EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
本記事は、主に新規上場を目指すスタートアップ向けに、2020年12月25日に公表された第二次制度改正事項(以下「第二次改正」)の内容について、解説します。
※第一次制度改正事項の内容は、前回記事をご覧ください。
東証の新市場区分に関わる現在の動向 ― 上場を目指すスタートアップが検討すべきポイントとは?
新市場の名称が確定
「新市場区分の概要等について」の公表以降、新市場であるプライム、スタンダード、グロースの3市場は仮称となっていましたが、第二次改正で名称が確定しました。移行日は2022年4月4日となります。
流通株式の定義が見直されました。具体的には、流通株式の範囲外となる株式として、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式が追加されました。また、東証が流通株式に含めることが適当でないと認める株式も流通株式から除くものとし、実態判断も追加されることとなりました。
本改正では、他社による10%未満の株式保有であっても流通株式から外れることとなった点に留意が必要です。影響が大きい事例として、オーナー社長のスタートアップが挙げられます。オーナー社長が、ベンチャーキャピタル(以下「VC」)からの出資だけではなく、企業(上場・非上場問わず)との資本業務提携を行う場合には、当該株式は流通株式に含まれないものとして、資本政策を検討する必要があります。この場合、上場準備の段階で、オーナーの保有比率を下げる、VCからの出資比率を上げる、またIPO時の公募・売出数を大きくするなどして、流通株式比率(プライムは35%以上、スタンダード・グロースは25%以上)などの形式基準を満たす必要があります。
また、東証が流通株式に含めることが適当でないと認める株式には、上場基準の潜脱が行われたと認める株式などを含めることを想定しています。例えば、オーナーの保有比率を下げたい(流通株式比率を上げたい)ために、社外の知人に株式を譲渡しているが、実態としてはオーナーが議決権を行使している名義株などが該当します。改正前においても、上記のような例は流通株式に含まれないものと解釈されますが、本改正によって明示されました。
見直し後の流通株式の等式は以下となります。
出所:(株)東京証券取引所「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」(2020年12月25日、https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/20201225-01.html)を基にEY作成
第二次改正は、2020年12月25日に公表され、2021年2月26日までパブリック・コメントを受け付けたのち、2022年4月4日から実施される予定です(なお、新市場区分の選択手続は、2021年9月1日から実施される予定)。
東証は、最後の改正として、第三次制度改正事項(以下「第三次改正」)を予定し、2021年春以降の公表としています。第三次改正は、コーポレートガバナンス・コードの改訂などを行い、プライム市場において、他の市場区分と比較して一段高いガバナンスを求めることとしています。
(参考)市場区分の見直しスケジュール
出所:(株)東京証券取引所「新市場区分の概要等について」(2020年2月21日、https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20200221-01.html)を基にEY作成
【共同執筆者】
衛藤 和也
(EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター マネージャー)
『会計士 × 上場審査 × スタートアップ支援。
この経験と人脈を活かして、スタートアップの持続的な成長をサポートします』
多様な業種の法定監査・任意監査やIPO支援業務を担当後、日本取引所自主規制法人(日本取引所グループ)の上場審査部に出向し、上場審査業務に従事。帰任後は「企業成長サポートセンター」に所属し、会計監査、IPO支援等の業務を担う。
著書:「IPOをやさしく解説!上場準備ガイドブック」
※所属・役職は記事公開当時のものです。
東証は、2022年4月を目標に新市場区分への移行を行い、現在5つの市場区分から3つへ再編されます。第二次改正の概要は、「プライム、スタンダード、グロースの3市場で名称が確定」「流通株式の定義の見直し(全市場共通)」の2点です。
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東証の新市場区分に関わる現在の動向 ― 上場を目指すスタートアップが検討すべきポイントとは?
東証は、2022年4月を目標に新市場区分への移行を行い、現在5つの市場区分から3つへ再編されます。第一次改正の概要は、「マザーズから市場第一部への昇格時に適用されていた緩和要件の廃止」「市場第一部への赤字上場の緩和」「マザーズにおける『事業計画及び成長可能性に関する事項』の継続的な開示」の3点です。