EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本稿の執筆者
EY韓英会計法人 税務本部 韓国公認会計士 税理士 パートナー 朴 基亨
2005年1月にEY Korea監査本部の日本事業部に入社して2年間監査業務を行った後、2007年から税務本部に勤務し、日系企業に移転価格を含んだ国際租税、税務調整、税務診断、税務調査対応業務など、多様な税務サービスを提供している。2017年7月から1年2カ月間、新日本税理士法人に派遣勤務。
要点
半導体産業に関するグローバル覇権争いの中、各国政府が先を争うように支援対策を発表する中で、韓国政府も半導体投資に対する税額控除の特典を大幅に増やし、世界最高水準の税制支援が可能になりました。また、従来の半導体、二次電子、ワクチンの3大分野に限られていた国家戦略技術にディスプレイ、水素、未来型移動手段などを追加し、その技術に対するR&D費用及び投資に対する税制支援を拡大しています。
国家戦略技術とは、韓国政府が国家安全保障レベルの戦略的重要性を認め、国民経済全般に重大な影響を及ぼす技術と判断して、租税特例制限法で定めた技術を意味します。2023年12月現在、半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、未来型移動手段、バイオ医薬品の7分野62技術が国家戦略技術として選定されています。
沿革 |
国家戦略技術分野 |
---|---|
2022年2月 |
3大分野(半導体、二次電池、ワクチン) |
2023年2月 |
4大分野(半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ) |
2023年6月 |
6大分野(半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、未来型移動手段) |
2023年8月 |
7大分野(半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、未来型移動手段、バイオ医薬品) |
国家戦略技術として選定された技術に関する税制上のインセンティブは、該当技術に関する研究開発費用に関するインセンティブ(R&D研究開発費に関する税額控除)と設備投資に関するインセンティブ(事業化施設への投資に関する税額控除)の大きく2つに分けられます。また、企業の設備投資の早期執行を誘導するために2023年に限り臨時投資税額控除を一時的に導入し、2023年の投資にはさらに高い控除率を適用しています。
R&D研究開発費に関する税額控除率は、法人の規模に応じて差をつけて適用され、大企業よりは中堅企業に、中堅企業よりは中小企業により多くの特典を与えています。
また、大企業に対しては、国家戦略技術に関するR&D研究開発費に関する税額控除と一般R&D研究開発費を比較してみると、下記のように国家戦略技術に関する研究開発費にさらに高いインセンティブを与えています。
対象 |
新成長、研究技術 |
一般 |
---|---|---|
大企業 |
R&D研究開発費×{30%+このうち小さい金額(10%、売上高に対する支出の比率×3)} |
R&D研究開発費×このうち小さい金額(2%、売上高に対する研究開発費の比率×0.5) |
上記1.と同様に事業化施設投資に関する税額控除率も法人の規模によって差をつけて適用されており、例えば大企業に対する税額控除率の差は次のとおりです。
区分 |
国家戦略技術 |
一般 |
---|---|---|
大企業 2024年以後投資 |
事業用固定資産投資額×15%+追加控除4% |
事業用固定資産投資額×1% |
2023年の投資額に関しては臨時投資税額控除を一時的に導入し、より高い税額控除率を適用して投資に対する早期執行を誘導しています。
区分 |
国家戦略技術 |
一般 |
---|---|---|
大企業 2023年投資(1年間) |
事業用固定資産投資額×15%+追加控除10% |
事業用固定資産投資額×3% |
ただし、注意すべき点は、上記の税制インセンティブの適用を受けるためには、企業が研究・開発する技術が国家戦略技術(7分野62技術)に該当するか否かについて事前承認を受けなければならず、企業の内部システムを通じて切出経理(国家戦略技術に関する研究開発費用と一般研究開発費用、その他の費用)が可能でなければなりません。現在、国家戦略技術に関する事前審査は韓国技術産業振興院(KIAT)が担当しています。
ご参考までに、韓国政府は2021年までに企業のR&D研究開発費と施設への投資に関して「一般投資」と「新成長・源泉技術投資」の2段階に分け差をつけて支援してきましたが、半導体などを巡るグローバル技術覇権とサプライチェーン競争が深化すると、2022年から「国家戦略技術」を新設して3段階で運用しています。税制上のインセンティブは、国家戦略技術、新成長・源泉技術、一般技術の順に高い税額控除率が適用されており、2023年12月現在、新成長・源泉技術は、未来型自動車、知能情報、次世代ソフトウェア、カーボンニュートラル技術など、13分野264技術が指定されています。
事前審査制度を通じて認証を受けた国家戦略技術に選定された技術費用のR&D税額控除、事業施設投資に関する税額控除の拡大と臨時投資税額控除の一時的特典を提供することにより、さらに強化されたインセンティブを提供します。インセンティブの適用対象は徐々に拡大しています。
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