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CEOが直面する喫緊の課題:エコシステムをフルに活用することでいかに業績が変わるか
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How mastering ecosystems transforms performance (PDF)
エコシステム型ビジネスモデルが業績の向上、イノベーションの加速、変革による成長を組織にもたらしています。
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要点
国・地域やセクターを問わず、エコシステム型ビジネスモデルをステークホルダーにとっての価値を高めるための戦略的優先課題にする企業が増えている。 エコシステム型ビジネスモデルをすでに導入し、その管理と展開で優れた実績を示している企業は、そうでない企業を上回る業績を上げている。 エコシステム型ビジネスモデルを効果的に管理している企業は、社内と市場におけるイノベーションと業務の効率化にメリットがあったと報告している。
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ビジネスを取り巻く状況は⼤きく変わり、今も変わり続けています。このような状況に対応するため、すべてのCEOは⾃らの組織を変⾰しなければならないという課題に直⾯しています。そのような状況を受け、エコシステム型ビジネスモデルを導⼊するCEOが増えてきました。そこには誰もが納得する理由があります。
エコシステム型ビジネスモデルを1つでも活⽤しているビジネスリーダー800⼈強を対象とした調査結果から、エコシステムが平均で年間総収益の13.7%を占め、コスト削減の12.9%に寄与し、増分収益の13.3%を⽣み出していることが分かりました。
とはいえ、すべてのエコシステムが同じように構築されているわけではありません。優れた成果を上げているエコシステムは、あまり成果を上げていないエコシステムに⽐べ、平均でコスト削減幅が1.5倍、増分収益の増加幅が2.1倍⼤きくなっています。2020年度には、優れた成果を上げているエコシステムを持つ企業は、平均増収率と純利益率においても全体的に上回りました。
CEOが直面する喫緊の課題(CEO Imperative)シリーズ では、CEOが組織の未来を創る上で役⽴つソリューションとアクションについて毎回ご紹介しています。本稿では、エコシステムの台頭、変⾰による成⻑を、エコシステムがどのように推し進めているか、また優れた成果を上げているエコシステムのベストプラクティスについて新たな知⾒を⽰します。
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EYでは、ビジネスエコシステムを、個々の事業者が独⾃に創造するよりも⼤きな価値を創造できる、2社以上の事業者間のパートナーシップと定義しています。
エコシステム型ビジネスモデルとは、商品やサービスを共同で開発・製造して共通の顧客に販売し、それにより⽣まれる価値を共有する仕組みです。参加企業の少なくとも1社が取りまとめ役となり、活動について参加者間の調整を⾏います。また最終的な提案には全参加者のブランドが盛り込まれます。
ビジネスエコシステムの変遷についてはこれまでの記事ですでに詳しく取り上げ、ビジネスエコシステムとは何か 、なぜ重要なのか、エコシステムの統合により価値を創造するにはどうすればいいか について明らかにしてきました。
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第1章
エコシステムの台頭
エコシステム型ビジネスモデルを導⼊することにより、価値の創造を図る 組織が増えています。
2021 CEO Imperative Study では、調査対象となったCEOの31%がビジネスパートナーシップの外部エコシステムを戦略に盛り込んだと回答しています。EY Ecosystem Studyによると、エコシステムを採⽤している企業は、その結果として⼤きな価値を⽣み出しています。EYが実施した調査から、エコシステムに参加している企業のリーダーの71%が⾃社の現在の成功にとってエコシステムが⾮常に重要であると考えていて、91%がエコシステムにより事業のレジリエンスが向上したとみていることが分かりました。2020年にEYが⾏ったエコシステムに関する調査と⽐べ、これらの企業がエコシステムの活⽤を拡⼤していることからも、成果が現れていることは明らかです。エコシステムのパートナー数の平均は5社から7社に増え、現在4つ以上のエコシステムを持っていると答えた回答者が58%に上りました。
