メキシコの大統領の任期は6年間であり現大統領にとって22年は折り返しの年となりますが、今後も引き続き法人への課税強化が進められていくことが予想されます。
3. 22年度税制改正
22年度税制改正では、新税の導入や税率の引き上げはないものの、企業にとっては申告業務などの税務負担が増すような改正がなされています。主要な改正項目は以下の通りです。
(1) 過少資本税制の計算方法の一部変更
メキシコの過少資本税制の計算における「資本」は、会計上の株主資本もしくは税務上の資本(税務申告書上の拠出金(CUCA)+純利益(CUFIN)+再投資純利益(CUFINRE)のいずれかを選択適用することが認められています。ここで、税務上の資本を利用する場合、以前は繰越欠損金を考慮する必要はありませんでしたが、本改正により繰越欠損金を控除することになりました。
繰越欠損金があり、これまで税務上の資本を選択適用していた場合には、今回の改正により過少資本税制の影響を受ける可能性があります。
(2) 利息を配当として認識する融資に係る定義の拡大
従来「Back-to-Back」ローン(親会社等から借入を行い、そのまま子会社等に対して同条件の貸付けを行うような借入等)に該当する国外関連者からの借入に係る支払利息を配当として損金算入を否認するルールがありましたが、今回の改正により当該ルールの適用範囲が、事業上の正当な理由を欠く全ての国外居住者からの資金調達取引に拡大されています。
海外居住者からの有利子負債等を有する会社は、税務当局からの照会を受けた際に説明できるディフェンスファイルの準備が必要となります。
(3) 移転価格に係る諸変更
移転価格に係るルールの変更としては、①マキラドーラ(外国企業の誘致や輸出促進を目的に原材料・部品や機械設備・工具等を無関税で輸入できる仕組み)における移転価格事前確認(APA)の適用が廃止され、セーフハーバー・ルールのみの適用が認められることとなったこと、②ローカルファイルの提出期限が対象年度の翌年12月31日から同5月15日に、また関連者取引に関する税務申告附表(DIM Anexo 9)の提出期限が対象年度の翌年7月15日から同5月15日にそれぞれ短縮されたこと、③対象取引が国外関連者だけでなく国内関連者との取引にも拡大されたことの三つが大きな変更点となります。
メキシコの移転価格におけるセーフハーバー・ルールは、営業費用の6.5%および総資産(海外主体者の保有在庫ならびに機械装置を含む)の6.9%のいずれも上回る利益を上げることが条件となるため、これまでマキラドーラにおいてAPAを適用していた会社は、改めて上記条件を満たしているかどうかの確認が必要になります。
(4) 一定規模以上の会社に対する税務監査の義務化および税務監査の期限の短縮
メキシコでは財務諸表の会計基準への準拠性を監査目的とする会計監査とは別に、監査法人等が法人の税務申告書類等の税法への準拠性を監査目的とする税務監査(Dictamen Fiscal)と呼ばれる制度があります。14年以降、税務監査の実施は任意となっていましたが、今回の改正により課税収入が約1,650百万ペソを超える企業に対して、税務監査の実施が義務化されました。
さらに、当局への提出期限についても対象年度の翌年7月15日から同5月15日に短縮されています。