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1. NFTに関連する知的財産を譲渡または保有する最適な方法は何か?
NFTの販売時に関連する知的財産権を譲渡することにより、ブランドコミュニティを形成したり、NFTの発行それ自体に対する注目を集めたりすることが可能となります。また、購入者が革新的な方法で知的財産を活用することにより、新たなブランド価値を生み出す可能性もあります。他方で、NFTの販売者としては、事前に決めた使用方法のみで知的財産を使用できる限定的なライセンスを許諾することにより、ブランド価値を守り、二次流通市場の形成を防ぐことを考える場合もあります。
いずれの方法を希望するにせよ、NFTの販売者は、NFTに関連する知的財産を譲渡するか、また、知的財産をどのように使用させ、使用させないかを決定するための明確な法的手順を踏む必要があります。
「NFTのスマートコントラクトやマーケットプレイスの利用規約に購入者が知的財産の譲渡またはライセンスを受けると記載されているからといって、必ずしも記載通りになるとは限りません」と、EY Law Ireland、Technology and Commercial LawのPartnerであるRob Haniverは述べ、次のように付言しています。
「譲渡の根拠となるスマートコントラクトにおいて権利を移転する旨が規定され、さらに、権利を実際に移転するための準拠法に基づく関連手続きが履践されていない限り、NFTの保有権を移転することはできても、NFTに関連するデジタルアセットの知的財産の保有権は、当該知的財産権の保有者から購入者に移転されることはありません」
上記のような契約が存在しない限り、NFTの保有権とは、必ずしも基礎となるコンテンツの保有権やNFTに関連する知的財産権を意味するものではありません。すなわち、NFTの保有者は、オリジナルコンテンツを複製、頒布、上演、展示または翻案することが認められていない可能性があります。
したがって、NFT発行者は、明確な知的財産戦略を策定し、何を販売の対象とするか、また、いかなる権利をNFT保有者に付与し、いかなる権利をNFT発行者、アーティストおよび二次流通市場プラットフォームに留保すべきかを決定しなければなりません。
2. 消費者保護法と電子商取引法は、NFTに対してどのように適用されるのか?
上記で概説した知的財産に関する検討事項と同様に、NFT発行者と二次流通市場運営者の双方は、適切な販売条件を設定する必要があります。このような条件設定は、双方のビジネス上の利益保護に資するものであり、保証、知的財産権、責任、準拠法および紛争解決方法に関する規定を含んでいます。
消費者がこれらの販売条件の適用対象となる場合、事業者は、適用される消費者保護法および電子商取引法を把握する必要がありますが、これらの法は国・地域によって異なります。さらに、NFTマーケットプレイスは、一定の契約条件や一定の運用管理プロセスを含めることを義務付けるといった、特別な規制の対象となる場合があります。
3. NFTに関連するデータ保護に関する法的検討事項は何か?
NFTに関する取引は個人を識別しうる情報に直接的に関係しないため、NFTの運用からはプライバシーリスクは生じないと広く一般に考えられています。例えば、NFTは通常、暗号資産(仮想通貨)を用いて購入され、ブロックチェーン(分散型台帳)上に記録され、暗号資産(仮想通貨)ウォレットに保持されます。
しかし、表面だけでなく別の階層に目を向ければ、オンライン上の識別情報とアバター、ブロックチェーンアドレス、トランザクション履歴や位置情報などの証拠をはぎ合わせることで、特定の取引が特定の個人にひも付けられ得ることが明らかです。
この点を踏まえて、企業は、事業を展開している国・地域それぞれのデータ保護法およびプライバシー法の枠組みを慎重に検討し、当該法令を遵守するとともに、適用されるデータ保護法およびプライバシー法の改正に常に注意を払う必要があると言えます。
4. NFTはマネーロンダリング防止法の対象となるか?
NFTに対する規制の在り方については、まだ検討が始まったばかりであり、規制当局がNFTの利用態様と普及度を調査している段階です。しかし、NFTの取引で利用される暗号資産(仮想通貨)が増額していることに伴い、NFTの販売がマネーロンダリングに利用されているのではないかという、極めて現実的な懸念が発生しています。
欧州では、デジタルアセット分野に対する規制が始まっています。マネーロンダリング防止に関する法令が存在しており、一定のしきい値と活用状況に応じて、規制が適用される可能性があります。
「実務上、このことは今後、NFT取引所に対し、銀行などの他の規制業種と同様に、顧客身元確認と取引報告要請といった厳格な義務が課される可能性があることを意味しています」と、ノルウェーに拠点を置くEY Nordic Blockchain & Innovation LeaderであるMagnus Jonesは説明しています。
少なくとも現時点においては、NFTを運用する企業の一部は、マネーロンダリング防止に関する責任を負う必要がないと主張できる可能性はありますが、マネーロンダリング防止策を導入する必要性については、説得力のある理由があります。
ブランドを守り、ステークホルダーの信頼を維持する必要性は、企業がマネーロンダリング防止策の導入を検討する理由の一例と言えます。いかなる企業も、自社のブランドが、たとえわずかであっても、犯罪行為と関連しているとみなされることを望んではいないはずです。
5. NFTは金融商品に該当するか?
一部の企業は、NFTの分野で成功し、NFTの運用が間接税の対象から免除されることを期待して、この問いに対する解答を求めてきました。一見すると、一部のNFTは、特に価値が上がることを期待して購入されている場合には、確かに金融商品(有価証券など)のような外観を有していると思われるかもしれません。このようなNFTの例として、二次流通市場でNFTが転売されるたびに収益の一部を発行者が受け取ることができるNFTや、他の暗号資産(仮想通貨)やデジタルアセットを借りるための担保として使用できるNFTが挙げられます。
米国証券法の観点から見ますと、1940年代に米国最高裁判所の判例によって確立されたHowey Testは、有価証券を、購入者が他者の努力に基づく利益を合理的に期待できる「投資契約」と定義しています。この定義に従うと、特にフラクショナルNFT(複数に分割され共同保有が可能なNFT)は、有価証券のような外観を有していると言えます。しかし、NFTの種類は多様であり、また、NFTが表象する資産の性質もさまざまであることから、NFTの有価証券該当性については、法の目的に照らして、各NFTの実態に基づいて個別に評価する必要があると言えます。
また、NFTを金融商品として位置付けることについては、深刻なマイナス面があります。すなわち、NFTが金融商品として位置付けられると、NFTの販売者は、規制当局が定めた厳格な情報開示とレギュレーションの遵守が求められます。このことにより、多大なコストとリソースが必要となります。