石油・ガス市場は、出口の見えない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応に追われた末、世界的な需給バランスや資金配分の再構築の兆しとともに2022年第1四半期の幕を閉じました。
世界最大の天然ガス輸出国、かつ世界第2位の原油輸出国に対する制裁が強化され、過去に経験したことのない水準にまで原油価格が上昇しています。ロシア産原油の禁輸を正式に公表した国は少ないものの、国際エネルギー機関(IEA)は日量250万バレルの供給が途絶えると予測し、また潜在的な風評被害がロシア産原油の市場性に影響を与えてきました。
ブレント原油とウラル原油のスプレッドは、時折停滞はしたものの1バレル当たり3米ドルから30米ドルと広がりました。フォワードカーブは、価格の短期的推移や、市場の行く末について有益なヒントを与えてくれます。2023年12月におけるLNG(プラッツJKM)の先物価格は、2022年2月上旬比では1.5米ドル高値で取引されることを示していますが、2022年4⽉⽐では10⽶ドル以上の⾼値で取引されることを⽰しています。
原油価格も同様の推移を示しています。WTI原油の、2022年4月と2024年1月におけるスプレッドは26米ドルとなりましたが、2021年末時点の同時期におけるスプレッドは10米ドルでした。ロシアへの制裁法案の可決に伴う市場への影響は時がたつにつれ徐々に分かると思いますが、1つ確信できることは通常通りのビジネスに戻ることは想定されていないということです。
2022年第2四半期のテーマは「再生」です。ロシアの石油・ガス供給の損失または潜在的損失により、経済制裁や風評被害のリスクの観点から生産者・精製業者やトレーダーは商流を再検討せざるを得ない状況です。国、企業や消費者はこの状況に対応するための方策を模索しており、その結果、将来のグローバルエネルギー市場に影響を与え得るかもしれません。
しばらくの間は原油・LNGの価格は高い水準が続く見込みです。ロシア産原油の消費国は経済制裁を懸念し買い控えが生じており、OPEC加盟国が失われたロシア産原油の供給を補填するための増産をしようとする兆候はほとんどありません。2021年末における余剰生産能力は日量370万バレルであり、これは2020年1月における数量をやや上回るものです。経済制裁下におけるベネズエラとイランの生産能力(最大⽇量約300万バレル)が差分を埋めることはできても、政治的・経済的な障壁は依然残ります。今日の価格においては、米国のシェール生産は魅力的ではありますが、すぐに増産できるのは日量100万バレルから200万バレルの間になります。ウクライナ侵攻前に既にLNG施設は拡張しており、新たなLNG供給源がすぐに見つかる見込みはありません。