EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYパルテノンは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
要点
将来を見据えたビジョナリーな戦略はありますか? 戦略上のビジョンはありますか? パンデミック収束後、ビジネスリーダーは新たな成長の機会を捉え、競争力が強化し、自社を前進させるさまざまな機会を認識するでしょう。しかし、その機会を実現するためには、すでに定義された既存の戦略以上のもの、つまり長期的価値の創造に向けた明確な意欲を持ってパンデミック後を見据え、企業全体を再構築する決意が必要です。
むしろ、短期的な危機から抜け出す最善の方法が、長期的な計画の策定である場合もあります。
パンデミックはあらゆる企業にさまざまな影響を及ぼしました。しかし、全ての企業が同じように、あるいは同時に打撃を受けたわけではありません。
企業がコロナ禍において存続の危機にさらされ、生き残ることだけに注力せざるを得なかったセクターもあります。例えば、航空業界のCEOができたことは、旅行制限の影響を軽減することだけです。しかし、リスクを軽減するだけではなく、自社の変革を次の段階に進めたCEOも他の多くのセクターでは見られました。
このようなCEOの中でも最も先見の明をもつリーダーは、定期的な業績の精査にとどまらず、その先を見据えている傾向があります。
EYパルテノンができること
CEOやビジネスリーダーは、この変革の時代に、ステークホルダーにとっての価値を最大化するという任務を負っています。私たちは常識に疑問を投げかけ、収益性と長期的価値を向上させる戦略を構築し、実行します。
続きを読む「潜在クラス回帰分析」という手法を用いて、 EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査 対象である1,000人超のCEOの回答を分析した結果、新たな対応を積極的に取り入れ、先を見通した企業戦略を策定し直しているCEOが少数ながら存在することが明らかになりました。CEOの 13% を占めるこの「バリュービジョナリー」グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機会として捉え、大胆な成長への意欲を高めています。意外なことに、これは特定の企業が属する特定の業界に起因するものではなく、バリュービジョナリー型CEOは、各国・地域そして、各業界に存在しているのです。
残りの87%は「現実主義者」であり、新型コロナウイルス感染症収束後のビジネス環境に対応するために方向転換が必要であると認識しているものの、大胆な行動計画に十分に取り組めていないリーダーです。
回答者は、長期的価値の創造に焦点を当てた3つの側面に基づいて評価されました。CEOの短期投資と長期投資に関する意向、ステークホルダーエンゲージメント拡大戦略、そしてパンデミックについての自社の経験です。
この分析では、持続可能な成長の達成という点について優れた成果を挙げているCEOに共通する4つの属性が特定されました。
EYパルテノンができること
財務アドバイザー(FA)として、貴社の利益の観点からM&Aの組成からエグゼキューションまでを戦略的な助言によりバックアップ。FAとしての高い専門性発揮はもちろんのこと、グローバル・ネットワークと隣接領域の充実したサービスラインアップ(DDなど)を生かしてのシームレスな案件遂行をお約束します。
続きを読む調査対象の大多数のCEO(89%)は、2020年に戦略とポートフォリオの見直しを実施しており、そのほとんどがパンデミックを契機とするものでした。しかし、投資の意向、長期的価値の創造へのコミットメント、ステークホルダーへの説明責任という3つの差別化要因に基づいて分類した、新しい2つのタイプのリーダー間では、変革のための喫緊の課題に関しては意見が一致していたにもかかわらず、意欲の程度と対応のスピードには大きな差がありました。
比較的少数のバリュービジョナリーのうち、ほぼ4分の3がテクノロジーへの多額の投資を意図しており、80%以上が製品やサービスの大規模な変更を計画しています。ほぼ半数がM&Aを通じた変革に関心を持ち、買収を計画しています。また、イノベーション、顧客満足、より幅広い社会的視野を軸とする投資戦略への注目も高まっています。
2020年下半期のM&A件数は上半期の2倍以上となり、過去最高を記録しました。低金利、緩和基調が続く資本市場、手元資金が豊富なプライベートキャピタルなど、M&Aの条件は引き続き整っています。調査対象となったCEOの過半数(51%)は、今後12カ月間に買収の機会があると回答しています。M&Aの必要性はバリュービジョナリーの間でより高まっており、大多数がM&Aを変革達成の最短ルートと考えています。
世界金融危機 (GFC) 後の回復期に明らかになった通り、M&Aはより速い成長に向けて重要な役割を果たします。M&A市場は停滞しましたが、実際に投資を行って危機から抜け出した企業は、その成果を享受して明らかにより力強い業績を達成しました。バリュービジョナリーは、未来を計画する一方で、過去からも学んでいます。
持続可能な価値創造のための世界経済フォーラムの国際ビジネス評議会(WEF-IBC)の指標。あらゆるリーダーが知っておくべきことをご紹介します。
短期的な財務実績と長期的価値の創造のどちらを優先すべきかについては、1世紀以上にわたり激論が交わされてきました。最近では、短期的な財務上の圧力がもたらす課題が明らかになったことで、論争は一層激しさを増しています。
1919年、ミシガン州最高裁判所は、ヘンリー・フォードが従業員やその他ステークホルダーの利益のためではなく、株主の利益のために、フォード・モーター社を運営しなければならないという判決を下しました。この判例は、その後米国などにおける「株主至上主義」の考え方の主要な根拠として頻繁に引用されます。そして、1970年代にミルトン・フリードマンが提唱した株主優先理論に関する研究により、株主は他のステークホルダーよりも重視されるべきであるという主張が不動のものになりました。
