消費者ニーズ予測の重要性―もし未来の消費者に会えるとしたら、何を尋ねますか?

消費者ニーズ予測の重要性―もし未来の消費者に会えるとしたら、何を尋ねますか?


将来の消費者ニーズを想像することは重要ですが、実行するのは大変難しいことです。生成AIを使って未来を予測することで、その実現に一歩近づくことができます。


要点

  • 今日の消費者ニーズだけを優先していると、明日は取り残されるリスクがある。
  • 将来のシナリオを想像するには、 起こり得る市場の影響を考慮して、考えを飛躍させる必要がある。
  • 生成AIのようなツールは、将来のペルソナやシナリオを作成し、それらを調査しビジネスにとって望ましい未来を形作るのに役立つ。 

私たちが現在、目にしている技術、人口統計学、社会、環境といった今日の変化をけん引しているファクターは、最終的には、異なる明日をもたらすでしょう。例えば、人工知能(AI)の進化と導入は、生産性や働き方を変革するだけでなく、消費者のライフスタイルや選択にも深く持続的な影響を与えます。しかし、現在の市場の変化に苦闘している消費財企業の多くは、5年先や10年先のことではなく、目先のニーズに力を注いでいます。しかし、このまま未来への計画を立てない場合、取り残されるリスクがあります。

変化のスピードが転換点に達すると、消費者の習慣が変わる可能性があります。これはスマートフォン、インターネット、そして最近ではCOVID-19のパンデミックの影響により、消費者の購買方法や購買した商品・サービスが変化したことからもわかります。これらの行動はすぐに新たな日常として受け入れられるようになります。変化を予測し、迅速に適応する企業は成功します。

しかし、未来がどうなるかわからない中で、未来の消費者のためにビジネスを構築するにはどうすればよいでしょうか?デザインしたい消費者の未来をどのように選べばよいのでしょうか?

多くの場合、企業は消費者の動向を追って、将来への影響を検討します。また、消費者の行動を追跡して、消費者がどのように変化しているかを理解します。しかし、いま進んでいる方向を理解するだけでは、将来に向けてビジネスを構築するには十分ではありません。それよりも、企業はストーリーテリングやSFの力を利用して、想像力をかき立て、未来の世界のシナリオを創造していく必要があるでしょう。  

 

未来のシナリオを構築する

EYでは、未来から現在を振り返るアプローチが、今後の影響を理解するツールとして定着しています。EY Future Consumer.Nowプログラムでは、さまざまな未来のシナリオを特定し、消費者タイプ(どのように買い物をするか、何を買うか、テクノロジーからどのように影響を受けるか、典型的な一日の行動)の全体像を再現しています。

これはSFのように聞こえるかもしれません。その通りです…しかし、それは問題ではありません。今日、そして明日の多くのイノベーションは、このジャンルで長い間予想されてきました。AI、仮想現実、コネクテッドデバイスはすべて、現実になるずっと前から想像されていたものです。SFは、未来学者が予測に用いる最初のリソースの1つであり、消費者に向き合う企業が、将来のトレンドを予測するためにSF作家を利用することが増えてきています。

将来のシナリオを想像することで、より良い事業計画や、より強固な戦略を可能にする共通項や、ディスラプティブな異常値を把握することができます。私たちのシナリオでは、持続可能性、所有すること、働き方、データ、AIなど、検討すべきテーマが特定されました。また、支配的な市場プラットフォームの解体や、消費者のライフスタイルへのAI統合など、個々のシナリオから明確な洞察が得られました。あるシナリオでは、2020年に世界的なパンデミックが起こり、ウェルネスと市民的自由に関する消費者の認識が根本的に変わると予測していました。 

 

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AIで未来の消費者を想像する

未来の消費者のペルソナを作ることと、彼らと対話して、その見解や住む世界をより深く理解することは、全く別のことです。これは不可能な挑戦のように感じるかもしれません。しかし、未来の消費者の希望、願望、行動、期待を反映するように大規模言語モデル(LLM)をトレーニングすることで、3Dアニメーションと自然言語処理を使用して顔と声を与え、ペルソナに命を吹き込んでいます。

 

