公認会計士 横井 貴徳
Question
平成28年度税制改正に伴い、実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第32号」という。)を適用し、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更している会社は?
Answer
【調査範囲】
- 調査日:平成28年9月
- 調査対象期間:平成28年6月30日
- 調査対象書類:四半期報告書
- 調査対象会社:以下の条件に該当する198社
① 平成28年4月1日現在、日経株価指数300に採用されている
② 年度決算日が3月31日であり、平成28年6月30日を第1四半期決算日としている
③ 平成28年8月14日までに四半期報告書を提出
④ 日本基準を採用し、連結財務諸表作成会社である
【調査結果】
(1)会計方針の変更に係る注記の開示状況
分析対象会社198社において、実務対応報告第32号の適用に伴う「会計方針の変更に係る注記」の開示状況の分析結果は、(図表1)のとおりである。
114社が実務対応報告32号の適用に伴い減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨の開示をしており、その大半が影響額を「軽微」として開示している結果となった。
(図表1)実務対応報告第32号適用に伴う会計方針の変更に係る注記の開示状況
区分 |
平成28年6月第1四半期 開示会社数 |
|
会計方針の変更に係る 注記に開示あり |
影響額を記載 |
6 |
軽微と記載 |
108 |
|
影響なしと記載 | 0 | |
小 計 | 114 | |
会計方針の変更に係る注記に開示なし | 84 | |
合 計 | 198 |
(2)報告セグメントの変更等に関する事項(以下「報告セグメントの変更注記」という。)の開示状況
分析対象会社198社において、実務対応報告第32号の適用に伴う「報告セグメントの変更注記」の開示状況の分析結果は(図表2)のとおりであり、当該減価償却方法の変更に伴い「報告セグメントの変更注記」にその旨を開示している会社は、23社にとどまっている。
(図表2)実務対応報告第32号適用に伴う報告セグメントの変更注記の開示状況
区分 |
平成28年6月第1四半期 開示会社数 (*) |
|
報告セグメントの変更注記に開示あり |
影響額を記載 |
2 |
軽微と記載 |
21 | |
影響なしと記載 |
0 | |
小 計 | 23 | |
報告セグメントの変更注記に開示なし | 91 | |
合 計 | 114 |
(*)(図表1)で「会計方針の変更に係る注記に開示あり」に分類した会社を対象に分析している。
(3)減価償却方法の注記の開示状況
平成28年6月第1四半期で当該減価償却方法を変更している旨の注記を開示していない会社84社について、平成28年3月期の有価証券報告書の連結財務諸表における建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を分析した結果は(図表3)のとおりであり、減価償却方法を定額法として開示している会社が多数を占めた。
(図表3)建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法の注記
区分 |
平成28年3月期開示会社数 (*1) |
|
会計方針の変更に係る注記に開示なし |
定額法 (*2) |
60 |
定率法 (*2) | 29 | |
合 計 | 89 |
(*1)(図表1)で「会計方針の変更に係る注記に開示なし」に分類した会社を対象に分析している。
(*2) 同一の会社で定額法と定率法の両方を記載している場合は、それぞれ1社としてカウントしている。
(旬刊経理情報(中央経済社) 平成28年10月20日号 No.1460 「平成28年6月第1四半期『四半期報告書』の開示分析」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
平成28年6月第1四半期 四半期報告書分析
- 第1回:繰延税金資産回収可能性適用指針の適用 (2016.11.28)
- 第2回:会計方針の変更・会計上の見積りの変更 (2016.11.28)
- 第3回:税制改正に係る減価償却方法の変更 (2016.11.28)