ドイツ、立法手続き中の法改正、および重要な連邦財務省通達他

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ドイツ JBS Newsletter - 2022年7月

以下のドイツ最新情報についてご紹介します。

I. 法改正

  1. 2022年中に成立した法改正の概要一覧
  2. 立法手続き中の法改正の概要一覧

II. 法人税

所得免除方式が適用となる場合の「永久欠損金」の控除に関する欧州司法裁判所法務官の最終見解

連邦財政裁判所は2019年11月6日付決定を通じ、欧州司法裁判所に対して、所得免除方式が適用されるEU域内の恒久的施設で生じた「永久欠損金」の国内本店側での控除に関連したいくつかの疑問点について先行判決を求めていました。欧州司法裁判所法務官は、2022年3月10日に公表された最終見解の中で、本店側での損失控除は認められないとの見解を示しました。所得免除方式が適用されるケースにおいては、永久欠損金の消滅は設立の自由の原則に抵触しないというのがその理由です。

暗号通貨に関する連邦財務省通達

連邦財務省は、2022年5月10日付の暗号通貨の収益税上の取扱いに関する連邦財務省通達を通じて、仮想通貨およびその他のトークンの課税に関して連邦各州と調整した見解を公表しました。暗号資産の領域において連邦レベルで統一的な税務当局の見解が示されることで、この分野での法的不確実性が減少することが期待されます。

自己資本の強化に関するEUイニシアチブ

EU委員会は、2022年5月11日に、他人資本による資金調達に対する既存の税務上の優遇措置を自己資本による資金調達の取扱いと平準化することを目的とするEU指令案「DEBRA(dept-equity bias reduction allowance)」を提出しました。このDEBRAイニシアチブは、2021年に公表された企業課税に対するEUストラテジーの一部です。

ルーリング手数料の損金不算入

連邦財政裁判所は2021年12月8日付の判決において、法人税法第10条第2号に列挙される税金に関するルーリング手数料については、損金算入が認められないとする税務当局の見解を支持しました。したがって、法人による法人税および営業税に関するルーリングに係る手数料は損金算入が否認されることになります。

III. 配当源泉税

ソフトウエアの委託開発に際しての源泉義務に関する連邦財務省通達草案

連邦財務省は、ソフトウエアの委託開発に対する報酬の源泉税上の取扱いに関する連邦財務省通達草案の中でその見解を示しました。草案は、2021年中に行われた著作権上のソフトウエア定義の改正後、その公表が待たれていたもので、ソフトウエアのプログラミングを国外業者に委託するすべての企業が対象となります。

非居住者間でのライセンス提供に際しての源泉義務: 簡便規定の延長および中長期的な動向

ドイツ国内の公的機関で登録された「権利」(特許権、商標権、意匠権等の知的財産権、ソフトウエア、その他の権利)の期間制限のある供与に対する報酬は、非居住者間でのライセンス供与の場合も制限納税義務の対象となります(いわゆる「登録事案」)。したがって、該当するライセンスのライセンシー(債務者)は、ドイツでの源泉税申告納付義務を負うことになりますが、実質的に争いの余地のない租税条約適用のケースにおいては、簡便規定が適用されます。連邦財務省は、2022年6月29日付通達により、直近の通達により2022年6月30日までとされていた簡便規定の適用期限を12カ月延長し、2023年6月30日までに免除申請書を提出することを条件に、2022年7月1日から2023年6月30日の間に支払われるライセンス料についても簡便規定が適用されるとしています。

また、税務当局による登録事案の処理に係る中期的な対応についても連邦財務省の方向性が示されています。長期的に見て税制改正が実現するかどうかは現時点での判断が難しいところです。

IV. VAT

多目的バウチャー(Gutschein)に関する欧州司法裁判所判決

多目的バウチャーの場合、事業者によるバウチャー発行自体はVAT対象となる取引には該当せず、バウチャーが引き換えられ、役務が提供された時点で初めて売上VATが発生することになります。欧州司法裁判所は、VAT上のバウチャーは、平均的な消費者が、有効期限切れのために、提供されるすべての役務を利用できない場合であっても、多目的バウチャーに区分されるという判決を下しました。

