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有形固定資産の取得原価の決定


情報センサー2021年8月・9月合併号 企業会計ナビダイジェスト


EY新日本有限責任監査法人 企業会計ナビチーム 公認会計士 中村 崇

監査部門に所属し、陸運業、建設業などの会計監査に携わる傍ら、書籍執筆、法人ウェブサイト(企業会計ナビ)に掲載する会計情報コンテンツの企画・執筆等に従事している。

当法人ウェブサイト内の「企業会計ナビ」が発信しているナレッジのうち、アクセス数の多いトピックスを取り上げ、紹介します。今回は「解説シリーズ『有形固定資産』第2回:取得原価の決定」の一部を編集し、紹介します。

【ポイント】
取得原価とは、ある資産の取得に要した原価であり、購入価格に付随費用を加えた合計金額のことをいいます。固定資産の取得原価を決定するにあたって付随費用をどこまで含めるか、会計上は原則として連続意見書等によって会計処理を行いますが、そこに記載がないものについては法人税の規定を参考にしていることが多いと考えられます。

Ⅰ はじめに

有形固定資産の取引は、取得から除却までの一連の過程をたどります。有形固定資産の主な論点としては、①取得原価をどのように決定するか②その取得原価を各年度に費用配分する減価償却をどのように行うか③修理・改良等についてどのように処理するか④除却又は売却した場合にどのように処理するかが挙げられます(<図1>参照)。

図1 有形固定資産の主な論点

固定資産の取得原価は、その後の減価償却計算に当たり重要な基礎となることから、取得原価をいくらにするかは重要な論点となります。ここでは①取得原価の決定について、取得のパターンに応じて見ていきます。

Ⅱ 購入のケース

購入した場合の取得原価は、購入代金+付随費用-値引・割戻で算定されます。

有形固定資産の取得原価には、原則として、当該資産の引取費用等の付随費用を含めるとされています(企業会計原則第三・五D)。このように固定資産を購入によって取得した場合には、購入代金に買入手数料、運送費、荷役費、据付費、試運転費等の付随費用を加えて取得原価としますが、正当な理由がある場合には、付随費用の一部又は全部を加算しないことができます。また、値引き又は割戻しを受けた場合には、購入代金から控除することとされています(連続意見書第三・第一・四1)(<図2>参照)。

図2 固定資産を購入した場合の取得原価の決定

会計基準上は付随費用を加算しないことができる正当な理由についての詳細な定めは置かれていません。一方で、法人税基本通達7-3-3の2では主に次の費用を含めないことができる旨の規定が設けられています。

① 不動産取得税、自動車取得税、登録免許税等の租税公課
② 建設計画の変更により不要となった費用
③ 固定資産の取得契約を解除して代替の固定資産を取得した場合に支出する違約金の金額

Ⅲ 自家建設のケース

固定資産を自家建設した場合には、適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し、これに基づいて取得原価を計算します。建設に要する借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは、これを取得原価に算入することができます(連続意見書第三・第一・四2)。

借入資本の利子を取得原価に算入するか否かについては、日本公認会計士協会から公表されている「不動産開発事業を行う場合の支払利子の監査上の取扱いについて」では、支払利子は原則として期間費用とし、定められた一定の要件の全てを満たす場合に取得原価への原価算入を認めています。従って、当該要件を満たさない場合は支払利子の取得原価への算入は認められないものと考えられます。

Ⅳ 資産除去債務を計上するケース

有形固定資産の取得に当たっては、有形固定資産の除去に関して資産除去債務が存在するかどうかを確認し、存在する場合、資産除去債務の割引現在価値に対応する除去費用を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えて計上する必要があります。

除去費用は有形固定資産の稼働にとって必要不可欠なものであることから、有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理することとされています。

この他、次のケースや取扱いについても企業会計ナビにて解説しています。

  • 現物出資のケース
  • 交換のケース
  • 贈与のケース
  • 土地・建物の取得に際して支払った固定資産税相当額の取扱い
  • 固定資産の購入管理(内部統制)

固定資産に関する会計の論点はさまざまな会計基準に規定されており、目新しいものではなく、典型的な論点も多いですが、検討すべき論点が多数あります。これらについて、各解説シリーズにてまとめていますので、論点整理に活用いただければと思います(<表1>参照)。

表1 企業会計ナビの解説箇所(会計論点別)

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※ 情報センサーはEY新日本有限責任監査法人が毎月発行している社外報です。

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