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平成31年3月期法人税申告の留意事項


情報センサー2019年3月号 Tax update


EY税理士法人 税理士・公認会計士 矢嶋 学

1998年太田昭和アーンストアンドヤング(現EY税理士法人)入所。法人向けコンプライアンス業務の他、組織再編及び事業承継コンサルティング、大規模法人を対象とした税務リスク・アドバイザリー業務等に従事。EY税理士法人入所以前は国税職員として相続税、法人税の調査経験を有する。


Ⅰ はじめに

平成31年3月期の法人税申告においては、主に平成30年度の税制改正によって適用される項目の確認が必要となります。また、平成29年度以前に改正され、当事業年度から適用となる項目についても留意が必要です。
本稿では、平成31年3月期(自平成30年4月1日 至平成31年3月31日)決算法人を前提とした法人税申告の留意事項のうち、主要なものについて解説します。

 

Ⅱ 平成30年度税制改正における主要な改正事項

1. 賃上げ・生産性向上のための税制(旧所得拡大促進税制)の改正

平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度(所得拡大促進税制)について、<表1>のとおりに改正が行われています。


表1 賃上げ・生産性向上のための税制の改正

2. 租税特別措置の適用制限

大企業(中小企業者等以外)が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、<表2>に記載の要件に該当する場合には、研究開発税制等の税額控除の適用を受けられない措置が講じられています。

表2 租税特別措置の適用制限

3. 収益認識に関する会計基準等への対応

収益認識に関する会計基準の導入に伴い、以下の改正が行われています。なお、本改正は法人の平成30年4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。

(1) 収益の額

① 原則的な取扱いの明確化

資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下、資産の販売等)に係る収益の額として益金の額に算入する金額は、原則として、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得るべき対価の額に相当する金額とすることが明確化されました。

② 貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合の対価の額

引渡しの時における価額又は通常得るべき対価の額は、貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合の価額とされました。

(2) 収益の認識時期

① 原則的な取扱いの明確化

資産の販売等に係る収益の額は、原則として目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入することが明確化されました。

② 会計上の認識時期と近接する場合

資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って上記(2)①の日に近接する日の属する事業年度の収益の額として経理した場合には、上記(2)①の取扱いにかかわらず、その資産の販売等に係る収益の額は、原則として、その事業年度の益金の額に算入することが法令上明確化されました。

(3) 返品調整引当金制度の廃止

返品調整引当金制度が廃止されました。なお、現行税制上の適用対象事業(出版業等)を営む法人については約3年間の一定の猶予期間が設けられるとともに、その後、約9年間にわたって段階的に縮小する経過措置が講じられています。

(4) 長期割賦販売等に係る延払基準の廃止

長期割賦販売等に該当する資産の販売等について延払基準により収益の額及び費用の額を計算する選択制度は一定の経過措置が講じられた上で廃止されています。なお、ファイナンス・リース取引等の一定の取引については、現行の取扱いが継続されています。
また、平成30年5月30日付で本改正に対応した法人税基本通達の一部改正も行われているため、具体的な取扱いに関する実務への影響を確認しておくことが必要となります。

 

Ⅲ 当年度から適用される平成29年度以前の主な税制改正事項

1. 法人税率の引下げ

平成28年度の税制改正により法人税率の段階的な引下げが行われ、平成31年3月期の法人税率は23.2%となっています(<表3>参照)。

表3 法人税率の引下げ

2. 欠損金の控除限度額の見直し

青色欠損金、災害損失金及び連結欠損金の控除に関する限度割合については、平成27年度税制改正と平成28年度改正で引下げ及び細分化が行われました。その結果、平成31年3月期の控除限度割合については50%に引き下げられています(<表4>参照)。

表4 欠損金の控除限度額

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