ところがその結果、株主のための短期的な財務収益の計上と、全てのステークホルダーに対する長期的価値の創出とが、潜在的に競合することになりました。
第1に、限られた期間しか株式を保有しない投資家層の増大により、取締役会に短期的な株価を重視するよう求める圧力が生じます。第2に、四半期の収益や業績予想などの上場企業が開示した短期的な業績が依然として重視されており、短期的な業績に注目が集まる傾向があります。第3に、CEOの成果をどのように評価するかという問題があります。経営幹部の報酬が短期的な財務指標または市場指標に連動していると、四半期単位や年単位の業績重視につながります。
しかし、時代は変わりつつあります。
社会におけるビジネスの役割についての議論が進むとともに、特にネットカーボンニュートラル(温室効果化ガス排出実質ゼロ)への移行といった変革の取り組みの時間軸は、翌四半期まで、あるいは翌年までなどよりも長いことが認識されるようになりました。リーダーは、ほぼ例外なく、長期的価値の創造についてより多角的な視点を取り入れたストーリーをステークホルダーに伝える必要性を認識しています。バリュービジョナリーの 99%が、これを極めて重要または重要であると認識しています。現実主義者では、この割合は79%です。
バリュービジョナリーは、この一見不可能なことを成し遂げました。長期的なパーパスを重視することで、短期的な利益が犠牲になるとは限りません。相対的な業績や競争環境の進化を継続的に評価し、より広いビジネス環境の変化を意識することで、パンデミックの影響に、より効果的に対応しています。彼らは今、いち早く、パンデミックから抜け出そうと奮闘しています。
EYパルテノンができること
常に変革を求め、変革のための態勢を作ろうとするこのような意欲は、多くの場合、アジャイルと呼ばれます。良好な業績は、現実主義者に比べ、より包括的なビジネスの捉え方をしているからです。バリュービジョナリーは、顧客、サプライヤー、エコシステムのパートナーとより深い協力体制を築いています。
包括的にステークホルダーの意向を取り入れ、長期的な価値を築くことに関しては、その重要性を認識しながらも現実主義者は大きく遅れを取っています。(属性その4参照)。
気候問題への対応の緊急性を認識し、ネットカーボンニュートラルを達成する必要性については多くのCEOの間で意見が一致しています。パンデミックは短期的な危機をもたらしましたが、気候変動等の問題は長期的にはより大きな脅威になるだろうという認識が高まっています。
ここ最近、多くのビジネスリーダーはカーボンニュートラルに関して厳格な目標を設定するよう求めるステークホルダーからの圧力に直面しています。多くの 投資家 は、環境・社会・ガバナンス(ESG)を、投資先を選択する際の重要なポイントだと考えています。従業員 も企業リーダーに対し、より意欲的な目標を設定するよう、さらに強く求めています。さらに顧客 が、環境問題などに関して自身と同じ見解を持つ企業から購入すると考えていることは注目すべきことでしょう。
大半の国が、2050年までにネットカーボンニュートラルを達成する目標期日を宣言しています。フィンランド(2035年まで2 )やオーストリア(2040年まで3)など、より積極的な目標を設定した国もありますが、目標が達成されるのは今世紀の中頃以降になるだろうという見解が一般的です。
より積極的な目標を設定しているCEOも多くいます。彼らは政府に先駆けて、今世紀半ばの目標期日の前に、ネットカーボンニュートラルを達成したいと考えています。
企業はまた、自社が社会にもたらす価値を持続可能な長期的価値の創造と結び付けて設定しようとしています。今日の社会において、働く場所であり、製品・サービスの購入先であり、また投資先となる企業は、より大きな責任を果たすことが求められます。パンデミックにより、企業がどのように行動すべきかに注目が集まるようになりました。
資本と人材は、株主のためだけに注力する企業から、株主に限らず、従業員、消費者、社会など幅広いステークホルダーに対し、長期的価値をもたらす企業へと移っていくでしょう。
この1年は、アジャイル型企業が状況の変化に応じて迅速に方向転換できることが明らかになりました。気候変動への対応においてステークホルダーの要求が一段と高まる中、優れたCEOは強力な支持者になり得ます。スピード感をもって行動し、多くの関係者との協力体制を強化させていくでしょう。
ビジネス界と社会がパンデミック後の世界に目を向ける中、CEOは全てのステークホルダーから負託を受け、長期的に持続可能な成長に向かって自社を前進させる必要があります。
これは、利益を重視しないというわけではなく、より広く定義された価値に注目するということです。
従業員、顧客、規制当局、政府、より広範な社会、そして株主からの新たな要求が相次ぐ中、CEOは自社とその業界のトランスフォーメーションを理解し、業務をより弾力的に、アジャイル型にし、デジタル化を進めて対応する必要があります。
バリュービジョナリー型のCEOは、この変化を生かす力となる、適切な取締役レベルの協力パートナーの必要性を理解しています。企業は、長期的価値の戦略を実行するにあたって、取締役会メンバーのスキルプロファイル変更も視野に入れていかなければならないでしょう。
つまるところ、CEOへの多様化する要求が尽きることはなく、むしろ強まる一方でしょう。そのような要求を先読みし、それに沿って企業目標を都度創り変えてゆくことが、課題の軽減や機会の最大化につながります。
EYグローバル・CEO・キャピタル・コンフィデンス調査では、成果を挙げている経営幹部は、長期的価値への明確な意欲を持って、変革を加速させ、将来に向けて投資を行っていることが明らかになりました。彼らは、成長アジェンダの一環として、そして、企業のパーパス策定において、ステークホルダーとの協力関係を深めています。