多くの企業が投資を増やしていることも、エコシステムの戦略的重要性の⾼まりを裏付けています。例えば、IBM(EYのエコシステムパートナー)の2020年のアニュアルレポートによると、同社はハイブリッドクラウド・エコシステムに10億⽶ドルを投資していますが、その⽬的はクライアントのニーズの充⾜でパートナーがこれまでよりはるかに⼤きな役割を果たせる体制を整えることです。
今回の調査の回答者は、エコシステムが平均で年間総収益の13.7%、コスト削減の12.9%、増分収益の13.3%に寄与していると答えました。業界によってはこの割合がさらに⼤きくなり、電気通信業界ではコスト削減、増分収益ともに平均で16%を超えました。
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*自己の創造的破壊
Nationwide Insurance社は、これまで獲得できていなかった顧客セグメントを取り込むための新規ブランドと新しいテクノロジープラットフォームを必要としていました。イノベーションと価値創造に対するこれまでのアプローチでは、求められる結果を所定の期間内に出せないと考えた同社は、EYと連携してSpireプロジェクトに着手しました。Spireとは、顧客が完全オンラインで数分以内に保険証券の自動発行を受けられるようにするプラットフォームです。
Spireが利用するデジタルプラットフォームはEY Nexus™です。⾦融サービス向けのこのプラットフォームはMicrosoft Azure上で稼働しており、パートナーのエコシステムにアクセスできるため、企業のニーズに合わせてパートナーのテクノロジーを追加することが可能です。
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エコシステム型ビジネスモデルの導⼊の拡⼤を加速させている要因の⼀つに技術の進歩があります。クラウド化の進展により、これまでエコシステの構築を難しくしていた技術⾯、業務⾯のハードルが劇的に下がりました。特にデジタルプラットフォームによりアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)経由で複数の組織がつながることや、迅速かつ効果的な反復処理が可能になったことで、エコシステムの価値を構築してエンドクライアントにもたらすことが容易になりました。
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第2章
エコシステムは変革による成長をどのように推し進めているのか
エコシステムをフルに活用している組織は、そうでない組織を複数の評価基準で上回っています。
エコシステムを運営する企業の⼤部分がその成果に満⾜していますが、今回の調査で「優れた成果を上げているエコシステム」を持つ回答者のセグメントがあることが分かりました。優れた成果を上げているエコシステムは企業の年間総収益に占める割合が⼤きく、エコシステムの管理でベストプラクティスを採⽤する傾向にあります。優れた成果を上げているエコシステムをどのように選別したかについて詳しくは、下記をご覧ください。
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優れた成果を上げているエコシステムは、あまり成果を上げていないエコシステムに比べ、平均でコスト削減幅が1.5倍、年間総収益に対する寄与率が1.5倍、増分収益の増加幅が2.1倍大きくなっています。
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優れた成果を上げているエコシステムを選別するにあたって当社が着目した要素は、企業の年間総収益に対するエコシステムの寄与率と、エコシステムの構築と運営に関するベストプラクティスの採用率の2つです。高度な統計分析(潜在クラス回帰分析)を用いて、回答者をグループに分けました。これにより、エコシステムを以下の特徴を持つ3つのグループに分類しています。
優れた成果を上げているエコシステム(回答者の37%):年間総収益に対する寄与率とベストプラクティスの採用率が高い傾向にある 中程度の成果を上げているエコシステム(回答者の40%):年間総収益に対する寄与率とベストプラクティスの採用率が中程度の傾向にある あまり成果を上げていないエコシステム(回答者の23%):年間総収益に対する寄与率とベストプラクティスの採用率が低い傾向にある
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優れた成果を上げているエコシステムは、あまり成果を上げていないエコシステムよりはるかに⼤きな価値を組織にもたらしています。優れた成果を上げているエコシステムは、あまり成果を上げていないエコシステムに⽐べ、平均でコスト削減幅が1.5倍、年間総収益に対する寄与率が1.5倍、増分収益の増加幅が2.1倍⼤きくなっています。これはほぼすべてのセクターに⾔えることですが、特にテクノロジーなど、その差が⼀段と⼤きいセクターもあります。
