女性アスリートとビジネス界をつなげる「WABNアカデミー」

女性アスリートとビジネス界をつなげる「WABNアカデミー」


EY Japanが次世代支援の一環として主催する「WABNアカデミー」。WABNでは女性アスリートがスポーツを通じて培ったスキルに注目し、スポーツの世界からビジネスの世界へと活躍の場を移す際のサポートを行っています。

WABNアカデミーでは、よりビジネス分野への進出やリーダーシップスキル向上に意欲を持って取り組むオリンピアンやパラリンピアンら10名を選出し、6カ月間にわたって起業家精神の育成や会計知識といったビジネススキルを習得する機会を提供しました。本記事では、アカデミーの概要と参加したアスリートらの声を紹介します。


要点

  • WABNアカデミーは月1回(開閉講式を含む計7回)のセッションと1on1のメンタリング、グループワークで構成される。
  • 参加者の声「自分が何に喜びを感じ、世の中に対しどうありたいのか、自分自身のパーパスを見つけることができた」
  • EYでは女性アスリートの未来をサポートすることで社会的価値の創出につなげる。


1. 期待される3つの効果

「WABNアカデミー」はEY Japanのプロフェッショナルらが講師を務める月1回(開閉講式含む計7回)のセッションと1on1のメンタリング、グループワークから構成され、参加アスリートは以下の3つの効果を期待することができます。

① スキルアップ

アスリートはキャリア転換およびビジネス界で成功するために必要なカリキュラムを学び、自己啓発、リーダーシップ、ビジネススキルの向上を図ることができます。

② メンタリング

アスリートには、それぞれが目指す成功モデルに適したビジネスリーダーによるメンターがアサインされ、定期的なメンタリングを受けて行動を起こすための後押しを得られます。

③ 価値ある出会い

ビジネス界をリードするEY Japanのリーダーや「EY Entrepreneurial Winning Women (EWW)」に選出された起業家に加え、参加するトップアスリート同士との出会いがあり、ネットワーク構築の機会が広がります。


第1期WABNアカデミーでは、個人のパーパス(存在意義)と自身を知ることから始め、会計知識講座、アントレプレナーシップマインドなどの異なるテーマのセッションを提供し、アスリートがビジネススキルを身に付けられるプログラムを目指しました。さらに、アスリート一人一人にEY Japanのパートナーがメンターとしてアサインされ、定期的な1on1のメンタリングが行われました。

プログラム

2. 参加アスリートインタビュー:
武知 実波さん(プロサーファー)

「これまで漠然としか描けていなかった将来の姿が、WABNアカデミーを通じてかなり具体的になりました」と振り返るのは、WABNアカデミーに参加された武知実波さん。武知さんは徳島県阿南市在住のプロサーファーで、講演活動や学校でのサーフィンスクールなど教育現場を含むさまざまな場面で、サーフィンの普及に積極的に取り組んでいます。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)組織委員会のサーフィン競技チームメンバーとして、大会の成功に貢献しました。

自身のキャリアを考えるようになったきっかけについて、武知さんは次のように話します。

「学生時代から地域活性化や教育の分野に興味があり、競技と学生を両立することを意識して活動をしていましたが、東京2020大会での経験を経て、より自分のやりたいことを仕事にしたいと考えるようになりました」

では具体的に何をすればいいのか。思い浮かんだのが「教育を軸とした事業の展開」だったといいます。

「学生時代に選手として国内外を転戦する傍ら、大学では教育の知識を学び、英語の教員免許(中学校教諭一種免許状/高等学校教諭一種免許状)を取得しました。また大学院ではサーフィンを用いた地域活性化について研究をし、教育とサーフィンを通じて次世代と地域の役に立てるような仕組みを作りたいと思うようになりました。

