EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 大竹 勇輝
Question
「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」のうち、「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」及び「経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」の開示状況は?
Answer
【調査範囲】
- 調査日:平成30年8月
- 調査対象期間:平成30年3月31日
- 調査対象書類:有価証券報告書
- 調査対象会社:
平成30年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する232社
① 3月31日決算
② 平成30年7月2日(法定提出期限)までに有報を提出
③ 連結財務諸表作成会社
④ 日本基準を採用
【調査結果】
(1) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
分析対象会社(232社)を対象に、「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の開示状況を調査した。調査結果は、<図表1>のとおりである。
<図表1> 「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の開示状況
記載項目 | 平成29年3月期 | 平成30年3月期 |
記載なし 又は キャッシュ・フロー計算書の要約のみの記載 |
175 |
43 |
資金需要又は財務政策等の記載(※) | 57 | 189 |
合計 | 232 |
232 |
(※) 具体的な設備投資の予定等の資金需要に関する記載はないものの、財務政策等の記載のみが簡潔に記載されている場合でも1社とカウントしている。
平成29年3月期においては、「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」について、記載をしていない、又はキャッシュ・フロー計算書の要約のみの記載をしている会社が75%程度であり、具体的な資金需要や財務政策等について記載している会社は25%程度にとどまっていた。一方で、平成30年3月期においては、パブリックコメントへの対応にて開示内容を充実させる趣旨の記載がなされたことも相まって、記載をしていない、又はキャッシュ・フロー計算書の要約のみの記載をしている会社が19%程度であり、具体的な資金需要や財務政策等について記載している会社は81%程度となった。
(2) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
分析対象会社(232社)を対象に、「経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」の開示状況を調査した。調査結果は、<図表2>のとおりである。
<図表2>「経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」の開示状況
記載項目(※) | 平成29年3月期 | 平成30年3月期 |
記載なし | 63 | 46 |
指標 または 指標および目標数値のみを記載 |
131 | 56 |
実績との比較または経営上の目標の達成状況を記載 | 38 | 130 |
合 計 |
232 | 232 |
(※)「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載している場合も1社とカウントしている。
平成29年3月期においては、「経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」について、記載をしていない会社が27%程度あり、また、記載していたとしても、経営上判断すべき指標のみや当該指標と目標数値のみを記載するにとどまり、具体的な達成状況等を記載していない会社が56%程度であった。一方で、平成30年3月期においては、パブリックコメントへの対応にて開示内容を充実させる趣旨の記載がなされたことも相まって、実績との比較や目標の達成状況等を記載している会社が56%程度となった。
なお、「経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容」については、平成29年3月期に記載されていた「業績等の概要」及び「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の内容に即して記載しているケースが多かった。
(旬刊経理情報(中央経済社) 平成30年9月20日号 NO.1523「平成30年3月期『有報』分析」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
平成30年3月期 有報開示事例分析
- 第1回:定率法から定額法への変更 (2018.12.19)
- 第2回:連結納税制度 (2018.12.19)
- 第3回:決算期変更 (2018.12.19)
- 第4回:税効果会計一部改正の早期適用 (2018.12.19)
- 第5回:米国税制改革 (2018.12.19)
- 第6回:総会前提出 (2018.12.19)
- 第7回:非財務情報(MD&A) (2018.12.19)
- 第8回:未適用の会計基準等の注記 (2018.12.19)
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- 第10回:会計計算規則に規定されていない注記の開示状況 (2018.12.19)