優れた成果を上げているエコシステムを持つ企業は業績がそうでない企業を上回るという傾向もみられます。2020年度には、優れた成果を上げているエコシステムを持つ企業は、あまり成果を上げていないエコシステムを持つ企業に⽐べて、平均増収率(前者が7.8%だったのに対して後者は5.4%)と純利益率(前者が10.6%だったのに対して後者は8.1%)が⾼くなりました。
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優れた成果を上げているエコシステムを持つ企業の中でもトップ集団が、従来型のアプローチに勝るエコシステムの利点として特に挙げた分野は以下の3つです。
成⻑︓エコシステムにより、新たな共同提案が可能となり、また新たな国や地域へのアクセスが確保され、そこから成⻑が促され、コスト削減にも貢献する 研究開発︓エコシステムにより、研究開発の成功確率の上昇に貢献する資産、⼈材、専⾨知識へのアクセスが可能になる M&Aに対して︓より⼤きく成⻑する機会の提供や実施の迅速化などによって、エコシステムは一部においてはM&A以上に業績の向上に役⽴つことができる
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イノベーションと市場の変化
エコシステム型ビジネスモデルの恩恵は個々の組織の枠をはるかに超えて及び、市場全体やバリューチェーン全体に影響を与える可能性もあります。エコシステムについては経営幹部の85%以上が、⼤⼿企業が⼩規模のディスラプター企業とつながり、バリューチェーン全体で、あるいは周辺業界とのイノベーションを促進する効果的な⽅法だと回答しています。
新たな関係を構築するだけでなく、セクターの枠を超えて⼤規模なイノベーションを実現するためにも組織がエコシステムを活⽤するようになる中、エコシステム型ビジネスモデルが市場に与える、このように幅広い影響をEYではすでに実際に⽬にしています。その⼀例がネット⼩売業者による実店舗との提携です。それにより顧客に、一段と便利なカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになりました。また、グローバルにビジネスを展開するテクノロジー企業は、スタートアップ企業の⾰新的なエコシステムを活⽤してテクノロジー開発のさらなる推進を図っています。
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Microsoft Xboxのロイヤリティ関連の処理をするレガシーシステムでは、発⽣したロイヤリティに関する検証済みの財務情報へのアクセスに45⽇かかっていました。このタイムラグとそれに伴う事務処理は、資源に限りのある⼩規模企業をはじめ多くのゲームパブリッシャーにとって⾮効率であり、負担となっていました。
Microsoft XboxとEYのチームは協働でシステム変⾰に取り組み、透明性の⾼いブロックチェーンエコシステムを採⽤しロイヤリティ関連の処理を⾃動化することで、パブリッシャーが要していた人手によるマニュアル作業を減らし、作業時間の短縮を図りました。その結果、この処理に対するクリエイターの信頼感が⾼まり、新作ゲームの制作にクリエイターが集中できるようになりました。
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第3章
エコシステムをフルに活用する
エコシステム型ビジネスモデルの戦略的統合についての提⾔と次のステップ
エコシステム型ビジネスモデルで価値を創造する万全の体制を整えるために、CEOとしてどのような取り組みを進めていますか。優れた成果を上げているエコシステムを持つ組織の90%以上が、エコシステム関係構築の可能性を探り、実際にこれを構築、管理するために、少なくとも以下の対策のうち3つを講じています。
経営幹部レベルまたは取締役会レベルでの定期的な⾒直し︓経営幹部や取締役会がエコシステム戦略の推進を後押しすることで、⽬的を明確化できる(優れた成果を上げているエコシステムの77%) 進捗状況を常にチェックする部⾨の設置︓専⽤KPIに照らしてエコシステムを評価することで成果が向上する(同76%) 新たなパートナーシップの可能性の有無を⾒極める部⾨の設置︓専⾨家がエコシステムの構成を監督することで質が上がる(同74%) エコシステムが独⽴した別個の事業部⾨として運営できる体制の整備︓エコシステムに独⽴性を持たせることで抜きんでた成果を出す傾向が⾒られる(同68%) エコシステム向け予算の計上︓企業が戦略としてエコシステムに投資をすることで、物事を適時かつ効果的に⾏えるようになる(同65%)。 権限のある責任者を1名配置︓エコシステムリーダー(最⾼エコシステム責任者)を置くことで⽬標達成の可能性が⾼まる(同48%)。
