセクターが21年におけるベルギーへのFDIを牽(けん)引しており、プロジェクト数全体の60%を占めています。

セクター別にFDIを分類すると、輸送・物流は20年の経営サービスと入れ替わる形で首位になっています。一方で、医薬品は非常に投資が活発であった20年に比べるとプロジェクトの数が減少し3位となっています。

また、アクティビティ別にFDIを分類すると、物流へのFDIは65プロジェクトと堅調な増加があり、首位に返り咲いています。これは、20年においては、物流へのFDIが上位3位にも入っていなかったことを鑑みれば非常に大きな伸びとなります。なお、20年に首位であった販売およびマーケティングへのFDIについては3位となり、製造へのFDIは引き続き2位を維持しています(<表2>参照)。

表2 FDI数のセクター別・活動別分類

3. 欧州諸国を除けば日本からベルギーへのFDI数は3位

日本からベルギーへのFDI数は欧州諸国を除けば米国、中国に次いで3番目に位置しています。また、1プロジェクトあたりの雇用創出数については、EU加盟国も含めた全体のランキングの中でも上位に属しており、比較的大型な投資が日本から行われていることが推察できます(<表3>参照)。

表3 FDIの国別内訳

なお、実際に21年後半からEYベルギーへ新規進出に係わる日系企業からの問い合わせ件数が増加しており、今後、日系企業によるベルギーへのFDI数について伸びていくことが想定されます。

4. 主要なリスクは税水準・規制環境・人件費

ランキング間相互での変動はあるものの、ベルギーの魅力度に影響を与えている主要なリスクは税水準、規制環境の不安定さ、スキル不足および人件費となっています(<図1>参照)。

図1 Q. 今後3年間において投資家がベルギーの魅力度に影響を与えると考えるリスク

特に人件費の高さは、物価の高騰に合わさって、多くの在ベルギー日系企業において喫緊に対処すべき課題となっています。

5. 労働者の質は高い評価を受けている

労働者の質は、ベルギーでの経済活動における強みとして認識されています。これは、他の欧州諸国との比較による人材関連項目などのQ&Aの結果にも反映されています。

また、当Q&Aによればベルギーの労働者はデジタルスキルにおいて強みがあることを示しています。しかし、<図2>のようにいくつかのデジタルスキルについては依然として不足していると考える経営者は多く、デジタルスキル保持者に関する人材難は在ベルギー日系企業の雇用状況へも影響を与えていくことが予想されています。

図2 Q. ベルギーにおいて不足しているデジタルスキルは?

Ⅲ おわりに

パンデミックの影響により停滞していた日系企業の動きが活発化し、EYベルギーへの新規拠点設立や組織再編などのお問い合わせが顕著に増加してきています。ベルギーで経営を行う上でのリスク(税水準・規制環境・人件費)を低減し、円滑にビジネスを行うためには専門的な知識が必要です。

EYベルギーでは会計・税務・法務・労務といった規制面でのサポートだけでなく、経営面でのサポートも行っています。関連規則や在ベルギー日系企業の事例などをご案内いたしますので、お問い合わせください。


※1 KOF Globalisation Index – KOF Swiss Economic Institute | ETH Zurich
kof.ethz.ch/en/forecasts-and-indicators/indicators/kof-globalisation-index.html

※2 当調査の詳細はこちらを参照のこと

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サマリー

EYの国別魅力度調査によれば、ベルギーは税水準・規制環境・人件費などのリスクはあるものの、高い労働者の質を背景に、欧州の地理的な中心として物流業などへの海外直接投資(FDI)が高い水準で継続しています。日系企業からの投資も全体の動向と連動する形で活発化しています。


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2022年10月号
 

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