未来の消費者に会う

生成AI を搭載したペルソナであるサムとワンイーが、それぞれが住む未来の世界の実体験について語ります。


未来の消費者、サムの一日

サムは「どこでもホーム」と呼ばれる未来世界のシナリオの主人公です。この世界では、消費者は所有物を意識的に制限し、流動的でオンデマンドなライフスタイルを送るためのサービスに加入します。


未来の消費者、ワンイーの一日

ワンイーは「すべてを体験」と呼ばれる未来世界のシナリオの主人公です—この世界では、没入型ショッピングが消費者にとって究極のソーシャルアクティビティです。


未来の消費者と対話する

サムとワンイーは、それぞれが住んでいる未来の世界のシナリオに基づいた、異なる視点を持つ人物です。2人の実体験を把握することは、企業が将来のシナリオや消費者行動に向けてビジネスを形作るのに役立ちます。

以下は、私たちが2人と交わした会話でのそれぞれの返答です。



Sam face
サムは、 彼女がそれなしでは生きていけないテクノロジーについて語ります

「AIアシスタントなしでは生きていけません。どこに行っても私のニーズを満たしてくれる柔軟なサブスクリプション・サービスを通して、AIアシスタントは私が生活を整え、効率的に管理するのを助けてくれます。

私は旅行中にテクノロジーから離れることを楽しんでいますが、完全にプラグを抜くのは難しいです。私がやっていることの多くはテクノロジーに依存しており、テクノロジーから少し離れたいと思い使用を控えている時でも、結局テクノロジーの便利さを思い知らされます!」




Wanyi face
ワンイーは、ショッピングと常にトレンドを意識していることへの愛について語ります

「トレンドを追いかけ、情報を得るために多くのリサーチを行うので、自分のスタイルに合ったアイテムだけでなく、お得な情報がどこにあるかもわかっています。さまざまなブランドを探索したり、時にはカスタムメイドのファッションアイテムを入手したりするのも好きです。

食料品の買い物は、パーソナライゼーションの助けを借りてはるかに効率的になりました。食事の好みに基づいて注文をカスタマイズし、食料品を自宅まで届けてもらいます。ソーシャルメディア、AIによるお薦め、オンラインや実店舗でのショッピングを通じて、新製品を発見しています。



それぞれの世界で成功するためには何が必要でしょうか?

サムとワンイーは、異なる未来のシナリオに生きており、それぞれの世界に対する異なる視点を提供しています。しかし、どちらの場合も、直面している問題と利用するテクノロジーには大きな類似点があります。二人とも生活の大部分をAIに大きく依存しており、どのような未来を描こうとも、AIと自動化が生活に密接に関わり、消費者のライフスタイルを形成し、より良いビジネスを推進する世界に到達することを示唆しています。しかし、違いもあり、それぞれの世界で成功するために何が必要かを探ることは、必要な製品、サービス、ビジネスモデルを特定するのに役立つでしょう。
 

 

サムの世界で成功するには

サムは、人々が意識的に所有物を制限し、代わりにオンデマンドのライフスタイルを送るのに役立つサービスに加入する世界に住んでいます。アセットライトな消費者は、もはや所有物にとらわれず、好きな場所で好きなように生活し働く自由を享受しています。その日常生活は国際的であり、グローバルなソーシャルネットワークとつながるためにバーチャルに活動します。地理的なコミュニティはあまり意味がありませんが、新しい場所や文化は新鮮な素晴らしい体験を提供します。彼らはどこにいても「くつろげる」ことを期待し、常に新しいスキルを学び、新しい経験をすることに熱心です。場所の移動時間が非常に生産的なものになります。人々は複数の職業や人間関係を持っており、AIがそれらを管理するのに役立ちます。企業は、消費者の信頼を得るために、消費者だけでなく消費者のAIとも関わる必要があります。ブランドが消費者の信頼を勝ち取るには、需要主導のサプライチェーンと流通エコシステムを活用して、消費者がどこに行こうとも「追随」し、消費者の即時のニーズや状況に合った製品とサービスを提供しなければなりません。