ただ、事業を形にする方法が分からず…。ちょうどその頃にWABNアカデミーを知り、受講を決めました」

こうして本アカデミーに応募した武知さん。初めて参加したその日には、もうこの決断が正しかったと確信したそうです。

「プロ選手としての初年度の結果が毎試合5位で自信を失いかけたときもありましたが、自分自身のパーパスや強みを考えるという初回のセッション時に、WABNリーダーの佐々木ジャネルさんから『自分自身に厳しいアスリートほど、自分の実力や実績を認められなくなる〈インポスターシンドローム〉に陥りやすい。誰がそうなっても不思議じゃないから、皆も自分のことを謙遜せずに認めてあげていいんだよ』という話があって。私のコンプレックスは競技をやっている人の特性みたいなものだと知って、『自己肯定していいんだ』と考えられるようになり、そこから全てを前向きに考えられるようになりました」

加えて、「各セッションの内容が充実していて、事業を始める上でも、とても勉強になりました」と振り返ります。

「特に印象に残っているのはセッション4の『ピッチ、勝利の方程式』です。セッション1で明確になった自分のパーパスが、今後の人生や事業の指針になると強く実感できました。何よりゲストスピーカーのWAmazing株式会社 代表取締役CEO加藤史子さんをはじめとする女性起業家の、等身大の姿を間近で体感できたことでモチベーションが上がりました」

オンラインセッションの模様(閉講式以外のセッションは全てオンラインで行われた)。

オンラインセッションの模様(閉講式以外のセッションは全てオンラインで行われた)


3. アスリート × メンター対談
「人生の中でも大事な人に巡り会えた」

武知さんがWABNアカデミーに応募した動機である「事業を形にする方法を学ぶ」という点についてはメンタリングが大きな役割を担ったのだそうです。

「オンライン個別学習指導形式の事業プランを考えたのですが、当初は学年が変わる春先にだけ集客に注力すべきという先入観がありました。ところがメンターの伊藤さんからは『春に勉強につまずいた子が夏休みの間で取り戻そうとすることもあるように、季節ごとにさまざまな需要があるから、時期やタイミングごとに施策を変えていくのがよいのでは?』とアドバイスいただき、視点を広げることの重要性に気付かされました」

メンターを務めたEY新日本有限責任監査法人パートナー伊藤陽子も、「お話ししてすぐにご自身がやりたい事業について、またWABNアカデミーを通して事業の具体化を求めていると共有いただいたので、私はなるべく視点を広げられるようにいろいろな角度から意見を伝えることを意識しました」と振り返ります。

WABNアカデミー一期生でプロサーファーの武知実波さん(左)とメンターを務めたEY新日本有限責任監査法人パートナーの伊藤陽子(右)

WABNアカデミー一期生 プロサーファー 武知 実波さん(左)とメンターを務めたEY新日本有限責任監査法人 第4事業部 パートナー 伊藤 陽子(右)

メンタリングで一番印象に残っていることを聞くと、次のように答えてくれました。

「これまで相手に合わせ過ぎてしまう自分に悩んでいたのですが、今後事業を進めても同様のことで困るだろうなと考え、思い切って私の悩みと組織での生き方のコツを伊藤さんに聞いたんです。すると伊藤さんは、『大事なのは迎合しないこと』とおっしゃっていました。とにかくまず相手の話をしっかりと聞き、信念と自信を持って、思ったことをちゃんと伝えるのが大切だと」

伊藤もこのときのことを「組織の中で誰かに依存するのは簡単ですが、事業を進めていく上でも自分の責任で意思決定することが、これまでの経験で本当に重要だと思っていて、それを言い表した言葉が『迎合してはいけない』でした。大事なことを決断するときって、人は意外と一人ぼっちだったりするんですよね」と話します。

最後に、武知さんに今後の抱負を聞きました。

「WABNアカデミーのセッションと伊藤さんとのメンタリングを通して学んだことを、地域や家庭環境によって生じる格差のない教育の実現と、サーフィンの普及および社会的地位向上に向けて尽力していくことです。人生の中でも大事な人に巡り会えて、WABNに参加した価値があったと心の底から思っています」


4. 「第2期WABNアカデミー」参加者募集スタート!

