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平成29年度税制改正大綱


情報センサー2017年3月号 Tax update


EY税理士法人 公認会計士 南波 洋

1993年から、太田昭和アーンスト アンド ヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。2004年から、日本公認会計士協会 租税調査会国際租税専門部会 専門委員。

Ⅰ  はじめに

平成28年12月8日に、平成29年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の国会における法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意ください。

Ⅱ 法人課税

1. 研究開発税制の見直し

試験研究費の増額が大きいほど減税額も増える制度に見直されます(総額型)。大法人は増減割合に応じて、試験研究費の6%から14%が税額控除額となります(上限14%は2年間の時限措置、現行は8%から10%)。中小法人の場合は、2年間の時限措置で試験研究費の12%から17%が税額控除額となります(現行は12%)。また、税制の対象に、「第4次産業革命型」のサービス開発の費用が追加されます。

2. 役員給与の見直し

経営陣に中長期のインセンティブを付与することができるように、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とする見直しが行われます。

3. 組織再編税制の見直し

特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制が整備されます。また、株式交換・連結納税における資産の時価評価制度において見直しが行われます。他にも、多くの項目で見直しがなされます。

4. 法人税申告期限の見直し

一定の要件の下、4カ月を越えない範囲内において、確定申告書の提出期限の延長が認められることになります。

5. 租税特別措置における中小法人(資本金1億円以下)向け優遇措置の不適用

法人税関係の各租税特別措置(研究開発税制、所得拡大促進税制、軽減税率等)における中小法人向け優遇措置について、平均所得金額(前3事業年度の平均)が年15億円を超える事業年度において適用が停止されます。この改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

6. 申告要件の見直し

外国税額控除制度及び研究開発税制等において、一定の要件の下、税務署長が本税の増額更正をする場合、連動的に税額控除額を増加できるものとされます。

Ⅲ  国際課税

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の抜本的な見直しが行われます。

1. 合算対象とされる外国法人の判定方法等

  • いわゆる「トリガー税率(低税率判定基準、現行20%)」が廃止されます。
  • 外国関係会社を判定する際の持分割合の計算方法が見直されます。
  • 資本関係はないものの実質的に支配している会社も対象となります。

2. 会社単位の合算課税制度

従前の「適用除外基準」について見直しを行った上で、制度の発動基準(経済活動基準)に改め、経済活動基準(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準または非関連者基準)のうちのいずれかを満たさない外国関係会社について、会社単位の合算課税の対象とします。
また、当該外国関係会社の租税負担割合が20%以上である場合は、会社単位の合算課税の適用が免除されます(適用免除基準)。

3. 受動的所得の部分合算制度

外国関係会社が経済活動基準を全て満たす場合には、一定の受動的所得についてのみ合算課税の対象となります。部分合算課税の対象となる主な所得は、以下のとおりです。

  • 利子(預金利子、一定のグループファイナンスに係る貸付金利子は除外)
  • 配当(保有割合25%以上の株式等からの配当は除外)
  • 有価証券の譲渡損益(保有割合25%以上等の要件を満たす法人の株式に係る譲渡損益については除外)
  • 無形資産の使用料(自己開発した無形資産等一定のものに係る使用料は除外)
  • 無形資産の譲渡損益(自己開発した無形資産等一定のものに係る譲渡損益は除外)
  • 外国子会社に発生する根拠のない異常な利益

また、当該外国関係会社の租税負担割合が20%以上である場合は、部分合算課税の適用が免除されます(適用免除基準)。

4. 特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度

一定の要件に該当する「ペーパー・カンパニー」「事実上のキャッシュ・ボックス」「ブラックリスト国(財務大臣が指定)所在の外国関係会社」については、会社単位の合算がなされます。
また、前記の外国関係会社の租税負担割合が30%以上である場合は、会社単位の合算課税の適用が免除されます(適用免除基準)。

5. 適用時期

前記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

Ⅳ 個人所得課税・資産課税・その他

1. 個人所得課税(配偶者控除)の見直し

配偶者控除の適用を受ける場合の配偶者の年収制限が150万円となります。本人の所得が1,000万円(給与年収1,220万円)を超える場合には、一切控除を受けることができなくなります。この改正は、平成30年分以後の所得について適用されます。

2. 相続税の見直し

一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続等については、国外財産を相続税等の課税対象としないこととします。また、租税回避を抑制するため、相続人または被相続人が10年以内に国内に住所を有する日本人である場合は、国内財産及び国外財産を相続税等の課税対象とする見直しを行います。

3. 積立型NISAの創設

個人の長期投資を促すために、積立型NISA(少額投資非課税制度)が創設されます(年間投資上限40万円、非課税期間20年)。

4. その他

  • 国税犯則調査手続きの見直しが行われます。
  • 仮想通貨(ビットコインなど)の取引について消費税が非課税とされます。

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※ 情報センサーはEY新日本有限責任監査法人が毎月発行している社外報です。