2023年3月期 有報開示事例分析 第7回:グループ通算制度に関する注記

2023年11月29日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 須賀 勇介

Question

2023年3月期決算に係る有価証券報告書におけるグループ通算制度に関する注記の開示状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2023年8月
  • 調査対象期間:2023年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書(なお、連結財務諸表を調査の対象としており、連結財務諸表を作成していない会社は個別財務諸表を調査の対象としている。)
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する201社
    ①2023年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ②3月31日決算である
    ②2023年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ③日本基準を適用している

【調査結果】

グループ通算制度の適用により、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第42号」という。)に従って法人税及び地方法人税の会計処理又はこれらに関する税効果会計の会計処理を行っている場合には、その旨を税効果会計に関する注記の内容とあわせて注記することとされている(実務対応報告第42号第28項)。なお、経過措置として、連結納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合、実務対応報告第42号の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当するが、会計方針の変更による影響はないものとみなし、会計方針の変更に関する注記は要しないとされている(実務対応報告第42号第32項(1))。

調査対象会社(201社)のうち、提出会社又は連結子会社が実務対応報告第42号に従って会計処理を行っている旨を開示している会社81社を対象に、グループ通算制度の適用に関する注記及び実務対応報告第42号の適用に関する注記の開示状況を調査した。調査結果は<図表>のとおりである。

ほぼすべての80社が、税効果会計に関する注記において、グループ通算制度を適用しており、実務対応報告第42号に従って会計処理を行っている旨を記載していた。残りの1社についても、同様の旨を重要な会計方針に記載していた。
また、重要な会計方針として、グループ通算制度を適用している旨を注記している会社は半数程度の39社あり、そのうち「その他連結財務諸表作成のための重要な事項」の区分に記載している会社は26社、「グループ通算制度の適用」などの独立した区分を設けて記載している会社は13社あった。

さらに、追加情報として、当期に連結納税制度からグループ通算制度へ移行し、実務対応報告第42号に従って会計処理を行っている旨を注記している会社は10社あり、その多くは、税効果会計に関する注記及び重要な会計方針の記載に加えて追加情報を記載している銀行業の会社であった。

<図表> グループ通算制度や実務対応報告第42号を適用している旨の注記の記載箇所

記載箇所 会社数
税効果会計関係(注1) 80社
重要な会計方針(注2) 39社
追加情報 10社

(注1) 当期に連結納税制度から単体納税制度へ移行した1社、及び翌期に単体納税制度からグループ通算制度へ移行する2社を含む。

(注2) 当期に連結納税制度から単体納税制度へ移行した2社を含む。

(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」分析」を一部修正)

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