大盛況のうちに幕を閉じた第1期WABNアカデミー。参加されたアスリートの皆さんからは次のような感想が寄せられています。


浦田 理恵さん(ゴールボール)

17年間の競技人生にピリオドを打ち、新たな道を歩む決意をした頃にWABNアカデミーとの運命的な出会いがありました。 パラアスリートとして目標を達成するためのプロセスで培った経験を未来ある子どもたちに伝え、「思いやりに満ちた共生社会の実現に貢献したい!」という強い思いをビジネスとして形にするヒントをWABNアカデミーで得られました。主体的、対話的で深いセッション、素晴らしい講師の方々からの学び、立場も環境も異なる同期メンバーの多様な世界観と考え方に触れたことで視座を高めることができ、メンタリングでは受講の目的をさらに深掘りし、自身と向き合う時間となったこと、その全てが何よりの財産となりました。

(ロンドン2012パラリンピック金メダル、東京2020パラリンピック銅メダル)


浦田 理恵さん(ゴールボール)

神谷 晴江さん(水上スキー)

今の自分より一歩前に進みたいと思い参加しました。アカデミーを通して得たポイントは大きく3つ。1つ目は、参加したアスリートがお互いの経験を話し合うことで、深い理解や共感、気付きを得ることができたこと。2つ目はメンターです。メンターは主体性と意欲を一緒に高めるためにセッションしてくれる「専属の先輩」であり、アカデミーを充実したものにできたのも、メンターと心をつなげられたからです。最後はセッションを重ねる中で「姉妹だったのか!」と思えるほどコネクションを感じたアカデミーに一緒に参加したアスリート仲間の存在です。個性も仕事も違いましたが目標に向けて取り組む感覚がスムーズで、このサクサク感はWABNでのセッションを通して思いを共有できたからだと思います。

(2008、2011、2019年全日本水上スキー選手権優勝、2018年+35水上スキー世界選手権総合準優勝)


神谷 晴江さん(水上スキー)

中村 亜実さん(アイスホッケー)

競技を引退し4年がたとうとしている時期で「アスリートとして頑張ってきた経験を生かしたビジネスをしたい!」と考えていました。ただ正直なところ、ビジネス界でアスリートにどのような価値があるのか不安を抱いていたのも事実でした。素晴らしい仲間とメンター、WABNスタッフに出会うことができ、語り合う1分1秒の中で、一企業・一団体の中の自分ではなく、1人の人間として自分と向き合うことができた気がします。自分が何に喜びを感じ、世の中に対しどうありたいのか、自分自身のパーパスを見つけることができました。自信を持って、スポーツの経験で培った武器を生かし、世の中に貢献できるよう行動していきます。

(ソチ2014オリンピック8位、平昌2018オリンピック6位)


中村 亜実さん(アイスホッケー)


WABNリーダーの佐々木ジャネルは「WABNアカデミーはアスリートである皆さんの人生の入り口にしか過ぎません。ここで出会ったさまざまな立場の人たちとの縁を大切にして、リーダーシップを発揮しながら活躍いただければうれしいです」と思いを語ります。

第2期WABNアカデミーは10月末から開講する予定です。2期目となるアカデミーでは、WABNアドバイザーや参加者からのフィードバックを反映し、さらにバージョンアップしてまいります。参加をご希望される女性アスリートは、WABNアカデミー事務局 wabn.japan@jp.ey.com までご連絡ください。

EYでは今後もサステナブルな取り組みとして、女性アスリートの未来をサポートしていきます。


EY Japan WABNアカデミー

EY Japanは、ビジネス分野への進出やリーダーシップスキルの向上に意欲的な女性アスリート10名を対象に、ビジネスの最前線でアントレプレナーシップを発揮し、社会で活躍するリーダーの育成を目的とした「WABNアカデミー」をスタートします。



サマリー

2022年6月7日、EY Japanが主催する女性アスリートのキャリアサポートプログラム「第1期WABNアカデミー」が閉講しました。アカデミーに参加したアスリートからは、充実したセッション内容やメンタリング、さらにはアスリート同士の交流に対して好評の声が寄せられました。第2期WABNアカデミーは今秋からスタートする予定です。


この記事について