ワンイーの世界で成功するには

ワンイーは、人々が楽しく、斬新で、便利な体験をすることに熱心な世界に住んでいるため、小売業界はショッピングとレジャーを融合させるように変化しています。没入型ショッピングは、日常生活で最もエキサイティングで充実感を得られる体験の1つであり、平凡な日常の買い物はAIにより、素早く、便利に行われます。消費者は、魅力的なブランド体験を提供する小売のイノベーションをいち早く受け入れます。ショッピングは社会的な活動であり、店舗は、消費者が単に商品を買うだけの場所ではなく、それ以上の楽しみを提供する多機能スペースとなります。消費者は生活の大部分をAIが管理することに信頼を寄せており、特に健康を維持するためには、AIが個人に合わせた食事や運動に頼っています。利便性とエクスペリエンスの概念が再定義され、企業は絶え間ない革新を迫られています。「十分」な製品は十分ではなく、消費者は共創を通してブランドが革新を生み出すのを手助けし、生み出された価値を得ます。ソーシャルスコアリングは、消費者の選択や消費者が関わるブランドに影響を与え、高いブランドスコアは企業が事業を行う上でのチャンスや手段を与えます。

ブランドが成功するには、絶えず進化する消費者の需要を予測し、消費者を喜ばせ、楽しませる新しい方法を見つけることが考えられます。新しいテクノロジーは、消費者の生活のあらゆる側面にブランド体験を埋め込んでいます。VR からローカルイベントまで、考えられるすべてのタッチポイントで、一貫した、つながりのある、魅力的な体験ができます。すべてがソーシャル化され、消費者はネットワーク全体からのシームレスな選択、お薦め、フィードバックを受け取り、AIが日常的な買い物を引き受けることで、消費者は貴重な時間を有効に使い自分たちの望む生活を実現できます。

ワンイーの世界で成功するためには、企業は次の方法を検討する必要があります。

  • デジタル資産と物的資産を連携させ、チャネル間のシームレスで一貫性のある移行を確保する。店舗は、販売するブランドの神殿になる。
  • 運用モデルを転換し、消費者が自ら楽しみながら試して創造できるベースライン・デザインを提供する(単に物理的なブランドや最終製品を小売を通じて提供するのではなく)。
  • ブランド体験を楽しく役立つものにするサービス、アドバイス、提供の質を高めることで、競争で優位に立つ。
  • ブランドシチズンシップのニーズを満たすために規制当局と目的を一致させ、同時に消費者からの不利な評価によるスコア低下を防ぐために高いサービスレベルを提供する。
  • ブランドが消費者を定義するのではなく、消費者にブランドを定義させる。 

 

どのような未来の消費者のためにデザインしますか?

企業が明日のためにケーパビリティを構築する際、その未来がどのようなものかを理解する必要性が、かつてないほど高まっています。今日のトレンドが長期的に意味するものを理解することは、戦略を立てるうえで役立ちます。今日の消費者がどのように進化しているかを探り、どこに向かっているのかを把握することに役立ちます。明日がどのようなものになるのか、誰がそこに住んでいるのか、人々の習慣、行動、ニーズがどのようなものになるのかを想像することによって初めて、企業は自社が繁栄するための具体的な立ち位置を定め、未来に命を吹き込むことができるのです。

長期的なトレンドがもたらす影響を探るために未来のシナリオを用いることで、企業は、自社の価値提案をどのように進化させる必要があるのか、事業環境がどのようになるのかを特定することができます。最も重要なことは、複数のシナリオに対して、自社の事業を将来的に保証するケーパビリティを特定することで、さまざまな未来に向けた設計を行うことができます。このプロセスにより、企業は次のことが可能になります。

  • 企業が将来どのように変化する必要があるのかを特定する
  • 現在の商品を検証し再評価する
  • 成功するために何を構築する必要があるかを探る
  • 変革のためのロードマップを作成する

 

未来の世界のシナリオを探る


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サマリー

今日のトレンドや行動を追跡するだけでは、企業がビジネスを将来にわたって保証しようとするには十分ではありません。EY Future Consumer.Nowプログラムでは、明確な未来の世界シナリオを策定しました。生成AIなどの技術を使って、未来の世界に生きる消費者と対話することで、想像上の未来を実感することができます。EYは没入型ストーリーテリングの力を活用し、未来の消費者が必要としているものを想像するサポートをいたします。未来の予測をすることは難しいかもしれませんが、今日のテクノロジーを駆使して、未来が自社にとって何を意味するのか、また、それに対応するためにどのように変革すべきかを探ることはできます。



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