EU域内供給取引に際しての免税要件の緩和

連邦財務省は、2022年5月20日付通達によりVAT適用通達を改定し、EU域内免税供給の要件となるEUセールスリストの提出にかかるこれまでの厳格な要件を緩和しています。改定内容は2020年1月1日以降履行されたすべてのEU域内供給取引に適用されます。

分割払いに際しての売上VATの発生時点

事業者は、原則的に、役務を提供した時点で当該役務にかかる売上VATを納付しなければなりませんが、連邦財政裁判所は、分割払いに際しての売上VATの発生時点の定義について見解を示しました。また、 経済的に分割可能な役務の特定の部分について対価が個別に合意されている場合、これは部分役務に該当し、当該部分に対する売上VATは、それぞれ該当する部分が履行された時点で発生することになりますが、この部分役務の定義に関しても見解を示しました。

チェーン取引に関する連邦財務省通達草案

2019年年次税法において、EU VAT指令の早期実施措置である「Quick Fixes」の一環で、チェーン取引のVAT上の取扱いに関する規定が改正されました(VAT法第3条第6a項)が、連邦財務省は、チェーン取引に関する通達草案の中で、特に「動的供給」(チェーン取引において輸送を伴うと見なされる供給)の帰属を始めとする運用上の疑問点に関する見解を示しました。

V. 不動産取得税

シェアディール規定の適用に関する通達

不動産取得税法改革により、原則的に、2021年7月1日以降成立する取得取引から、いわゆるシェアディールにおける保有期間が10年に延長され、また出資比率が90%に引き下げられました。さらに、不動産保有資本会社における出資者変動に関する新規定が導入されました。上記の改正を受け、連邦各州の上級財務局は、不動産を保有する資本会社または人的会社の出資者の変動に関する運用上の疑問点に関する共同通達を通じてその見解を示しました。

VI. 個人所得税/賃金税

カンパニーカーの支給に際しての賃金税上の取扱い

連邦財務省は、カンパニーカーの支給に際しての賃金税上の取扱いに関する新しい適用通達を公表しました。新しい通達により、賃金税源泉徴収の遡及(そきゅう)修正が可能になります。通達は、また、カンパニーカーの取得費用の従業員による一部負担の取扱いに関する直近の連邦財政裁判所判決も反映しています。

金銭給付と現物給付の区分に関する連邦財務省通達の改定

連邦財務省は、2022年3月15日付連邦財務省通達により、金銭給付と現物給付の賃金税上の重要な区分に関する2021年4月13日付適用通達を改定しています。

企業グループ内におけるクロスボーダーの駐在員派遣に際しての経済的雇用者

連邦財政裁判所は、2021年11月4日付判決により、企業グループ内におけるクロスボーダーの駐在員派遣において、どのような要件が満たされた場合に、派遣先となる国内企業が所得税法第38条第1項第2文にいうところの経済的雇用者となるのか、その見解を示しました。

9ユーロチケットの賃金税上の取扱い

連邦財務省は、2022年6月から8月までの期間、ドイツ国内の公共交通機関が提供する特別の定額チケットである9ユーロチケットの賃金税上の取扱いに関する通達を公表しました。

VII. 税務会計

デジタル経済財の減価償却に関する連邦財務省の回答書

税務当局は、2022年2月22日付連邦財務省通達により、2021年2月26日付のコンピューターハードウエアならびにデータ入力および処理に必要なソフトウエア(いわゆるデジタル経済財)の一般耐用年数に関する連邦財務省通達を改定しましたが、解釈上の疑問点が残されていました。連邦財務省は、2022年4月26日付の回答書において、各団体による明確化の要請に応えています。

VIII. 税務コンプライアンス

OECDによる暗号資産に係る情報交換制度導入の提案

経済協力開発機構(OECD)は、2022年3月22日に暗号資産に係る情報交換制度の枠組み(Crypto-Asset Reporting Framework - CARF)および共通報告基準(Common Reporting Standard - CRS)の改正に係る公開諮問文書(Public Consultation Document)を公表しました。

国外取引に際しての申告義務

特定の国外取引については、租税通則法第138条第2項および第138b条に基づく申告義務が課されますが、税務当局は、2022年4月26日付連邦財務省通達により、これまでに公表されてきた複数の通達をまとめて、この論点に関する見解をより詳細に示しました。

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