EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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貿易の不透明性は続く
昨年における最大の課題は、貿易の混乱といえるでしょう。ウクライナ情勢が混乱を拡大したことは確かですが、要因はそれだけはありません。貿易紛争、新たな貿易協定や提携、急速に変化する規制環境、現在も続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響など全てが、貿易の不透明性を高めています。これらの要因は、世界中の企業に新たな課題と機会をもたらし、取締役会では、貿易とサプライチェーンの問題が議論され、貿易部門には、かつてないほど注目が集まっています。
貿易は、世界の間接税政策に大きな影響を与える可能性があります。貿易自由化によって、各国が国境を開放すると、輸入品に対する関税やその他の間接税が引き下げられるのが一般的ですが、輸入国の間接税収入が減ることによって、経済効率が高まり、経済成長を刺激することができます。米中をはじめとする貿易紛争は、世界の間接税政策に大きな影響を与える可能性があります。米国が中国からの輸入品に関税を課すと、他国もそれに倣い、国際的な間接税政策への波及効果がありました。
地政学的な不安定性の高まりや今も続くウクライナ情勢、輸出管理と制裁の拡大、米国、英国、欧州連合(EU)でのコンプライアンス意識の高まりなどの要因が、引き続き貿易に支障を来しています。制裁対象が専門サービスやIT関連サービスに拡大されたことで、多くの企業が顧客との取引において、こうした規制に注意する必要が生じました。世界各国の政府は、制裁と貿易保護を強化しており、米国では、半導体、集積回路、関連製造装置、先端情報処理、スーパーコンピューターを中心とした2022年の輸出管理規則¹について、政府が引き続き大幅な更新を行うと予想されています。
今年は、サプライチェーンの圧力がやや緩和されると考えられます。出荷価格やその他の重要なサプライチェーン指標は落ち着きを見せつつあります。しかし、米中のデカップリング、オンショアリングに対する政府インセンティブ、企業に対するサプライチェーンの可視性向上に係る規制要件などの複合的要因により、企業は今後も調達に関する意思決定を大きく変更することになるでしょう。
EYのグローバル・インダイレクトタックス・リーダーであるKevin MacAuleyは、次のように述べています。「ウクライナ情勢やパンデミック後のサプライチェーン再編などにより、サプライチェーンモデルは大きく変化しました。ジャストインタイム方式からジャストインケース方式まで、多くの取り組みがなされていますが、サプライチェーンモデルの変更は、コンプライアンスとキャッシュ・フローの両面から間接税会計に大きな影響を及ぼします。またサプライチェーンの混乱は、コストも押し上げています」
長期的トレンドと短期的ショック
Ernst & Young LLPの英国トレード・ストラテジー・アンド・ブレグジット・リーダーのSally Jonesによると、現在の貿易には2つのトレンドがあります。新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢などの危機は、貿易システムに比較的短期的かつ急激なショックを与えましたが、貿易システムは極めて迅速に対応し、回復しています。2つめは、貿易障壁の解消が世界的なコンセンサスであった時代からの長期的かつ持続的な変化です。第二次世界大戦後に始まった貿易障壁の解消という傾向は、70~80年続きましたが、現在は逆の方向へ進んでいます。