オーストラリア四半期経済アップデート(2021年第3四半期):デルタ株によるディスラプションからの回復

オーストラリア四半期経済アップデート(2021年第3四半期):デルタ株によるディスラプションからの回復


第3四半期の経済統計(2021年7~9月)で、オーストラリア経済は驚くことに予想を上回りました。


要点

  • 2021年12月1日に発表された2021年7~9月期の経済統計によると、オーストラリア経済の縮小は予想よりも小幅にとどまった。
  • 家計と企業は資金を蓄え、消費の準備ができており、政府の支援は適切な役割を果たしている。今回発表されたGDPデータは、オーストラリアの景気回復が持続することを確信させるものである。


EY Oceania Chief Economistより

オーストラリアの経済見通しは驚くことに、またしても予想を上回りました。家計は貯蓄を維持し、企業は回復力を示し、公共部門が力を発揮して、新型コロナウイルス感染症の変異株である「デルタ株」がもたらしたディスラプションを和らげました。結果として、12月1日に発表された7~9月期の経済統計では経済の縮小は予想よりも小幅にとどまりました。

次に発表される10~12月四半期では、たった2%成長するだけで、オーストラリア経済がデルタ株の拡大以前の水準に戻ることができるという事実に、力強さが表れています。これは、同じく新型コロナウイルス感染症の変異株である「オミクロン株」を前にしても達成可能です。

前回の経験からすると今回はさほど心配はなかったかもしれません。しかしながら、政府は2020年に行われた支援策を迅速に再実施し、経済活動を支えるために支出を行いました。短周期で測定される今回の指標は、規制が緩和されたことで経済が活気を取り戻したことを示しています。

こうした事実は、オーストラリアの経済回復の道筋に自信を与えてくれます。家計と企業は資金を蓄え消費する準備ができており、政府の支援は適切な役割を果たしました。

当然のことながら、今回のデルタ株の影響は州によって分かれました。ビクトリア州は、ニューサウスウェールズ州よりもはるかに優れた回復力を示しています。ビクトリア州では、四半期の80%の期間がロックダウン下にあったにもかかわらず、最終需要はパンデミック前の水準をわずかに下回るまで回復しました。一方で、ニューサウスウェールズ州は、四半期の全期間にわたってロックダウン下にあり、その経済規模はパンデミック前に比べて3.4%減少しました。しかし、相関関係が因果関係であるわけではなく、ロックダウンの期間が最終的な結果の違いを完全に説明するものではありません。実際、民間消費と投資は、ビクトリア州の方がニューサウスウェールズ州よりも好調でした。

ニューサウスウェールズ州における7~9月四半期での消費の落ち込みは、ビクトリア州の約2倍で、民間投資はビクトリア州で6%増加したのに対し、ニューサウスウェールズ州では7%減少しました。ビクトリア州の非住宅建設の増加は、再生可能エネルギープロジェクトへの投資に支えられたもので、機械・設備への支出の増加は、主にトラックや農業機械への支出を反映したものです。

当初は不安定なスタートを切ったものの、オーストラリアでは7~9月四半期の期間で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の50%以上が実施されました。このワクチン接種は、ロックダウンからの脱却を確信させるとともに、公共消費を3.6%増加させるという二重の影響を経済に与えました。公共支出が経済活動を支えたことは経済統計全体にはっきりと表れています。公共部門による賃金・給与の支払いは政策支援と相まって、家計収入と企業収益の増加を支えました。

対外的には、資源や農産物などの輸出が好調で、消費者向けの輸入が減少したことも景気を押し上げる要因となりました。

 

オーストラリアの家計は、以前のロックダウンと同じようなパターンで推移しました。政府の支援により収入が増加したものの、外出によるサービス利用ができないため、オーストラリア国民は住宅リフォームへの支出や貯蓄の拡大を優先し、今回は買い物などによる支出は後回しとなりました。家計の可処分所得は、政府からの支援金が2.6%寄与して4.6%増加し、貯蓄率はほぼ倍増して19.8%となり、2020年のピーク時に近づきました。

 

同様に、7~9月四半期の基礎的な民間投資は減少したものの、企業の利益は増加しました。これにより、残りの会計年度で行われる設備投資計画を増額させることも可能になります。

 

全体として、今回のGDPデータは、オミクロン株を抑制するためにさらなる公共衛生対策が必要であるとしても、オーストラリアの景気回復が持続することを確信させるものです。


サマリー

第3四半期の経済統計(7~9月)で、オーストラリア経済は驚くことに予想を上回りました。家計は貯蓄を維持し、企業は回復力を示し、公共部門は力を発揮して、デルタ株がもたらしたディスラプションを緩和しています。12月1日発表の経済統計では、経済の縮小は予想よりも小幅にとどまりました。


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