ベトナム ‐ 休業時の賃金、労働契約の一時停止等の情報について

先日、ベトナムではようやく社会隔離措置の緩和が発表されましたが、世界レベルではまだまだ厳しい状況が続くことが予想され、COVID-19の影響で従業員の在宅勤務や一時的な休業を開始または予定されている会社もあるようです。

その際の賃金をどのように定めたらいいのかというご質問を頂く事も増えて来ており、労働法の関連規定及び簡単な解説を以下に記載いたします。

休業時の賃金

まず、休業時の賃金について、労働法98条3項には以下の規定があり、これによれば疫病など客観的な原因による場合、休業時の賃金は両当事者の合意に基づくが、政府が定める地域の最低賃金を下回ってはならないとされています。

第98条 休業時の賃金

3.雇用者、被雇用者の過失でない停電、断水、あるいは天災、火災、危険な疫病、紛争、国家の管理機構の要求に基づく稼働場所の移転、経済的な理由など他の客観的な原因による場合、休業時の賃金は両当事者の合意に基づくが、政府が定める地域の最低賃金を下回ってはならない。

労働・傷病軍人・社会事業省は、3月25日付でオフィシャルレター1064号を公布しており、これによればCOVID-19流行化の中で「当局の要請により隔離された労働者」や「社長や労働者の隔離により部門の業務活動が不可能になり、労働者を休ませる場合」等、COVID-19の直接的な影響により休業する場合について、98条3項(最低賃金を下回らない範囲で会社と労働者が合意した金額)を適用できるとされています。

異動による賃金の変更

労働法31条では「天災、家事、疫病災害の回避・被害克服の措置適用、職業病、水・電源障害の突発的な困難の発生、或いは生産、経営上の必要がある際」について、雇用者が一時的に労働契約に記載された本来の業務と異なる業務に従業員を異動させることを認めており、この際に賃金を変更することが可能です。

ただし、同条に基づき賃金を減額する場合、30営業日の間は現行の給与額を維持する必要があり、また変更後の賃金は現行の金額の85%以上かつ最低賃金以上である必要があります。更に異動の期間が年間60営業日を超える場合は、労働者と個別の同意が必要となります。

オフィシャルレター1064号によれば、原材料不足等により困難に直面している企業について31条に基づく異動が実施しうることが確認されています。

なお、COVID-19の影響により従業員を在宅勤務とさせた場合に同31条を適用できるかですが、以下のように考えられます。

a)    例えば工場労働者について在宅勤務とし、管理のための資料作成等、労働契約に記載されていない業務に従事させた。

→労働契約に記載されていない業務への異動のため、31条を適用しうる。

b)    例えば管理部門スタッフについて在宅勤務とし、管理のための資料作成等、労働契約に記載されている範疇の業務に従事させた。

→労働場所は変更しているものの、労働内容自体は労働契約の範疇に留まるため、31条は適用されない。

労働契約の一時停止

なお、労働法32条では労働契約の一時停止の規定を設けており労使双方の合意があった場合、32条5項に基づき労働契約を一時的に停止することが可能であり、この場合使用者は給与の支払義務を負わないものと考えられます

上述の労働法では会社と労働者との合意が必要とされている場合が多く、どのように合意を得るかという労使交渉の問題に直面する可能性が高いと考えられます。