言うまでもなく、ここに挙げている対策ですべてが解決するわけではありません。エコシステムの構築と維持にあたっては、どの企業も課題に直面するはずです。その中でも最も多く見られる課題は以下の3つです。
共通の目標と戦略での合意 コストと収益の配分を巡る問題をはじめとした参加者間の紛争の解決 エコシステムの参加者を厳選する仕組みづくり
もう⼀つの主な課題はデータの相互運⽤性です。データの相互運⽤性とは、システムやサービス同⼠がデータを作成、交換、使⽤する能⼒を意味します。例えば、データ保護規則の内容が国・地域により異なる場合、エコシステム参加者を常に悩ませる課題となります。
このような課題には、エコシステム参加者間の関係の定義と契約プロセスの⼀環として対処しなければなりません。また、関係に関するKPIを定め、定期的な⾒直し作業にてその評価を⾏い、エコシステムのパフォーマンスの最適化を継続的に図る必要があります。
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ビジネスエコシステムの価値創造に向けた取り組みを模索し、これに着⼿する組織が増えてきましたが、エコシステム型ビジネスモデルに参加したり、その取りまとめ役を務めたりするのに適したビジネスモデルを理解し、⾒極められるようにすることも非常に大切です。EYでは先ごろ、その第一歩を踏み出す上で参考となる7つのエコシステム型ビジネスモデル を選定しました。それぞれに際⽴った特徴や利点があります。
長期的な成功をもたらす
エコシステム型ビジネスモデルは、構築や買収など従来型のアプローチよりもはるかに⼤きな影響を、業務と業績にもたらしています。これを受けて、このビジネスモデルを戦略的優先課題にする企業が国・地域やセクターを問わず増えてきました。
一方、エコシステム関係とエコシステム型ビジネスモデルは技術的、業務的、商業的に複雑です。また、企業のあらゆる側面に影響を及ぼします。しかも多くの企業が、組織体制面や文化的な問題から、エコシステムに参加してその取りまとめ役を務めることも、収益化を図ることもできていません。EYのCEO Imperative Study によると、エコシステムを構築、主導、管理する能力がリーダーシップチームの成否を決めるとCEOの88%が考えています。⼀⽅で、優れた成果を上げているエコシステムを持つ調査回答者のうち、エコシステムのリーダーを置いていると答えたのは48%にとどまりました。配置している場合も、多くは役職が置いてあるだけで、必ずしも複数の部署にまたがる権限があるわけではありません。
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成功するエコシステムを構築する際に生じる課題を克服する上で、最高エコシステム責任者の任命は有効な施策となるかもしれません。
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エコシステムの戦略的重要性が高まっている今は、ビジネスリーダーが新たな人材戦略を構築し 、最⾼エコシステム責任者を任命する⼤きなチャンスです。最⾼エコシステム責任者とは、組織内でエコシステムを担当する最高責任者であり、エコシステムをサイロ組織から会社全体の成⻑・価値創造戦略の要へと移⾏させることができます。
エコシステムを採⽤し業務に活⽤するにあたっていずれの⽅法をとるにせよ、エコシステムを戦略的優先課題として掲げ、価値の創造の仕⽅にエコシステムを組み込む企業は、変⾰の実現につながるような恩恵を受けることができるでしょう。
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サマリー
ビジネスエコシステムに参加したり、その取りまとめ役を務めたりする企業が増えており、エコシステム時代が到来したと⾔って過言ではないでしょう。EYがエコシステムに関する調査を実施した結果、エコシステムをフルに活⽤し、優れた実績を⽰している企業は、そうでない企業を上回る業績を上げ、変⾰による成⻑を遂げていることが分かりました。
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この記事について
Greg Sarafin
Global Managing Partner – EY Partner Ecosystem
Passionate about improving the pace and scale of value creation. Fearless business strategist. Former entrepreneur and dot-commer. Unabashed binge watcher. Traveler, foodie and father of three.
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