EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大浦 佑季
Question
2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)のコーポレート・ガバナンスの状況等における取締役会及び監査役会等に関する開示の状況を知りたい。
Answer
【調査範囲】
- 調査日:2023年8月
- 調査対象期間:2023年3月31日
- 調査対象書類:有価証券報告書
- 調査対象会社:以下の条件に該当する201社
①2023年4月1日現在、JPX400に採用されている
②3月31日決算である
③2023年6月30日までに有価証券報告書を提出している
④日本基準を適用している
【調査結果】
調査対象会社(201社)の有報の「コーポレート・ガバナンスの概要」及び「監査の状況」の「監査役監査の状況」から、取締役会及び監査役会等の開催回数について調査した結果は、<図表1>のとおりである。
<図表1> 取締役会及び監査役会等の開催回数
取締役会 | 監査役会等 | |||
会社数 | 比率 | 会社数 | 比率 | |
6回以下 | - | - | 1社 | 0.5% |
6回超12回以下 | 42社 | 20.9% | 51社 | 25.4% |
12回超18回以下 | 135社 | 67.2% | 131社 | 65.2% |
18回超24回以下 | 18社 | 9.0% | 15社 | 7.5% |
24回超 | 2社 | 1.0% | 3社 | 1.5% |
その他 | 4社(注) | 2.0% | - | - |
合計 | 201社 | 100.0% | 201社 | 100.0% |
(注)「その他」には実際の開催回数の記載ではなく「原則月1回」と記載している3社及び「毎月定例」と記載している1社を集計している。
<図表1>からは、取締役会、監査役会等のいずれも約3分の2の会社で開催回数は「12回超18回以下」となっており、平均すると月1回~1.5回の頻度で開催している会社が多いことがわかる。
なお、年間の開催回数の最頻値は取締役会、監査役会等ともに13回(取締役会が13回の会社数は35社、監査役会等が13回の会社数は37社)、最も多い開催回数は取締役会、監査役会等ともに28回(ともに1社ずつ)、最も少ない開催回数は取締役会が7回(2社)、監査役会等が6回(1社)であった。
また、調査対象会社について取締役会や監査役会等の所要時間を記載している会社を集計したところ、<図表2>の結果となった。
平均所要時間(注) | 取締役会 | 監査役会等 |
1時間以下 | 1社 | 10社 |
1時間超2時間以下 | 2社 | 23社 |
2時間超3時間以下 | 3社 | 6社 |
3時間超 | - | 1社 |
合計 | 6社 | 40社 |
所要時間の記載方法 | 平均所要時間を記載:5社 累計所要時間を記載:1社 |
平均所要時間を記載:38社 累計所要時間を記載:2社 |
<図表2>からは、取締役会の所要時間を記載している会社は少なく、監査役会等の所要時間を記載している会社も全体の2割に満たないことがわかる。また、監査役会等の所要時間を記載している会社の中では、監査役会等の所要時間が1時間超2時間以下である会社が多いといえる。
開催回数、討議内容以外にも有報の利用者に取締役会、監査役会等の活動状況を説明するための記載が充実していくことが望まれる。
(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」調査」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
2023年3月期 有報開示事例分析
- 第1回:総会前提出 (2023.11.20)
- 第2回:コーポレート・ガバナンスの状況等①(取締役会及び監査役会等の記載状況) (2023.11.21)
- 第3回:コーポレート・ガバナンスの状況等②(内部監査の状況) (2023.11.22)
- 第4回:コーポレート・ガバナンスの状況等③(株式の保有状況) (2023.11.24)
- 第5回:コロナ/ロシア・ウクライナ関連開示 (2023.11.27)
- 第6回:時価算定適用指針(改正適用指針) (2023.11.28)
- 第7回:グループ通算制度に関する注記 (2023.11.29)
- 第8回:グループ通算制度を適用している会社 (2023.11.30)
- 第9回:グローバル・ミニマム課税制度 (2023.12.01)
- 第10回:早期適用した会計基準(電子記録移転有価証券表示権利等) (2023.12.04)
- 第11回:未適用の会計基準等に関する注記 (2023.12.05)
- 第12回:2年目の収益認識注記開示分析①(重要な会計方針の注記、収益を理解するための基礎となる情報) (2023.12.06)
- 第13回:2年目の収益認識注記開示分析②(収益の分解情報) (2023.12.07)
- 第14回:2年目の収益認識注記開示分析③(当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報) (2023.12.08)