モビリティ(海外赴任)コラム:円安で海外赴任者の給与に影響は?

円安が急速に進み24年ぶりの1米ドル140円台となっています。

皆さんは為替差損益という言葉をご存知でしょうか。外貨預金をしている方であれば、馴染みはあると思いますが、例えば1米ドル100円の時に1,000米ドルを購入して預金していました。この米ドル預金を1米ドル140円の時に円転するとどうなるでしょうか。40円✕1,000米ドルで4万円分の為替差益がでることになります。これは雑所得として課税されることになります。雑所得は所得税の区分の中では一番恩典がなく、最高税率の方であれば55.945%(半分以上が税金)で課税されることになります。

では、海外赴任者の場合はどのように影響するでしょうか。過去3年間(2019年から2021年)の銀行公表レートの平均は1米ドル108.55円でした。例えば毎月の海外払い給与から積み上げた外貨残高が3年間で10万米ドルあった方が、日本帰国後に一気に送金して1ドル144.81円の時に円に交換した場合にはいくらの課税が発生するでしょうか。

10万米ドル✕108.55円=1,085万円

10万米ドル✕144.81円=1,448万円

差額の363万円が雑所得として課税されることになり、これが最高税率で課税される場合には約203万円もの税金が発生することになります。

外貨建て給与の取得時のレート計算は、本来はその都度スポットレートで計算することが原則ですが、残ったお金をスポットレートごとで管理することは難しく、実務上は赴任期間の総平均によるレートで換算するのが精いっぱいなのではないでしょうか。

なお、税務署に報告しなくてもバレないと思われがちですが、税務署は海外送金には目を光らせています。海外から100万円超の送金があると、金融機関は国外送金調書を税務署長に提出する必要があります。また、2017年より共通報告基準(Common Reporting Standard)が開始され、非居住者の金融口座の情報がOECD加盟国の間で自動交換されるなど、海外資産の把握が着々と進んでいるので注意が必要となります。


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